第7話「不屈」
「しまった!フラ…」
ピクシーのフランクは、ナリンチェ(白ワイン)に目がなかった。トゥームーヤと一緒にいた頃は、二人で明け方まで飲み明かしていたほどであった。
「も、もう我慢出来ない…何年も待ったんだ…この匂い…」
フランクはベッドの下に隠れているアラヤ王の手の届かない位置までフラフラと歩いて行き、ランディー伯爵の足元に転がるワインボトルへと近付いていってしまった。
ランディー伯爵は、床に寝転んでいるケリー公爵の体を持ち上げた。
「まったく世話のかかる男だ。子供の頃から何も変わっとらん。お前はこれから新たな皇帝になる男なんだぞ…少しは威厳を持ってもらわねば困る…」
アラヤ王はランディー伯爵が軽々とケリー公爵の体を持ち上げていることに驚いた。ケリー公爵は、それなりに体格が大きく、180センチ以上はある。
90歳を超えた老人がその体をひょいと持ち上げているのである。
(やっぱりおかしい…あのケリーおじさんを軽々と持ち上げてる…)
アラヤ王はランディー伯爵の足元を見つめていたが、フランクのことをすっかり忘れていた。
フランクは自分の体以上に大きなワインボトルを持ち上げ、残りのワインを口に流し込むようにしていた。
「フガフガ…あともうちょい…」
その時、フランクはワインボトルを持ち上げている手が滑り、自分の体の上に倒れてしまったのである。
「ぐえっ!」
そして、ワインボトルがコトンと転がる音が響いてしまった。
「ん?」
ランディー伯爵は、その音に気付いた。
「…なんだ?」
ランディー伯爵は、床に転がるワインボトルに手を伸ばそうとした。
その時である。
アラヤ王の後ろからネズミが1匹現れ、ランディー伯爵の足元を走り抜けて行ったのである。
「なんだ…ネズミか…」
ランディー伯爵は、くるっと振り向きケリー公爵の寝室を出て行った。
アラヤ王は、ふうと息を漏らし、肩の力を抜いた。
「はぁ〜、危なかった…」
彼はそっとベッドの下から出て、ワインボトルにつぶされているフランクを助け出した。
「おいフランク!危なかったじゃないか!」
フランクは起き上がり、もう一度ワインボトルを担ぎ上げ、残りのワインを飲み干した。しばらくぶりにワインの味を堪能して上機嫌である。
「ぷはーっ!こいつはうまい!…なぁに、俺の姿はお前さんにしか見えないんだ。何も心配することなんてないさ」
フランクは、まだ飲み足りない様子で、ケリー公爵のワインラックの中に入っていこうとした。
しかし、アラヤ王は、彼の首根っこを掴んで言った。
「おいおい、僕は君が出してやるって言ったから寝室から出て来たんだぞ!酒を飲むなら後にしろよ」
フランクは不貞腐れた顔でアラヤ王に言った。
「ああ、確かに、俺はそう言った。お前さんは間違っちゃいねえぜ…ちきしょう…。よし、じゃあ城から出たら、たらふくワインをご馳走してくれよな!約束だぜ!」
アラヤ王はやれやれといった表情で頷いた。
「よし、じゃあここから出るぜ!待ってな」
フランクは再び廊下へと出て辺りを確認した。
「よし、ランディー伯爵も行ったようだ。出るぞ」
アラヤ王はそっとケリー公爵の寝室から出た。そして、フランクについて歩き出したのである。
しかしその時であった。
「これはこれは陛下。こんな夜更けにお散歩ですかな?」
背後から突然低くしゃがれた声がした。アラヤ王とフランクはぞっとし、背筋が凍りつくような気がした。恐る恐る振り向くと、そこにはニヤリと不気味な笑みを浮かべたランディー伯爵の姿があった。
「まさか…さっきは誰もいなかったはず…」
フランクは小さな声で言った。
アラヤ王は体が震えて声が出なかった。
彼はゆっくりと振り向き、ランディー伯爵の顔を見た…
一方その頃、地下牢では…
ハンネ妃は、しばらく床に伏して絶望の淵にいた。涙が止まらなかった。しかし、その時にふと今は亡きトゥームーヤ皇帝の顔が浮かんだのである。
彼女は、トゥームーヤ皇帝と初めて会った時の頃を思い出した。彼女はサーバス王国との政略結婚によってトゥームーヤ皇帝の側室となったのである。まだ若干13歳であった。トゥームーヤは既に前皇后との間に子を授かっていたが、病の為、妻と子をほぼ同時期に亡くしてしまっていたのであった。
