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行列のできるスキル鑑定士  作者: ポムの狼
雪残る

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第4話 間抜けな事情

 ブルームトはフォルト村を旅立ってからずっと狼の姿で過ごした。走っては休み、走っては休みを繰り返し、なんとかサラがいるベランジェ領までたどり着くことができたが、たどり着く頃には、すっかり泥だらけになってしまっていた。


 サラの匂いを頼りに探していると大きな城にたどり着いた。大きな塀があり、門の前には門番さえいた。


 ブルームトは最近習得した【幻影】のスキルを発動した。自分は木の陰に隠れ、門番の前に自分と同じ姿の幻を出現させた。


「ワンワン!」


「なんだ? 野良犬か? あっち行け!」


 門番が幻に気を取られている隙に、ブルームトはさっと城壁の中に侵入した。


 侵入したは良いものの、城の前の大きな広場で今度はちょび髭のおじさんに見つかってしまった。


「し! し! あっちへ行きなさい!」


 おじさんは両手を広げて、右へ左へステップを踏み、ブルームトを追い出そうとしてきた。


「オベール卿、何をしてるんですか? 新しい遊びですか? 楽しそうですね」


 覚えのある声の主がステップで息を切らしているおじさんに声をかけた。


「遊んでいるのではありません! 追い払おうとしているんです!

 さっき戻ってきたら、塀の中にいたんです。恐らく野良犬だと思います」


 声の主はサラだった。ブルームトはサラに駆け寄り、尻尾を振った。

 

 サラは優しく微笑み、ブルームトの頭を撫でた。

 

 久しぶりに見たサラは相変わらず美しかった。


「かわいい…… オベール卿! この犬、飼ってもいいですか?」


 オベール卿と呼ばれたおじさんはあからさまに嫌そうな顔をした。


「えぇ! 汚れていて汚いですよ……」


「洗えばきっと綺麗になるよ」


「リオネル様に聞いてみないことには、なんとも……」


「じゃあ、帰ってきたら聞いてみるね! それまでにこの子を綺麗にしなきゃ! おいで!」


 サラに呼ばれてブルームトはサラの後を付いて歩いた。


 サラは自室にブルームトを招き入れてくれた。

 サラ付きのメイドが、汚いものを見る目でブルームトを睨んでくる。


 さすがの俺もその顔は傷つくぞ……確かに汚いけど……


 メイドとサラは一悶着していたが、最後はメイドが折れて部屋を出ていった。


 二人きりになったので、ブルームトは人型に戻ろうかとも思ったが戻れない理由があった。


 服がない……


 ブルームトが着ていた服は変身した時に、フォルト村に一式置いてきてしまっていたのだ。

 このまま変身したら、感動の再会を裸でしなければいけなくなってしまう。そんなことをしてしまえば、ブルームトは恥ずかしさで死んでしまうだろう。


 しかし、予期せぬ事態に陥った。

 サラが泥だらけのブルームトを洗うと言うではないか。

 バスルームに入るとサラはなんの躊躇いもなく、着ていた服を脱ぎ始めた。


 見ちゃだめだ!


 ブルームトは自分の前足で目を隠した。


「あははは! さてはシャンプーが怖いんだね! 大丈夫だよ。目に入らないようにするからね」


 サラは大きな勘違いをしていたが、狼の声帯では人と同じ言葉を話すことができなかった。

 サラは鼻歌を歌いながら、ブルームトの体を洗った。

 一ヶ月以上、風呂に入っていなかったので、全身がスッキリするのを感じた。


「綺麗な毛だね。光ってるみたい」


 サラはブルームトの毛を見てそう言った。

 石鹸をきれいに流すとブルームトは立ち上がりブルブルと体を震わせて水分を飛ばした。


 痒かった所もスッキリして、いい気分だった。何より大好きなサラに洗ってもらえたのが格別だった。


 サラは湯船に入ってからブルームトを呼んだ。


「おいで、一緒に入ろう」


 ブルームトはかなり悩んだ。


 流石にそれは駄目なんじゃないか……


 しばらく、くるくる回って困っている雰囲気を出して見たがサラは気がついてくれない。ブルームトはサラが待っていたので諦めてバスタブに飛び込んだ。サラとは反対方向を見て、サラの裸を見ないように細心の注意を払った。

 







 風呂から上がったサラは服を着てから、ブルームトの毛をタオルで拭いてくれた。湯船に浸かってリラックスできたのか、旅の疲れが出たのか、ブルームトは眠くなってしまった。

 サラはタオルでブルームトを拭きながらドライヤーで毛を乾かして、櫛で梳かしてくれた。


「ほんとに綺麗…… そうだ、名前を決めておかないと、呼ぶ時に不便だね。何がいいかな……」


 サラは一瞬泣きそうな顔をしてから、ブルームトを抱きしめた。サラが何を考えているのかは、分からなかったが、少しでもサラを慰めたくて、ブルームトはじっとしていた。


「決めた…… アルジャンにしよう。いいかな?」


 ブルームトはアルジャンという仮の名前を受け入れて、頷いた。


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