26 メグちゃんとジョーちゃんの1歳の誕生日
「清美ちゃん、由美ちゃんひと月ぶりー。軍学校はどう?」
「軍閥貴族の男子は変なのが多いわー」
「妙にいばっているの。平民は邪魔だって平気で言ってくるし。わたしに言うことを聞けだって」
「格好も変だしなー」
「探索者高校にもいるけど、あの格好は初めて見た時びっくりしたよ。あんなのが最新トレンドファッションって」
「女子はヤマンバって影で言われとるわー」
「2人がヤマンバになってなくて安心したよ」
「あれは無理よ。スカートも折りたたみすぎ。パンツ見せながら歩いてるの」
「男子も変やったー。金髪赤髪青髪紫髪緑髪で目がチカチカしたわー。おまけに軍の教官も髪を青く染めててなー」
「国を守っているのは軍閥貴族だってニュースで言っていたけど、全然違うみたいなの。軍閥貴族の関係者は訓練はしないし、士官の仕事も下士官に押しつけてるの」
「取り巻きもバカばっかでなー。見ているだけでぶん殴りたくなるわー」
養護院で待ち合わせた清美ちゃんと由美ちゃんは、相当ストレスが溜まっているみたい。軍閥貴族の子女のグチ大会になってるよ。
清美ちゃんと由美ちゃんには、万能薬の時にスキンヘッドおじさんが返してくれたミスリルブレスレットを使って作ったこれを渡しておいたよ。人を収納できることも伝えてね。
○ミスリルブレスレット
(物理魔法防御力30%増、状態異常耐性30%増、魔力回復30%増、
アイテムボックス、障壁魔法、鑑定阻害、サイズ調整機能付)
アイテムボックス機能
容量 5m×5m×5m
入出庫 思念指定選択8m以内
検索 リスト型思念検索
保管 時間停止
補助 個人認証、鑑定阻害
ミスリルブレスレットの在庫がもうないから智也と孝弘の分はまた今度だね。佳代ねえと鉄雄にいのも作ろう。もっとお金を貯めないと。
アイテムボックスに人を収納できることを、どうして知っているかというと、養護院で人体消失事故が起こったからだよ。時間停止のマジックバッグの方で良かったよ。子供は何をするかわからないからこわいね。
わたしはあわててメグちゃん経由でアドバイスさんに対策を聞いて、養護院のマジックバッグ全部に、[意識体収納禁止]の機能を足して、あわせてアドバイスさんオススメの[他のマジックバッグ収納禁止]の機能もつけたよ。
この2つの機能は、ダンジョン産のマジックバッグ全てについていて、つけるのが当たり前の機能だそうな。
わたしはこれは使えるとピコンとひらめいたよ。
金髪赤髪青髪くんの言動を見てると、清美ちゃんたちが本当に心配になるんだよね。軍閥貴族の子がバカなことをやってきたら、収納しちゃえ。
◇
「わたち、これー」
「みぃー」『わたちはこれにするの』
『ジョーちゃんは人生経験ゲームで、メグちゃんは超富豪ゲームだね。両方ともわたしが養護院でやったことがあるから、遊び方を教えられるよ』
メグちゃんとジョーちゃんの誕生パーティーの準備のために、スーパーのおもちゃ売り場にきてるよ。2人の誕生日は5月12日だけど、ダンジョン実習の日と重なったから、誕生日パーティーは5月5日に変更したよ。
「みきちゃー、これきてほしいのー」
『ヒヨコのキグルミかー。わたしはもう大人の女性だからね。こういうのは似合わないよ』
「きてほしいのー」
『ジョーちゃんのお願いならしかたないね。着るよ』
「やったのー」
「みぃー」『クラッカーも買うの』
『パーンって鳴るやつだね。わたしも一度やってみたかったんだよね』
◇
誕生パーティー開催のために、島屋ダンジョンの31階層の入口ホールにきたよ。入口ホールからは出ないよ。出たら元気な黒ウサギが駆けよってきちゃうからね。
入口ホールの壁に11枚の画用紙を貼っていく。1枚に1文字ずつ[☆][お][誕][生][日][お][め][で][と][う][☆]と赤マジックで書いているよ。これだけだとさびしいから風船を22個つけてみた。
大きなレジャーシートを敷いてテーブルを出す。テーブルには、ケーキ屋さんに注文したバースデイケーキ2個(2人の名前似顔絵入り)をドンとおいた。ロウソクも1本ずつ立てて点火。切子ガラスの小さな小さなグラスを3個出して、オレンジジュースを注げばパーティーの準備完了だ。いやまだあったよ。ヒヨコのキグルミの装着。ジョーちゃんに着るって言っちゃったからね。
「ハッピーバースディー♪メグちゃんー♪ハッピーバースデイー♪ジョーちゃん♪ハッピーバースデイー♪……」
