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忘れがたき炎の物語  作者: 判虹彩
水龍編
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第五章「水龍編」第3話「月夜の攻防」

前回同様、この回は第三章第9話と時間軸が重なります。この回から読む方は、??な感じになるかと思います。ぜひ第三章第9話を読んでから読んでいただけると、より楽しいと思います。いや、とにかく読んでいただけるだけで嬉しいです!

「では、諸君!今宵は大変に良き日である。

遠路はるばるクァン・トゥー王国から、このサーバスへやってきた尊き使者たちを讃えようではないか!…


宴の大広間では、ギーザ王が上機嫌にあいさつをしている。彼の両脇には、クァン・トゥーから連れてこられたという上級の妾の女性が二人立っている。

テイラー妃と、シルヴィ、ジョナは大広間の様子を窓越しから見つめている。扉の前からちょうど良い角度で中の様子が見えるのである。


「では妃殿下(ひでんか)、そろそろ準備はよろしいかしら?」


シルヴィがそういうと、テイラー妃は周りにいる武装兵と、盆に毒の入った盃を持っている従者の女に合図した。


扉がバンと開き、従者たちが盃を列席した皆に配っていく。


「これは、めでたいのう」


「おお、うまそうな酒じゃ」


列席者は王国の貴族たちや、王の親戚などであった。彼らは何の疑いもなくテイラー妃が配った盃を手に持った。


「…では、乾杯といこう!」


王が言うと、盃を持った者たちは上機嫌にそれを飲み干したのである。


「ぐっ!…苦しい!」


「ぐああっ!」


列席者たちは、たちまち真っ青な顔になったり、口から泡を吹いて倒れ出した。ギーザ王もである。


「…あはは!良い光景だよ!」


シルヴィは、パチパチと手を叩きながらそう言うと、テイラー妃の方に向いた。


「それでは、パーティーの続きとしましょうか♡」


テイラー妃は、不敵な笑みを浮かべて頷くと、宴の間に入って言った。


「愚かな宴はこれまでだ!兵士たちよ!生き残っている者を捕らえよ!」


テイラー妃の姿を見て、シルヴィはニヤリと笑うとジョナを連れて城の最上階へと出た。

パラノ城の最上階は、円柱型の屋上があり、シルヴィは、夜空を見上げて叫んだ。

夜空には不気味なほどに大きな満月が出ていた。


「さあ、ようやくあたしたちの時代が来たよ!!ド派手に決めよう!!」


そう言うと、シルヴィは両手を天に掲げ、何やら詠唱を始めた。すると、彼女の両手が白く光り出したのである。


「ライオン野郎の軍をこちらにおびき寄せるよ〜!!」


彼女は手をゆらゆらと動かしている。

そして、シルヴィは城から西の方角を指差した。


すると、松明が一つ、二つと灯り、次第に無数の松明が列を成した。そして沢山の掛け声のようなものも聞こえてきたのである。

ジョナは、その光景を見てクククと笑いながらシルヴィに言った。


「なあ、シルヴィ!ランディーのじじいが居なくなったのなら、俺たちがこの国を乗っ取っちまってもいいんじゃないか?」


シルヴィはカラカラと笑いながらジョナに言った。


「奇遇だねぇジョナ!あたしもおんなじことを思ってたよ!!」


その時である。

満月の明かりを一瞬何かが遮ったのである。


「うん?何だ?」


ジョナは空を見上げた。

するとシルヴィが空飛ぶ何かを指差して言った。


「ワオ!ドラゴンだよジョナ!金ピカのドラゴンだ!!」


「あれは砂漠のドラゴンか!?」


「たしか、アディームって名前だったね!何故ここにドラゴンが!?」


金色のドラゴンは、月明かりに照らされキラキラと輝いていた。そして、大きな翼をバサバサと羽ばたかせ、城の近くに降下し、咆哮した。


「グオオオーン!!」


ドラゴンの咆哮に恐れ慄いたのか、城の中からたくさんの兵士たちがわらわらと出て来て、散っていったのである。すると、中から数名の人間がドラゴンの方へと歩み寄った。その瞬間、その中の一人がドラゴンに変身したのである。


