75 新生活
『メグちゃん、ジョーちゃん、イーちゃん。ここがわたしたちの新しい城だよ』
「お部屋がたくさんあるのー。広いのー。新しいテレビもあるのー」
『ふっふっふー。3LDKだからね、3LDK。しかも3階角部屋の好立地だよ。これで足りなかったらお隣りも自由に使えるよ』
わたしたちは、ポップル社のマンションに引っ越してきたよ。わたしたちは3階の2戸を使って、他はイーちゃんのお友達たちに貸してるよ。事務所と工場もいっしょにね。
メグちゃんとジョーちゃんと相談して決めたんだよ、わたしたちは使わないからね。そのおかげで工場の敷地の掃除や魔道具の魔石交換も、イーちゃんのお友達たちがやってくれてる。
「はいはーいなのー」
『どうぞ、ジョーちゃん』
「宝箱を置きたいのー」
『寮から持ってきた宝箱ならテレビの横に置いてるよ。ほら』
「テレビの横のじゃないのー。アイテムボックスの中にたくさん入ってるの。全部並べたいのー」
『あれかー。数が多いからお隣りに並べた方がいいね。メグちゃん、ジョーちゃんにお隣りを貸してもいい?』
「みぃー」『いいの。わたしもいっしょに使うの』
『2人にお隣りの鍵を渡しておくね』
「宝箱を並べてくるのー」
「みぃー」『わたしも行くの』
メグちゃんとジョーちゃんは部屋を飛び出していったよ。
「にゃう」『美紀ちゃん、また侵入者がきていたのです』
『イーちゃん、ありがとね。また捕まえてくれたんだ。イーちゃんのお友達たちにお礼をしないとね』
「にゃう」『お礼があったら、あの子たちもはりきるのです』
『侵入者、毎月増えていってるよね』
「にゃう」『今月は今日までに4人だったのです』
『やっぱり多いね』
「にゃう」『あの子たちに遠くに捨ててくるように頼んだのです』
『助かるよ。近くに捨てても、すぐに戻ってきちゃうから』
「にゃう」『あの子たちも遠くに捨てて遊んでいるのです。気にしなくていいのです』
最初の侵入者は、警察に連れていったんだけど、わたしが事情聴取で長い長い時間をとられたのに、侵入者は次の日には解放されて、また侵入してきたんだよね。近くに捨ててきてもまた侵入してくるから、イーちゃんのお友達に遠くに捨ててきてもらうようにしてるよ。『ペンギンさんに会いに行くついでなのです』って言ってたけど、どこに捨ててるんだろうね。わたしは侵入者が戻ってこなければ、どこでもいいけど。
『今度の侵入者もまたスマホの特許関係かな』
「にゃう」『そうだったのです。アメリカからだったのです』
『やっぱり特許はこわいねー。工場を出入りする時は、隠密魔法と認識阻害魔法が必需品だね』
魔法陣で特許を出して行方不明になった白川さんみたいにならないようにしないとね。
◇
増える侵入者に不安をおぼえたわたしは2つの部隊の創設に踏み切ることにしたよ。
週休4日、1日8時間勤務の3交代勤務、月収100万円の好条件で、イーちゃんのお友達たちに隊員募集をかけてみた。
『養護院警備隊をやりたいひとー』
「はーいなのー」
「にゃう」『やりたいのです』
「「「みゃう」」」『『『やりたいのです』』』
『ジョーちゃんはダメー』
「むーなのー」
『イーちゃんは副触手のお仕事があるんじゃなかったっけ?』
「にゃう」『……忘れたのです』
『岩本社長家族警備隊をやりたいひとー』
「「「みゃう」」」『『『やりたいのです』』』
イーちゃんのお友達たちの応募が殺到したから、結局イーちゃんにまとめてもらうことになったよ。
◇
松高大学の工学部の新入生は男子学生200人、女子学生100人の計300人。その中の魔力工学科は男子学生27人、女子学生3人のこじんまりとした科だったよ。その3人の女子学生が、わたしと撫子ちゃんと海里ちゃんだ。
「撫子ちゃんと海里ちゃんは1人暮らしはどう?」
「わたくしはご飯が冷凍食品ばかりになっていますわ。寮を出たから自炊しようと思っていたのですわ」
「わたしはコンビニ弁当」
「やっぱり寮のご飯は良かったよねー。食堂に行ったらご飯があったし。ご飯もお味噌汁もおかわり自由だったし」
「美紀ちゃんはご飯はどうしているのですわ?」
