12 旅の途中(12)
「ミュール周辺で少しゆっくりする事にしたよ」
天幕に食事を運んで行くと、アレス様に話しかけられる。
「あの、、、ごめんなさい」
「うん?」
「荷物が奪われてしまったから、、、」
「そのくらいで困る様な隊では無いよ」
アレス様が笑って片目を瞑ってみせるので、ついつい笑ってしまう。
「本当に?」
「もちろん。それに荷を奪われたのはカリーナが謝るような事では無いだろう?」
「そうかも知れませんけど、、、」
それでもふらふら外に出ていた為に攫われて、助けるために商隊はそこに丸一日足止めされ、随分迷惑をかけている。
「残念だな、僕がそんな事にも対応出来ないと思われているなんてね」
「そんな事無いけれど、、、アレス様の事を全然知らなかったのは本当だわ」
「そうなのかい?」
「とっても強いんだって、"赤の騎士"って呼ばれていたなんて知らなかったわ」
「昔の話だよ」
「みんなに羨ましいって言われたのよ、とっても怖かったのに、、、」
「もう大丈夫だ」
そっとアレス様が髪を撫ぜてくれるので、少しもたれ掛かる。
「ミュールの周辺は花も咲いている時期だし、楽しめるだろう。街の中に泊まれる様にしたからね、ゆっくり休みなさい」
「だからミュールの街に行って下さるの?」
「君は親友の大切な妹だからね」
「ありがとうございます」
親友の妹。
分かっているはずなのに、みんながあんなに言うから変な気持ちがするだけだわ。
「とっても怖い顔で、アン様に言ってたのよ」
「カナ達が攫われたって」
「娘達を決して外に出すなって」
「アン様が、謝っていた時もカッコ良かったわよね」
「必ず連れ戻す、心配するなって」
「素敵だったわ〜」
「お姫様を守るナイトよね」
「カナ達を連れて帰って来た時も、凄く大切そうにしていて」
「自分の天幕を空けて、カナ達を休ませてくれたんでしょう?」
「羨ましい〜」
「カナもラナも覚えていないの?」
「ずっと気を失っていたから、、、」
「勿体ない、"赤の騎士'が戦う所なんて、なかなか見る機会も無いのに、、、」
「"赤の騎士"?」
「カナは、相変わらずね」
「アレス様のことよ」
「剣術試合に出ていた頃、とっても強かったし、人気もあったのよ」
「王都中の女性から恋文が届いたって、話があったくらい」
「その"赤の騎士"に守られたカナが、お姫様に見えたわ〜」
みんながお姫様なんて言うから、アレス様が昔、『僕のお姫様』とい呼んでくれた事をちょっと思い出して、変な気持ちがするだけだわ。
私はお姫様では無い。
決して間違えてはいけないと母にも言われている。
『貴方はイスハ様の娘ですが、王室とは全く関係はありません。どの様な立場になっても決して間違えてはいけませんよ』
私はお姫様では無い。
そんな事はよく分かっている。




