8.
20秒後、部屋の中央にマサト自慢の美少女である魔法少女アガーテがホログラフィーで出現した。
「おおおっ! な、何だこれは!? 魔法か!?」
仰け反って驚くハイネマンに、一瞬だけしたり顔を向けたマサトは、真顔に戻ってアガーテを見つめた。微動だにしない魔法少女だが、今に動き出すぞと思って凝視していると、自分の体の揺れが錯覚を起こし、相手がわずかに動いたかのように思えてしまう。
「おい、こいつは誰だ? 魔女か?」
ローブを纏ってロッドを持っているから、魔法少女であるとは答えるまでもないので、名前だけ口にする。
「彼女はアガーテだ」
言い終えたその時、アガーテの目がマサトを直視した。
ギョッとしたマサトが仰け反った拍子に、椅子の背もたれがギシッと大きな音を立てた。
「誰ですか、貴方は?」
少女の優しい声だが、警戒心を露わにしている言い方だ。侮って軽く応対したら怒って魔法を繰り出し威嚇するかも知れない。
「こいつか? なんと、お前さんの創造主だぜ」
「貴方も誰ですか?」
声の方に振り返ったアガーテの黒目から発せられる鋭い視線が、ハイネマンを射貫く。
「お、俺はハイネマン。これでも勇者やってる。で、こいつは……、そういや、名前を聞いてなかったぜ」
ハイネマンとアガーテに直視されて、マサトは作者なのに初対面のように緊張する。
「マサト。画家マサトだ」
互いに顔を見合わせるハイネマンとアガーテが次にどんな行動を取るのか注視していると、二人が同時に天井の方を見上げて辺りを窺いだした。部屋の中の様子でも見ているのかと思っていると、ハイネマンが先につぶやいた。
「聞こえる」
「ええ、聞こえるわ」
マサトの耳には、時折外を通る車の音しか聞こえてこない。
「俺たち、呼ばれているな」
「ええ。行きましょう」
「ああ」
そう言い残して、二人は部屋の扉を開いて外へ出て行ってしまった。
「おいおい、二人してどこへ行くんだ!?」
だが、二人にはマサトの声が届かない。
「ちょっと、待って! まずいよ、こんな夜中にその格好で!」
マサトは椅子から飛び上がって二人を追いかけた。




