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ちび白猫と小さな赤ちゃんと現代ダンジョンへ  作者: 南瓜と北狐


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16/90

16 高校受験

「臨時ニュースです。昨日未明、ロシアが世界ダンジョン不戦条約を破って、ウクライナに軍事侵攻しました。ウクライナの一部は既にロシア軍に占拠された模様です。ウクライナ東部を中心にロシア軍の魔道甲冑部隊とウクライナ軍の散発的な戦闘が続いています。ウクライナ政府はロシアに対し非難声明を出し、国連安保理会合の臨時開催を要請しました……」


 食堂のテレビが、お正月特番から臨時ニュースに切り替わった。

 世界ダンジョン不戦条約は、ダンジョンができたから国同士の紛争は全て停止してダンジョンに対処しようと国際連合加盟国で結んだ条約だ。

 30年くらい前にも、世界ダンジョン不戦条約を破ったイラクがクウェートに軍事侵攻したことがあったけど、その時は国際連合軍が組織されて、イラクに軍事制裁が行われたそうな。当時は、日頃日陰の存在になっている大日本帝国海軍や空軍が、活躍の機会が来たということではりきったんだとかなんとか。


「おとしだまー」

「お年玉だあー」

「お年玉ありがとうございます」

「「「ありがとうございまーーす」」」

「お礼は美紀ちゃんに言ってね」

「美紀ねえ、ありがとう」

「みきねえちゃ、ありがとう」

「美紀ねえちゃん、ありがとう」

「お年玉、クラスの子がもらっていてうらやましかったんだよねー」

「わたしもー」


 食堂では院長先生がみんなにお年玉を配っているところだよ。4歳組には100円、5歳組には200円と100円ずつ上げていって、中学生組は一律1000円だ。実はこれもわたしプロデュースだ。みんなに自分のお金を持つうれしさを感じてもらうのと、お金の使い方を学ぶ機会を作るためにね。院長先生にはまた「美紀ちゃん、自分のために貯金しておきなさい」と言われたけどね。

 4年くらい前から養護院への国からの補助金が減らされてしまって、1年前には市からの補助金まで減額されたのを情報通の由美ちゃんから聞いてるんだ。体調が回復した院長先生が、また寄付のお願いにいろいろなところを訪ねていることも聞いたよ。


 メグちゃんとジョーちゃんには、わたしからお年玉。メグちゃんとジョーちゃんには1万円入りのポチ袋をプレゼントしてみた。


「みぃー」『美紀ちゃん、ありがとうにゃの』

「もういくちゅねりゅとー♪ おとちだまー♪」


 ジョーちゃんは、まだお金のことがよくわかってないみたいだけど、お年玉を両手で掲げてクルクルまわって喜んでいる。メグちゃんもうれしそうに尻尾をクルクル回しているよ。あげて良かったお年玉。


 ◇


『落ちたー落ちちゃったよー』

「みきちゃ、ないたら、めーなのー。ヨシヨシなのー」

『ジョーちゃん、なぐさめてくれるんだ。優しいねー』

「みぃー」『次の一般にゅうちが本番にゃの。気にすることにゃいの』

『面接がダメだったのかな。筆記試験は結構できたのに』


 1月末に松高探索者高校の特待生を狙って、推薦入試を受けたけど残念な結果に。次の一般入試にかけるしかないね。落ち込んでいる暇はないから勉強を、と言いたいところだけど、わたしは情報板で記憶力が良くなっているから、数学や理科の問題を解く練習をするくらいで済むのが助かるよ。

 清美ちゃん、由美ちゃん、智也、孝弘の軍学校受験組は、1月中旬の1次試験をみんな通過して2次試験を済ませたところ。次の最終試験のためにダンジョン合宿中だよ。最終試験までにレベル28に上げる計画だそうな。すごいね、軍学校の入試。3回の試験を通過しないと合格できないなんて、さすが競争倍率22倍の超エリート校だよ。