「な、なんだいあれは!?あの格好は、さっきの妾の一人じゃなかったのかい!?」


シルヴィは、その様子を最上階から見ていた。

そして、下にいる一人が口笛を鳴らすと、何かがジョナの上を(かす)めて行った。


「うおっ!な、何だ!?」


それは、翼の生えた馬であった。


「ペガサス!?どうしてここに?」


彼らが妾が変身したドラゴンとペガサスに乗ると、金色のドラゴンが再び飛び立った。彼らもそれについて飛んで行ったのである。


「一体どうなってるんだ?」


「あっちの方向は確か…アディームの神殿がある場所だね…ククク、神殿には財宝がたくさん眠ってるらしいね…ジョナよ…これは面白くなってきたんじゃないのかい?」


ジョナは頷くと、ゆっくりと覆面を取った。


「ではシルヴィ、ここは俺のネクロマンサー部隊を連れて向かうとするぜ!」


「大丈夫なのかい?相手はドラゴン2体だよ?」


シルヴィがジョナにそう言うと、ジョナが手を上げた。


「おいおい、俺の部隊をみくびってもらっちゃあ困るぜシルヴィ…久々の腕の見せどころってやつさ…野郎ども集まれ!!」


すると、何処からともなく黒い靄もやが無数にジョナのもとに集まってきたかと思うと、それらが次第に黒いローブを身に纏ったネクロマンサーに姿を変えた。


【ネクロマンサー】

魔法を使う魔物。人の姿形をしているが、かつて魔法使いだった人間が蘇ったものである。本体はアンデッドやグールに近い。強力な魔力でスケルトンやアンデッドを操る。

(『危険な魔物図鑑』より)


およそ十数体のネクロマンサーは、ジョナを中心に空を浮かびながら円を描くように並んだ。

すると、ジョナは手を横に広げた。

月明かりに照らされた彼の顔は白く、火傷の痕のように全体がひどくただれているようであった。そして、その肌とは対照的な真っ赤な瞳が怪しく光り出した。すると彼の体は黒い靄に包まれ、宙に浮いた。