悲しみの淵にいた“賢帝”は公の場では、まったくその悲しみを晒すことなく、淡々と皇帝としての責務を果たしていた。
彼の中には、かつての帝国の栄華が赤々と燃え上がっていた。
一度落ちぶれた帝国を建て直そうと、必死に働いていたのである。まわりは彼がいつ起きていつ寝てるのかさえ分からなかった。“皇帝”という位ではあるが、今となっては、各国の王と権力の差はなく、主に外交的な手腕で各国をまとめ上げていたのである。
ハンネ妃にとってトゥームーヤ皇帝の姿は、思っていた姿とは全く違う姿であった。彼女は生まれながらにして、ナナウィア帝国に嫁ぐことが決められており、物心ついた時からトゥームーヤ皇帝のことを聞かされて育った。彼の好きな食べ物や趣味、また得意な狩りや、武芸などである。
しかしながら、彼女の中で“皇帝”というものがいかに雲の上の存在か知らされる度に、嫌気がさしていた。「どうせ、人を人と思わず、好き勝手に権力を振るっているに違いないわ」とさえ思っていた。
彼女は元来とても勝気の強い性格であった。剣の腕は師範も舌を巻くほどの実力を身に付け、学問においても興味があり、暇が空いては書斎に籠り、本を読み漁ったりしていた。自信たっぷりの彼女は、いつしか皇帝と対等になってやろうとさえ密かに思っていたのである。
しかし、13歳を迎え、ナナウィア帝国の庭園で彼の姿を見た瞬間、彼女の中の何かが大きく崩れた。トゥームーヤ皇帝の格好は、非常に軽装で素朴であり、膝や肘は布がほつれていた。また常に何かを考え、閃いたことを側近の人間に口述し、記録させていた。側近の一人が、遥々サーバス王国からハンネ妃(この時はまだであるが)が到着したと耳打ちした。
トゥームーヤは彼女を見てこう言った。
「これはようこそ、ハンネ。ここは君の自由に使っていい。どうか楽にしていてくれたまえ」
そう言うとまたふいとどこかへ行ってしまったのである。
ハンネ妃は呆気に取られた。偉ぶる素振りなど彼には微塵もなく、彼の顔は常に情熱に満ち溢れていた。彼女は、次第に彼のことが心の底から好きになっていった。
とは言うものの、トゥームーヤとハンネは親子程の年齢が離れていた。彼にとってハンネは妻というよりも、娘に近い感覚であった。彼はサーバス王国のギーザ王程ではないが、妾もたくさんもっていた。当初彼にとっては、ハンネ妃はあまり興味の対象ではなかったのである。
そしてハンネ妃が17歳になり、正式に側室となった。彼女は、トゥームーヤと行動を共にすることが多くなっていった。トゥームーヤの行っている外交や政策、時に出兵など様々な業務を身近で経験することが出来たのである。
ある日、まったく眼中になかった西方の地方国家が力を付け、“三国同盟”なるものを結び、ナナウィア帝国へ独立を認めるようにと使いを送ってきた。「ガニータ」「ヤーマン」「シズー・クァン」の三国である。
トゥームーヤは頭を悩ませた。拒否すればおそらく三国は力を合わせて攻め入ってくるに違いない。だが認めたとしても、将来的に同じ結末を迎えてしまう可能性がある。そして東方には宿敵サーバス王国があるのである。
ハンネ妃は、執務室で頭を悩ませるトゥームーヤ皇帝に対し、意を決して話しかけた。
「皇帝陛下。僭越ながら、このハンネめに一言お許しを。陛下のお力となるべく、申し上げたきことがございます」
その時、皇帝のまわりにいた側近たちがざわめいた。
「これは妃殿下。ここは政の場。あなた様のようなお方には相応しくありませんな。いかがですかな、庭園などお散歩なされては…」
側近の一人がそう言うと、トゥームーヤ皇帝は側近の言葉を遮り、こう言った。
「ハンネ。君にはこの難局を乗り越える何か良いアイデアがあるのかい?どうか聞かせてもらえるかな?」
皇帝からの言葉にハンネは一礼した。そして彼女は、皇帝にこう進言した。
彼女曰く、過去の世界の歴史における同様なケースは数多くあったが、いずれも強硬的に解決しようとした国は、必ず結果的に滅んでいるというのである。
