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ちび白猫と小さな赤ちゃんと現代ダンジョンへ  作者: 南瓜と北狐


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98 新パソコン工場プロジェクト

 昼下りの新入社員研修の場にちょっと疲れた顔をした山梨工場長があらわれたよ。なんだかわたしの方をうらみがましい目で見てるね。後ろを見たら鈴木財閥くんがいたよ。鈴木財閥くんを見てたのかな?


「みなさん、聞いてください。岩本社長から新しいプロジェクトの指示が出ました。宇和島工場にパソコン工場を新設するプロジェクトです。新人のみなさんの中から60名の希望者を募って、このプロジェクトに参加してもらいます」


 新入社員のみんなから歓声と戸惑いの声があがったよ。


「まずはこの画像を見てください」


 山梨工場長がスマホの画面を拡大して、昨日メグちゃんが作ってくれた新工場の画像を表示させたよ。さすがメグちゃん、すばらしい画像だね。


「パソコン工場建設予定地は、旧魔道甲冑試験場です。今の透明スライム養殖試験設備は宇和島工場外への移設となります。移設先が見つからない場合は養殖試験設備を廃棄します」


 ヒャッホー狙い通りだよ。サラバ宿敵たち。


「新パソコン工場は3階建ての建屋が2棟です。このパソコン工場では演算コアも含め全ての部品をこの建屋内で製造する計画です」


 新入社員のみんなからどよめきがあがったよ。どうしたんだろうね。帝都大学の魔道工学専攻だった竹内くんがバッと手をあげたよ。


「山梨工場長、質問いいでしょうか?」

「いいですよ。どうぞ」

「国内で演算コアの量産成功例はなかったはずですが、量産の見込みがあるのでしょうか?」

「うちの工場のスマホの生産ラインを見てもわかりにくいですが、スマホの部品その2が演算コアと空間通信回路と魔力波感知回路を合わせた部品です。演算コア自体は既に量産されています」


 今度は国際大洋大学の創造魔道工学専攻だった酒水さんがビシッと手をあげたよ。


「新しいパソコン工場も同じ方法で演算コアを量産するということでしょうか?」

「ちょっと待ってください。資料がきていたはずです……ありました。えーと、新しいパソコン工場で作った演算コアは単体での販売も行なうそうです。そのために錬金炉という設備を使って量産するそうです」


 花子さん、太郎さんたちからどよめきがあがったよ。


「錬金炉は四極の錬金炉でしょうか? それとも五極の錬金炉でしょうか?」


 酒水さんの質問がまた飛んだー。花子さん、太郎さんたち以外はポカーンだ。わたしもだけどね。


「錬金炉ですか? ちょっと待ってください……この資料ですね。失礼しました。これはプロジェクト参加者以外は開示禁止でした。みなさん忘れてください」


 おっちょこちょいな山梨工場長が錬金炉の姿図をチラッと表示させて、すぐに消したよ。あの早さだったら、普通の人は何がなんだかわからないはずだけど、酒水さんはわかったみたいだね。ブツブツつぶやいているよ。


「七極の錬金炉だと……あの話は本当だったのか……」

「……話を続けます。岩本社長からプロジェクトを早急に進めるように指示が出ています。とにかく至急、大急ぎだとの指示です。費用より早さを優先です。大至急です」


 たしかに昨日わたしが岩本社長にそう言ったね。気のせいか山梨工場長と目が合ってる気がしないでもないね。


「そこで6つのグループにわかれて全てを同時に進めていきます。プロジェクト全体を管理するプロジェクトマネジメントグループ。官庁関係の許認可や特許、販売許可申請をまとめて行なう官庁グループ。新工場の従業員募集や教育、生産マニュアル作りを行なう人材グループ。工場建屋の建設や設備工事を管理する建設グループ。新工場で働く従業員の寮、社宅の手配、建設を行なう福利厚生グループ。透明スライムの養殖試験設備の移設を行なう移設グループです。グループ間で人員の移動もあります。手があいた者はパソコンと演算コアの営業にまわってもらいます」


 新入社員のみんなシーンとしちゃってるよ。


「えーと、プロジェクトには先輩社員が3名……では少ないですね。先輩社員が6名ついていろいろ指導するはずです。ちょうど今ここに6名いますね。あなたたちがこのプロジェクトのチームリーダーです。前回ネックだった自治体の建築許可は午前中に内諾を得ました。気にせず早急に進めてください」


 愕然とした先輩社員たちが新入社員から60名の希望者を募って、新パソコン工場プロジェクトメンバーは決定したよ。新入社員のみんなやる気いっぱいだね。花子さん、太郎さんたちは、みんなすごい勢いでプロジェクトメンバーに名乗りをあげていたよ。撫子ちゃんや鈴木財閥くんもプロジェクトメンバーに決まった。

 わたしはこちらを見つめる山梨工場長と目が合わないようにがんばっていたよ。宿敵の移設係になったりしたら大変なことになるからね。


「新パソコン工場のプロジェクトメンバーは決まりましたね。次にですが」


 まだあるのかい、山梨工場長。


「クローエフロリア妖精国とクローエアリエル聖樹国の国有企業と合弁会社を作って、スマホと空間通信カードの工場を作ることが決まりました」


 昨日メグちゃんが「みぃー」『どんどん進めるの。岩本社長にまかせておくの』って言ってたやつだね。


「新パソコン工場のプロジェクトに参加しない30名は妖精国と聖樹国の2チームにわかれて、この合弁会社と工場作りにあたってください。工場作りは先方からの要請なので、仕事はスムーズに進むはずです。異世界に行くことになるので、現地の方とのトラブルには気をつけてください。先輩社員は……秋山さん、あなたがリーダーをやってください」