そしてネクロマンサーと共に、先程のドラゴンが飛び立った方向へとしゅるしゅると向かっていったのである。





エズィールたちは、サーバスの首都アイウォミの門の近くあたりに差し掛かった。そこでは既に戦闘が繰り広げられていた。

エズィールはその光景を見て驚いた。


「な、何だと!?帝国の軍はまだ国境付近にいるはず…サーバスの軍と戦っているのはどこだ?」


シイルはサーバス軍と戦っている兵士の格好がやはり神聖ナナウィア帝国の軍隊のものだと確認した。


「やはり帝国の軍隊だ…!何故ここにもいるんだ?」


「とにかく、やめさせなければ!エズィール!サーバス軍の中心を探すんだ!」


エズィールは、野営地全体を見渡した。すると、サーバス王国の紋章が描かれている1番大きなテントを見つけた。


「おそらくあそこだろう!行くぞ!」


エズィールはそのテントの近くに降り立った。


「誰か!誰かいるのか!俺は神聖ナナウィア帝国の使者だ!話がしたい!」


シイルはテントに向かって叫んだ。

すると、中から一人の男性が出てきた。


「何者だ!」


その男性は、ターバンとマント、その下に黄金の鎧を身に纏い、褐色の肌に艶のある髭を蓄えていた。

シイルは落ち着いた声でその男性に話しかけた。


「突然すまない、俺はシイル。神聖ナナウィア帝国の使者だ」


その男性は驚いた様子で話した。


「シイル…あの“漆黒のシイル”か!?お、俺はサーバス王国の勇者ロブだ。一体今回のは…」


ロブがそう言うと、シイルは少し言葉を挟むようにして言った。


「…今の騒動はデマだ。何者かが裏で俺たちをハメようとしている。どうか、すぐに軍を撤退してくれないか?」


「な、何だって!?」


周りではサーバス王国の兵士たちがわーわーと騒いでいる。ロブは困惑した顔でシイルとエズィール、フリンに目をやった。


「き、君たちは…帝国の勇者なのか?先程の夜襲の報告はデマだと、そう言いたいのか?」


その時であった。テントの中から数人の人間たちの声がした。


「ロブ?大丈夫か?誰かそこにいるのか?」


シイルは、おそらく彼らはサーバス王国の勇者英雄隊だと思った。彼らに真摯に話をして、何とかこの場を鎮めて状況を打開しなくてはと思った。


そして、ロブがテントの方へ振り向いた時である。


「…」


ロブは、シイルたちを背にしたままピクリとも動かなくなったのである。


「…?ロブ殿?どうした?」


シイルは不自然に静止しているロブに話しかけた。


その時である。ロブはその場で力無く倒れてしまったのである。


「お、おい!」


「どうしたのだ!?」


シイルがロブに駆け寄り、ロブを抱き起こした。すると、何とロブの喉元に鋭い短剣が深く突き刺さっていたのである。


「な、何だと!?」


シイルは思わずバッとその場を離れた。


「ロブ!いつのまに…!?」


シイルは突然の出来事に、その場で固まってしまった。フリンは、あたりをキョロキョロ見回した。


「だ…誰だ!?」


一斉に緊張感が走る。

エズィールも同様に、神経を研ぎ澄ましてあたりを見回した。

その時、ロブに刺さった短剣がひとりでに引き抜かれ、ゆらゆらと宙に浮いたのである。ロブの首からは血が吹き出した。


「…!?」


シイルは一体何が起きているのか分からなかった。


するとその短剣はゆらゆらと揺れながら、シイルの手の中にシュッと収まったのである。


「ロブ!?一体誰と…」


その時、テントから数人の人間が出て来た。


「し、しまった…!!」


シイルは短剣を握りしめた自分の手を見つめながら叫んだ。

テントから出て来たのは、サーバス王国の勇者英雄隊の面々であった。フィーンド系獣人の戦士と、人間種の女性魔法使い、そしてハーフエルフの女性弓使いであった。

彼らは、突然目の前に飛び込んできた光景に息を呑んだ。サーバス王国の勇者が首から血を流して倒れ、そのすぐ近くに謎の男性が血まみれの短剣を握っているのである。


彼らは瞬間的に武器を引き抜き、攻撃体制に入った。


「貴様!!よくも!!」


「ま、待て!これは違う!!」


フィーンド系獣人戦士は、槍をシイルに振り抜いた。シイルはすぐさま後ろに飛び、それを避けた。それと同時にハーフエルフの弓使いは矢を放つが、フリンが素早く双剣で矢を払い落とした。魔法使いの女性は杖を掲げてエズィールに火の玉を放つが、エズィールは後ろに避けながら氷の息を吐き、炎をかき消した。


「違うんだ!待ってくれ!これは誤解だ!!」


シイルが叫んだが、彼らの攻撃は止まらなかった。シイルは剣を抜き、獣人戦士の槍を受ける。弓矢が連続で放たれるが、フリンは後方に回転しながらかわした。エズィールが叫んだ。


「シイル!ここは一旦引こう!このままでは共倒れだ!」


そう言うと、エズィールはドラゴンの姿になってフリンとシイルを乗せて飛びあがろうとした。


「ド、ドラゴン!?彼らは一体何者なの!?」


魔法使いの女性が叫んだ。


その時である。

なんとエズィールがバランスを崩してその場に倒れ込んでしまったのである。

ズズーンと地面が揺れた。


「…!?エズィール!!どうしたんだ!?」


すると、エズィールの喉と腹の中心部あたりに剣が突き刺さっていたのである。


「グハッ!」


エズィールは、苦しみながら立ち上がり、その剣を引き抜いた。そして血を吐いた。


「エズィール!大丈夫か!?」


フリンが叫んだが、ハーフエルフの弓使いがさらに矢を放ってきた。フリンは矢を払いながら叫んだ。


「ちくしょう!一体何が起きてるんだ!」





一方その頃、アントニーはフルシアンと共にペガサスで城へと向かっていた。


「…うん?」


「どうしたフルシアン?」


フルシアンは、空を飛ぶコウモリたちの様子がおかしいことに気が付いた。古来よりコウモリは、魔女やヴァンパイアの使いとして利用されがちな動物である。夜に活動する生態や身体能力に親近性があるとの説があるが、真実は謎である。

しかし、コウモリがいつもより騒がしく興奮しているようにフルシアンには見えた。


「…来る?」


「来る?何がだ?」


「いや、コウモリたちが騒いでるんだ…何かが来ると言っている…」


アントニーはあたりを見回した。

すると、南の方に何かが飛んでいるのが見えた。しかし、満月が出ているとはいえ、暗くてよく分からなかった。


「あれは何だ?ペガサスのように見えるが…」


アントニーが指差した方向をフルシアンは見た。


「ペガサス?ガラか?」


フルシアンは、手綱を引いてペガサスの方向を転換しようとした。

その時である。ペガサスがバランスを崩して、よろけてしまい、二人は落馬してしまったのである。実は二人を乗せていたペガサスは、神聖ナナウィア帝国からかなりの距離を走り続けていた為、疲労が重なってしまっていたのであった。