「わたしは土曜にまとめて作ってアイテムボックスに入れてるよ」
「その手があったのですわ。わたくしも美紀ちゃんにもらったアイテムボックスがあるから、やってみますわ」
「わたしはコンビニ弁当でいい。土曜はゆっくり昼寝」
「やっぱり2人ともサークルには入らないの」
「時間を結構とられそうだったから、やめたのですわ」
「入らない。めんどう」
「めんどうって言えば、大学生になってわたしがめんどうだと思ったのは服だよ。前は制服だったから楽だったのに。服も全然持ってなかったから、揃えるのも大変だったし」
「美紀ちゃんの今の服、かわいいですわ」
「ありがとね。撫子ちゃんの服も海里ちゃんの服もかわいいよ」
「リップも似合ってる」
「撫子ちゃんも海里ちゃんもきれいにお化粧してるから、わたしもちゃんと大人らしいお化粧をしようしたんだけどね。うまくいかなくて最終的にリップだけになったんだよね」
「わたくしも少しずつ練習しましたわ」
「美紀ちゃん、また見られてる」
「わたしの隠しきれない大人の魅力のせいだね」
「違う。あれは子供を見る目」
「海里ちゃん、ひどいよ」
「冗談」
◇
『ただいまー』
「おかえりーなの」
「にゃう」『おかえりーなのです』
「みぃー」『おかえりーにゃの』
『すぐに晩ご飯の準備するからね』
「みぃー」『その前ににゃの。岩本社長からFAXがきてたの』
『また盗まれたのかなー』
「みぃー」『またにゃの。今度はスマホ部品その2とその3の魔法陣にゃの。FAXに魔法陣の番号が載ってるの』
『スマホ製造用刻印魔法陣、遠隔破壊起動、200667破壊と300605破壊っと。うまくいったよ』
「みぃー」『鍛冶魔法で机に溶接してもダメだったの』
「魔法陣をマジックバッグにしまっておけばいいのー」
『ジョーちゃんが言う方法も考えたんだけど、マジックバッグにしまったら泥棒が強盗に変わる気がするから、やめてるんだよねー』
「ケガはダメなのー」
『そうだよねー』
「にゃう」『美紀ちゃん、マーキングしていた5つの個人認証解除スマホから今日も空間ネットワークにアクセスが続いているのです。場所は日本1個、アメリカ2個、ドイツ1個、イギリス1個なのです』
『イーちゃん、ありがとね』
「みぃー」『総務省に渡したスマホのサンプルが、アメリカやドイツやイギリスにあるのもおかしいの』
「総務省の横流しなのー」
『岩本社長にスマホのサンプルを総務省に提出してもらってから、侵入者が増えたからね。なにか対策を考えないとね』
◇
『メグちゃん、最近みんなが個人認証解除スマホってよく言ってるけど、あれってなんなの?』
「みぃー」『美紀ちゃんが携帯伝話を使う時に4桁の暗証番号を入れてるの。スマホもあれと同じように空間ネットワークで個人認証してるの。個人認証解除スマホは、その個人認証をスルーして、空間ネットワークを使えるようにした特別にゃスマホにゃの』
『ほうほう』
「みぃー」『空間ネットワークでは、個人の魔力波に、アルファベット3文字+8桁の数字のIDを割り当ててるの。その識別IDの人が、空間ネットワークの使用料金を払っていればどのスマホでも使えるの。使用料金を払ってにゃい人はどのスマホを使ってもお支払い画面が表示されるの』
『すごい方法だね』
「みぃー」『アドバイスさんと相談しにゃがら、決めたの。空間ネットワークで1人の識別IDに1台のスマホと2枚の空間通信カードを紐付けするようにして、伝話もちゃんと掛かってくるようにしたの。いろいろ考えて工夫したの。大変だったの』
『わたし今でもあまりよくわかってないよ。メグちゃん、すごいねー』
「みぃー」『ふふふーにゃの』
メグちゃんがドヤ顔をしてるよ。かわいいから、そっと頭を撫ででおこう。
「みぃー」『ふふふーにゃの。これを使えば今、アクセスしている人たちが誰か、あとでわかるの。変なことをすれば空間ネットワークから追い出してやるの』
メグちゃんがちょっと悪い顔をしてるよ。かわいいから、またそっと撫ででおこう。
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