『メグちゃん、ジョーちゃん、お誕生日おめでとう。2人にはケーキのロウソクを吹き消してもらいます。メグちゃんからどうぞ。ジョーちゃんも次にやってもらうからよく見ててね』
「みぁーー」『フーーーッにゃの』
『おめでとう』パ~ン♪
やるね、メグちゃん。ひと息で成功させるとは。ここでクラッカーを鳴らして、すかさず拍手だ。ジョーちゃんがクラッカーの音にびっくりしてキョトンとしてるよ。
「わたちのばんなのー」
ジョーちゃんが鼻息をフンスとあらくしてロウソクの前に浮かぶ。一番小さなロウソクだけど、ジョーちゃんの身体には巨大だ。
「ふ〜なのー」
「みぃー」『がんばってーにゃの』
『声で言うんじゃないよー。息をフーって吹くんだよー』
「ふーふうーーーなのーー」
「きえないのー」
『あとちょっとだよー』
「みぃ」『もう少しにゃのー』
「ふうーーふうーーふうーーなのーーー」
わたしもジョーちゃんのロウソクに向かって息を吹きかける。協力プレーだ。ロウソクの火が消えたね。すかさずクラッカーを鳴らすよ。拍手もだ。
「きえたのーー」
「みぃー」『おめでとうにゃのー』
『おめでとう』パ~ン♪
ジョーちゃんは達成感で満足気な表情だ。
『このケーキは2人のアイテムボックスにしまっておいて、ご飯を食べられるようになったら食べてね』
『2人の1歳の誕生日を祝って、カンパイします』
『かんぱーい』
「かんぱいなのー」
「みぃー」『かんぱーいにゃのーー』
メグちゃんとジョーちゃんがグラスを浮かせて、わたしのグラスにチョコンとあわせてくれたよ。グラスに口をつけて、次は拍手だ。カンパイのやり方はテレビで見たから完璧だよ。
メグちゃんもジョーちゃんも楽しそうに拍手をしてくれている。
『このグラスも2人のアイテムボックスの中にしまっておいてね。そして、じゃ~ん、これがお誕生日プレゼントです。メグちゃんが本にはさむ栞。ジョーちゃんは金魚のおもちゃだよ』
「みぃー」『ありがとうにゃの』
「くろのおにんぎょーなのー」
2人とも、よろこんでくれているよ。何をプレゼントするか、すごく迷ったけど、あれを選んで良かったー。
『次はゲーム大会だよ。人生経験ゲームと超富豪ゲーム、どっちを先にやろうか?』
「みぃー」『人生経験ゲームにするの』
『するのー』
人生経験ゲームはルーレットを回して出た数字に合わせてコマを進めていくすごろく型のゲームだよ。ゴールした時にお金をたくさん持っている人が勝ちだ。
「メグちゃんもジョーちゃんも好きな色の車を選んでね」
人生経験ゲームのコマは車で、配偶者や子供も乗せられるようになってる。
「わたちはくろにするー」
「みぃー」『わたちはピンクにするの』
「わたしは赤にするよ。大人っぽいわたしのイメージにぴったりの色だからね」
『このルーレットを順番に回してね』
「えいっなのー」
『3だね。1、2、3と[難関大学に入学、みんなから入学祝い5万円をもらう]。ジョーちゃん、はい、5万円だよ』
「みぃー」『6にゃの。[車で追突事故にあう、次の順番の人から見舞い5万円をもらう]にゃの。美紀ちゃん、5万円出すの』
こんな感じで人生経験ゲームで遊んでいたよ。
『ねえ、メグちゃん。わたしを狙いうちにするとは卑怯な』
「みぃー」『ゲームは勝負にゃの。勝負の世界は非情なの』
「ちょうぶのせかいはひじょうなのー」
『わたしはもう少しのんびり和気あいあいとゲームをやる方がいいよ』
「みぃー」『弱肉強食にゃの。弱い者からムシャムシャゴクンにゃの』
「むしゃむしゃなのー。ごくんなのー」
『メグちゃんがそこまで言うならしかたないね。封印していたわたしのゲームの腕を解放するしかないようだ。見せてあげるよ、わたしの技を」
わたしはルーレットを勢いよく回したよ。
『2だね。[スピード違反で罰金10万円を払う]……』
「みぃー」『美紀ちゃん、10万円出すの』
封印していた養護院時代のボードゲームの思い出がわたしの脳裏によみがえっていたよ。
「美紀ねえちゃん、ドベ〜」
「美紀ねえの負け」
「次こそわたしが勝つよ」
人生経験ゲームも超富豪ゲームもわたしは最下位だったよ。おかしいね。
「メグちゃん、ジョーちゃん、もう1回だけやろうよ。次こそわたしが勝つから」
「みぃー」『美紀ちゃん、そろそろ晩ご飯の時間にゃの』
こうして誕生日パーティーは盛況で終わったよ。
今度わたしが勝てるボードゲームを探そうかな。
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