「あっ!しまった!!」


「わー!!」


二人はみるみるうちに落下していく。このままでは地面に叩きつけられてしまう。

フルシアンは、神経を集中させて鳥たちを呼び寄せようとした。彼らの下には森が広がっていた。森の木々からギャアギャアと鳥たちが騒ぎだし、落下している彼らの方に飛んできた。

無数の鳥たちがフルシアンとアントニーの体を足で持ち上げようと捕まえようとしているが、やはりあまりにも重すぎる為、持ち上げられそうにない。落下のスピードは落ちることなくどんどん地面が近付いてくる。

その時アントニーが叫んだ。


「フルシアン!ストームブリンガーを撃つぞ!身を守れよ!!」


【ストームブリンガー】

風の魔法の最上級クラス。物凄い勢いの旋風(つむじかぜ)を引き起こし、あらゆる物を吹き飛ばす魔法である。


フルシアンは咄嗟に体を小さくして身構えた。


「ストームブリンガー!!」


アントニーは、フルシアンと共に落下する位置に向けてその魔法を放った。すると、物凄い勢いの旋風が巻き起こり、二人は地面に落下する寸前で、真横に吹き飛ばされたのである。


「ぐっ!」


アントニーは少し魔力を抑えて放ったが、ストームブリンガーの威力は凄まじく、二人どころかあたり周辺の木々を吹き飛ばしながら上空に巻き上げていった。かつてフリンたちが神聖ナナウィア帝国に入った時、大量のストリゴイを吹き飛ばしたのもこの魔法であった。


「アントニー!」


フルシアンとアントニーは、吹き飛ばされながら森の横の小さな池に落ちた。

そしてストームブリンガーの旋風が徐々に小さくなっていった。


「ぶはっ!アントニー!大丈夫か!?」


フルシアンは、池から這い上がりアントニーを探した。アントニーは、池の端に倒れていた。

フルシアンは泳いでアントニーに近付いた。すると彼は起き上がって合図した。


「く、くそったれ!何とか無事だな…」


そして、上空からふらふらとペガサスが降りてきた。かなりの疲労で息が荒く、地面に着地した途端、力無く倒れてしまったのである。

フルシアンは、ペガサスをさすりながら言った。


「こいつ…俺が動物と話せると分かってて、あえて黙ってたみたいだ。なんて根性のある馬だ…本当にすまない。ゆっくり休んでくれ…」


アントニーは、フルシアンに言った。


「大の大人を二人も乗せて国境を越えてきたんだ。俺たちももっと早く気付いてやるべきだった…」


その時である。バサバサと大きな羽の音と共に、黄金のドラゴンが彼らの上を通過したのである。


「あっ!あれは!」


「アディームか!!」


すると、今度は銀の鱗のドラゴンと、ペガサスが彼らの上を通過したのである。


「あっ!あれはガラだ!!」


「神殿に向かっているぞ!」


するとフルシアンが言った。


「アントニー!どこか野生の馬を探すんだ!我々も向かわなくては!」


その時である、フルシアンは背筋が凍るような気配を感じた。何事かと思い、再び空を見上げると、真っ暗な(もや)や煙のようなものが十数体、先程ドラゴンやペガサスが向かっていった方向へと飛んで行ったのである。

フルシアンは、その黒い靄に見覚えがあった。それは神聖ナナウィア帝国でランディー伯爵が変身した靄に似ていたのである。


「まさか!ランディー伯爵か!?だが、何体もいるな…あれは何だ?」


アントニーはその靄を見て言った。


「あれは上級魔法使いの連中が使う、いわゆる変異魔法さ。自分の体をああやって煙みたいなものに変異させて自由に移動が出来るんだ。だがあれは禁忌に近い術式で、やり過ぎると戻れなくなる。下手したらそのまま()()()()に引き摺り込まれちまうのさ…」


「上級魔法使いか…あれはガラたちを追っていったぞ?…何だか嫌な予感がするぜ。よし、急いで俺たちも向かおう!」


フルシアンは、アントニーと野生の馬を探し、神殿へと向かった。





ザッザッと大量の足音が近付いてくる。松明を掲げた軍隊がサーバス王国へ入っていく。神聖ナナウィア帝国の軍隊の旗を持っている。先頭を行くのは獅子の獣人型戦士、ナヴァロ将軍その人であった。しかし、彼の目に輝きはなく、どこか不自然な様子であった。