 ◇


『落ちたー落ちちゃったよー』

「みきちゃ、ないたら、めーなのー。ヨシヨシなのー」

『泣いてないよ。これは目から汗が出てるんだよ。心の汗だよ』

「こころのあせー?」

「みぅーう」『探索者高校は残念だったの。美紀ちゃんを落とすようにゃ探索者高校がおかしいの! 悪いの!』

『なんで落ちたんだろー。もう人生崖っぷちー』

「みぃー」『もうにゃかにゃいの』

「こころのあせ、ないないしゅりゅのー」


「美紀ちゃん、探索者高校は残念だったわね。ずっとがんばってきたから、しばらく養護院でのんびり休みなさい。次のところはわたしが紹介してもいいし、自分で探してもいいからね」


「みぃー」『院長先生が養護院にいてもいいって言ってくれてるの。安心にゃの』

「あんしんすりゅのー。ヨシヨシなのー」


「美紀ちゃんはうちが養ってやるってー」

「そうよ、わたしもいるわ。気にせずゆっくり決めればいいのよ」


「みぃー」『清美ちゃんも由美ちゃんも、美紀ちゃんをやちなってくれるの。気にちにゃいの』

「きにちないのー。ヨイコヨイコなのー」


「美紀ちゃん、こういう時こそ僕を頼ってください。軍学校に入ったら給料も出ます。僕に全て任せてください」


「みぃー」『孝弘、やっぱり普通の人に見えるの。ノゾキ魔にゃのに』

「のぞきまーたかひろー」


「美紀ちゃん、俺といっしょに世界の敵と戦おう」

「……せかいのてき?」

「そうだ。世界の敵はダンジョンを使ってこの世界を侵略している。相手は強大だ。だから美紀ちゃん、君に俺をささえてほしい」


「みぃー」『智也、右手の包帯をやめたの。今度は左目の眼帯に変わったの。右手の封印が左目の封印に変わったの』

『……封印された魔王だったよね。今度は封印された魔眼だけど。魔王、どうしたんだろうね』

「せかいのてきー。かっこいいのー」

『ジョーちゃん、智也の真似をしたらダメよ、ね』


 清美ちゃんたち4人は見事に軍学校に合格を果たした。中学校で他に受けていた2人も合格。6人受けて6人全員合格という快挙だ。おめでとう。努力が実ったね。

 あのクマのような武藤先生が、静かに涙を拭いながら喜んでいたのが印象的だったよ。そんな武藤先生の横では、川上先生がおしとやかに微笑んでいた。由美ちゃん情報によると、2人のおつきあいは続いていて、デートの時に武藤先生が川上先生の実家に迎えに行ったこともあるって。川上先生は着々と堀を埋めているようだね。


 ◇


「こんにちはー。相談に来ましたー」


 わたしは専業探索者になろうと思い立って、探索者に詳しそうなスキンヘッドおじさんに相談にきたよ。


「そういうことか。お前の収入であれば専業探索者になっても全く問題はないな。家を借りる時の入居審査では、預金が家賃の2年分あればいける。お前ならすぐだろう。探索者ランクが2であることは多少ネックになるが」

「探索者ランクですか?」

「専業探索者の場合は、探索者ランクが高いほど社会的な信用が上がるんだ」

「ほーほー。わたしは中学校卒業までは、ダンジョンに入らないから、上げるのは難しいですね」

「そうだな。そもそもお前は探索者高校に入りたかったんだろう。探索者高校の2次募集がそろそろ始まるはずだぞ」

「2次募集ですか?」

「軍学校の滑り止めに地元の探索者高校を受けている奴は多い。軍学校の合格が決まった奴は、探索者高校の入学を辞退する。2次募集はその穴埋めだ」


「みぃー」『清美ちゃんたちは、滑り止めを受けてにゃかったの』

『探索者高校は、受験費が軍学校と同じくらい高かったからね。みんな遠慮したのかも』


「探索者高校以外でも、定員不足の高校が2次募集をしているはずだ」


「みぃー」『美紀ちゃん、チャンスが来たの。三度目の正直にゃの』

「ごうかくなのー」

『わたしは最後のチャンスに賭けてみるよ』


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