1/いてほしい君だけが、私の青春にはいない
新連載ですー
よろしくお願いしますー
青春っていろいろあるけど、私にはやっぱり、友達とたくさん遊んでたくさん楽しむのがそういうものだと思う。
美山一葉。西クォーツ高校2年生。全力全開で青春を楽しんでます。少なくとも、私はそのつもりです。
「いい風、吹いてるな……」
「だね。夕日も綺麗な土手の上。まるでドラマのワンシーンみたい」
「ふふっ! じゃあ主人公はやっぱり、如月くんかしら」
「だな。俺だーって言いたいとこだけど、裕也には勝てねえわ」
いつも一緒の四人組。私と如月くんと千里と中村と。男女それぞれ二人ずつ、まるで歯車が噛み合うように相性の合う私達。
学内でも有名だって自負はある。これまでもいろんな学年、クラスで起きた事件に首を突っ込んでは解決してきたし、その度に生徒達や先生達、あるいはお巡りさんや地域の人達からも褒められて注目を浴びてきた。
誰が呼んだか"西校カルテット"なんて。探偵ごっこばかりしてきた結果なんだかすごいとこまで来たけど、たしかにこれが私達の青春だった。
リーダーの如月裕也くんを筆頭に、私と千里……高橋千里と中村拓真。頭も腕前もルックスだって無敵の四人。なんてね。
「みんなのおかげだよ……特に一葉、ありがとうな」
「如月くん」
「千里も拓真も、もちろん感謝してる。俺達は仲間だ、永遠に。俺達の友情は永久だ」
「ええ、そうね」
「おうよ! もちろんだぜ裕也ぁー!」
仲間みんなに感謝する如月くんだけど、とりわけ私には一際熱い視線を向けてきているのが分かる。いつ頃からだろう、明確に彼は私のことを、好いているんだって知った。
これと言ったアプローチはない。いつも勇敢で、どんな悪や犯罪者にも果敢に先頭切って向かっていくヒーローな彼は、恋愛ごとには思っていたより慎重派みたい。
……正直、助かってる。だって私は、今のままがいいから。
如月くんは良い人だ。尊敬しているし私にとってもヒーローなんだけど、それでも異性として、恋愛の相手として見れるわけではないのが本音のところだった。
それに、私にはもう、好きな人がいる。
彼のことを考えていると、不意に遠くから小さくぼやきが聞こえてきた。
「おお、なんかまたいんぞおい。毎日夕焼けの土手で風浴びてんな、あいつら。ビタミン足りとらんのと違うか」
「こら、そんなこと言わないの。カッコいいし素敵じゃないの青春らしくて」
声に、咄嗟に振り向く。今まさに思い描いていた人が、そこにいた。
私達と同じ学校の学ラン姿。第二ボタンまで外して胸をはだけた、やる気のなさそうなチャラけた風貌。
岩戸竜馬くん。不良ってほどでもないけどいつもやる気の感じられない、ちょっと背の高めな男の子。
そして、私が好きな人。ちょっと鋭い目付きで怖い感じだけど、笑うとふにゃっと可愛い彼が、隣に女の子を引き連れて私達のすぐそばの道を歩いていた。
「青春かあ。俺もなんかこう、青春みたいなことしてみっかなあ」
「へー。たとえば?」
「たとえば……あー、雑木林に蝉取りに行ったり。あー、市民プール行っておっちゃんおばちゃんに混ざって水中歩行したり?」
「いやどういう青春!? ほぼ小学生の夏休みじゃん、もうちょいなんかあるでしょ、それこそ西校カルテットみたく一夏の事件に関わるとか、学校を揺るがす事件を解決するとか!」
「できるかそんなもん、パーペキ超人四人組と一緒にすんな! 大体できんのかオメーもそんな青春!」
「えっマジ無理。わざわざ危ないことしに行くのちょっと無理かなって」
「だろ? 俺もだよ、平穏無事が一番だ。っつーわけでラーメン食って帰るぞ」
私達を意識して話しながら、全然私達を意識してないやり取り。それがどうしてか、どうしても胸が痛い。
隣の女の子、会椿リリィさんは岩戸くんの幼馴染だ。外国人とのハーフで綺麗な銀髪をロングに整えた、あまりに綺麗すぎる女の子。
そしていつも、ずっと岩戸くんにひっついて離れない女の子。
おしどり夫婦、だとか。ベストカップル、だなんて、陰で嫌味交じりに言われてるのを私は知ってる。普段やる気のない岩戸くんだけど、会椿さんが絡むと途端になんでも卒なくこなしてしまうことも。
──去年の夏前、学校で起きた暴力事件の時も、そうだった。
学内で有名な不良生徒が5人、私と会椿さんを囲んで乱暴しようとしたのだ。理由はそれぞれ、私が調子に乗っているからっていうのと、会椿さんは岩戸くんを虚仮にするためと。
危なかった。あまりに素早い動きだったから、如月くんや千里や中村も反応が遅れて、場所を辿るのに苦戦していたんだ。
でも。彼は現れた。
人気の少ない美術準備室に連れ込まれたのを誰よりも早く割り出して、誰よりも先に駆け付けてくれた。
いつもの気のない調子で──なんともないように、岩戸くんは現れたんだ。
『お、いたいた。おう四人組の一人とリリィ、帰るぞ。お前らは光に置いていく』
状況にそぐわない、あまりに軽い口調と声色。挑発にすら聞こえたかもしれない。いや、事実聞こえたのだ。
激高した不良が、一斉に彼に襲いかかって。そして、次の瞬間にはまとめて意識を刈り取られて倒れていたのを鮮明に覚えている。
あとから知ったことだけど、岩戸くんは日常的に荒事を仕事としているらしい。あくまで学生の範疇を超えない私達とは違う、本当の戦いの世界。裏社会にも通じる世界に身を置いているんだとか。
どうしてそんなことに? ……いつか機会があれば本人に聞いてみたいところだけれど。今、つまるところ言いたいのは。
『いっちょあがり。やれやれ……怖かったな、二人とも。悪かったよ、来るのが遅れちまった。商品券あげるから勘弁してくれ』
不良を倒したあと、こちらに向けて申しわけない表情を向けてくる。
そうして商品券を差し出してきた、岩戸くんの姿に私は、例えようもない胸の高鳴りを覚えたってことだけだった。
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