「武器を取れ!全軍前進!」


その軍はサーバス王国の野営地へと向かっていった。すると野営地から沢山の騎馬隊が出現し、叫び声と共にこちらに向かってきた。両軍激突である。凄まじい怒号と武器のぶつかる音がする。

とうとう本格的な戦闘が始まってしまったのである。しかし、それとは別に、既に王国内に侵入していた帝国軍は、首都アイウォミの建物を破壊し、火をつけた。サーバスの軍は挟み撃ちのような状況になっていたのである。


パラノ城では、テイラー妃が窓からその状況を見ていた。


「何かおかしいわ…すぐそこまで軍が来ているわね。街も燃え出したわ…」


テイラー妃の横にいる側近の女性が言った。


「王妃、予定では軍は国境付近でぶつかるはず。城下まで来るのは想定外です。これは…」


その時である。彼らの背後から声がした。


「王妃どうです?パーティーはフィナーレに近付いてますわ」


王妃と側近はその声の方へ振り向いた。そこにいたのはダークエルフの魔女、シルヴィであった。

彼女は、ニヤニヤと不敵な笑みを浮かべて近付いてきた。


「どういうことなの?これではまるで我が国が攻められているようではないか?」


シルヴィは立ち止まり、手を腰にやった。


「そうですとも妃殿下!これはまさしく()()ですわ」


「な、何ですって!?話が違うじゃないの!」


側近は剣を手に取り、シルヴィに向けて叫んだ。


「今すぐやめさせるのです!軍を撤退させなさい!!」


シルヴィは、手をひらひらとあおいで言った。


「そうはいかないわ。パーティーを続けなきゃ♡」


すると、側近は剣を落とし、呆然と立ち尽くすと、くるっと振り向いて窓へ走り出した。

テイラー妃は驚いて声を上げた。


「ちょ、ちょっとどうしたの?」


その側近の女性は、なんと窓を突き破り外へ身を投げてしまったのである。


「キャーッ!!あ、あなた!一体何をしたの!?」


「パーティーの邪魔はさせないわ。テイラー妃殿下、あんたには私の役に立ってもらう」


シルヴィは、テイラー妃の顔に手を近付けて目をじっと見つめた。すると、テイラー妃の目は生気を失い、目を開けたまま動かなくなってしまったのである。





「この野郎!よくもロブを!」


野営地の奥、勇者英雄隊テントの前では、エズィールたちと、サーバス勇者英雄隊が衝突していた。フィーンドの獣人戦士は怒りに身を任せ、持っている槍を頭上でぶんぶんと振り回している。

エズィールは、喉と腹の中心あたりに傷を負い、出血を抑えながらうずくまった。

その目の前にはフリンが立ちはだかり、弓矢による攻撃を防いでいる。


その時、サーバス勇者隊の女性ハーフエルフの弓矢使いが叫んだ。


「グレン待って!何か様子がおかしい!」


女性魔法使いと、グレンという獣人戦士は、その声を聞いてピタっと動きを止めた。


「な、どうした!イアン!何故止める!?」


イアンと呼ばれている女性弓矢使いは、人差し指を立て、口元に付けた。


「しっ…」


数秒間の沈黙が続く。


「そこだっ!!」


イアンは弓を引き絞り、エズィールとシイルの間の空間に矢を放った。


「グエッ!!」


皆がその方向を向いた時、何もないはずの空間に歪みが現れ、そこからウェアモンキーの小柄な男が現れた。肩に矢が刺さっている。


「貴様っ!さっきの!!」


フリンが叫んだ。そのウェアモンキーは、たしかに神聖ナナウィア帝国の将軍のテントで出会った者であった。


「チイッ!バレちまったようだなっ!」


ウェアモンキーは矢が刺さった肩を抑え、しゃがみ込んだ。


「この野郎!」


シイルがそのウェアモンキーに斬りかかろうとしたその時である。


ガチン!!


シイルの剣が何者かに防がれた。そこには、黒いウェアパンサーの男が現れた。

鉤爪の小手が月明かりに照らされ不気味に光った。


「マンク!大丈夫か?」


「フィル!面目ねぇ!バレちまったぜ」


ウェアモンキーのマンクはささっとウェアパンサーのフィルの後ろに下がった。

そして、フィルが低い声で言った。


「お前らは俺が相手してやる!!」

第五章は、水龍編です。ですが未だに水龍どころか、エイジアにも行ってません。大丈夫ですか?大丈夫なんでしょうか?多分大丈夫です!!

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