「私ですか?……」


 秋山さんは事務部所属で工場長の秘書をやってる30過ぎの男性だよ。ちょっと前に工場長を呼びにこの部屋に入ってきたんだよね。秋山さんは愕然としてるよ。

 秋山さんのことよりわたしだ。異世界って宿敵がはびこるあの異世界だ。あんなところに行く? 無理だ。絶対に無理だ。わたしは力強くシュバッと手をあげたよ。


「田中さん、なんですか?」

「山梨工場長! わたしは新パソコン工場プロジェクトへの参加を希望します」

「田中さん、ちょうど良かったです。異世界の方のまとめ役が足りなかったのです。あなたに副リーダーをやってもらいます」

「山梨工場長、わたしには無理です!」

「田中さんなら大丈夫です。やり方は秋山さんと詰めてください。あとはよろしくお願いします」


 わたしのココロからの叫びにも耳をかさずに山梨工場長はスタスタと部屋を出ていったよ。まずい、なんとか異世界行きを逃れないと。


 ダメだったよ……。わたしはトボトボとポップル社のマンションに帰ったよ。


 ◇


 異世界に作る工場は、秋山さんが妖精国グループを担当して、わたしが聖樹国グループの担当することに決まったよ。モノリスから遠く離れた妖精国の方は泊まりがけの仕事になるけど、モノリスのある聖樹国の方は日帰りできるからね。あっちに泊まりたくないわたしはそれだけは死守したよ。


 どうしても異世界に行きたくないわたしは、すぐに異世界に旅立とうとする秋山さんを引き止めて、空間ネットワークの仮想空間を使って、妖精国と聖樹国の国有企業の人との顔合わせや打ち合わせを進めたよ。

 工場建設や従業員集め、販売なんかも全て向こうでやってくれるという話だったからお願いしてみた。なぜか作業マニュアルや取扱説明書まで向こうの言語に翻訳したものがあったから、こちら側ですることがほとんどなかったよ。異世界すごい。

 妖精国には、おとぎ話に出てくるような羽の生えた身長20センチくらいの人もいたから、メグちゃんやジョーちゃんが試作の時に使っていた小型スマホの生産を提案してみた。妖精国の人は喜んでいたね。


 そして、異世界にどうしても行かないといけない日が、とうとうやってきてしまった。

 その頃には妖精国グループと聖樹国グループの新入社員たちは、ほとんどが新パソコン工場プロジェクトに移って、残っている新入社員はわたしをのぞくと4人だけ。わたしもパソコンの方に移りたかったね。

 その4人の新入社員はMMJクレジットカードを現地通貨で決済できるように異世界の銀行と提携する担当だから、わたしとは別行動だよ。提携が実現すれば、イーちゃんのお友達たちが異世界で買い物できるようになるから、がんばってほしいね。


 ◇


 [探さないでくださいなの。 ジョー]


 わたしが異世界に出かける日の朝、リビングのテーブルの上に置き手紙があったよ。


「みぃー」『美紀ちゃんが、異世界にいっしょに行こうって急に言いだしたからにゃの』

『わたしもひとりで行くつもりだったんだけどね。わたしのシックスセンスが、ジョーちゃんをいっしょに連れていかないといけないってつぶやきだしたんだ』

「みぃー」『美紀ちゃんの勘はよくはずれるの』

『そうなんだけどね』

「みぃー」『ジョーちゃん、異世界に行くのいやがってたの』

『わたしもいやなんだけどね。イーちゃん、さっきからずっと口を手で押さえてるけど、どうしたの?』

「言えないのです」

『さっきからジョーちゃんが近くにいるような気配を感じるんだけど』

「知らないのです」

「みぃー」『美紀ちゃんの気のせいにゃの』

『メグちゃん、さっきからどこ見てるの?』

「みぃー」『美紀ちゃんの顔にゃの』


 わたしはくるりと後ろを向いてみたよ。ジョーちゃんはいないね。


「クスクスなのー」

『ジョーちゃんの声が聞こえた気がするよ』

「みぃー」『気のせいにゃの』


 やっぱりジョーちゃんは近くに隠れているね。こうなったら[こっちがおいしいジョー作戦]を発動してみるよ。


『ジョーちゃん、異世界にはおいしい物がたくさんあるはずだよー。異世界に行ったら食べ放題だよー』

「ジュルリなのー」

「ジュルリなのです」

『のじゃちゃんがメールに書いてたクリームニョロリンもあると思うよー』

「みぃー」『美紀ちゃん、お土産よろしくなの』

「美紀ちゃん、わたしにもお願いするのです」

「お土産なのー」


 メグちゃんのファインセーブに阻まれてしまったよ。現物がないから[こっちがおいしいジョー作戦]は効果が弱かったみたいだ。


次の投稿は1〜2ヶ月先になると思います。また書きためたら投稿するのでよろしくお願いします。

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