また現状のナナウィア帝国には、三国同盟を押さえつけるだけの軍事力もない。
しかしながら、資源にはまだ余力がある。ここで彼女は段階的に三国同盟の独立を認めるという案を出したのである。実質的には四国間の同盟という形ではあるが、結果的にナナウィア帝国を中心とした連邦のような関係を築いていくというのである。具体的には、各国間の貿易の自由化、貨幣の統一、軍事同盟などである。
彼女の案は実に現実的であり、何よりも帝国の現状把握が実に的確であった。
周りにいた側近たちは、言葉を失った。つい最近まで少女であったこの若き妃が、どの側近たちよりも的確な進言をしたのである。
しかし、トゥームーヤ皇帝だけは、ニコニコしながら彼女を見つめていた。
「なるほど、素晴らしい考えだ。そしてここにいる誰よりも我が帝国の現実を捉えておる。」
皇帝は拍手しながら彼女に言った。そして、全般的に彼女の案を採用したのである。現実を直視せずに、皇帝の機嫌ばかりを伺っている側近に、皇帝は辟易していたのである。
それから皇帝は、帝国の運営に関する会議に必ずハンネ妃を同席させたのである。
皇帝にとって、ハンネ妃の存在は次第に大きくなっていった。そして彼は、ハンネ妃を一人の女性としても見るようになっていった。
ハンネ妃は、トゥームーヤ皇帝を公私に渡り支え抜いた。そして、アラヤを身籠ったのである。
しかし、トゥームーヤ皇帝は、その時既に60歳を越え、病に冒されていた。
病の床で、彼はハンネ妃にこう伝えた。
「愛するハンネ…おそらく私の代では、この帝国を復活させることは出来ない…どうか、私に代わってアラヤを支え、私たちの帝国を…再び栄光に…」
ハンネ妃は大粒の涙を流しながらトゥームーヤ皇帝の手を取って言った。
「愛しの我が君…このハンネ、あなた様の理想郷を必ずや築いてみせますわ…」
—そして彼女は今、薄暗い地下牢でトゥームーヤ皇帝の言葉を何度も繰り返し呟いた。
「私たちの帝国を再び栄光に…」
「私たちの帝国を再び栄光に…」
彼女は涙を拭い、ゆっくりと立ち上がった。
その時である。
廊下の奥で何やら音がした。
ギギィーという音と共に、倉庫の重い扉が開いた。すると、中からシイルたち自由の天地の面々が出てきたのである。
「シイル!来たのね!」
ハンネ妃は心から安堵した。涙が再び出てきたが、それはもう絶望の涙ではなかった。
シイルはハンネ妃を見つけると、すぐさま牢の前まで駆け寄った。
「皇后様!よかった!よくぞご無事で…!」
シイルは、あらかじめ隠し持っていた牢の鍵を使い、牢を開け、ハンネ妃を外に出した。
ハンネ妃は、シイルら全員と抱擁を交わした。
「何ということ!あなた方は本当にやってのけたのね!」
シイルはすぐにハンネ妃を外に連れ出そうとした。しかし、ハンネ妃は言った。
「シイルよ、どうか王を!我が息子アラヤ王をお救いくださいませ!私たちの計画は知られてしまいました…!」
シイルは愕然とした。
「な、何ですって!?」
「王の命が危ないわ!このまま私たちを殺して、ケリーを皇帝にする気だわ!」
するとサンボラが言った。
「よし、ではここで二手に分かれよう。シイルはハンネ妃を外へ連れ出すのだ。我々はアラヤ王の元へ向かう!」
シイルは頷いた。
「そうだな!ではあとは頼む!」
サンボラ、フルシアン、フリンは、アラヤ王の元へ向かうことにした。
「よし、予定ではアラヤ王の寝室は、玉座の間の上階に位置する。」
フルシアンは、ネズミに言った。
「君たち。とりあえずここで一旦お別れだ。また助けが必要な時に知らせる」
ネズミは名残惜しそうな顔をし、壁の隅の穴に入っていった。
フリン、フルシアンは数々の隠密作戦や、諜報作戦をこなしてきたスペシャリストである。物音一つ立てずに城を見渡し、最適なルートで城の上階へと向かった。
なるべく城の人間には見つからずにとうとう彼らはアラヤ王の寝室まで辿り着いたのである。
フルシアンは、懐から何やら“針金”のようなものを取り出し、アラヤ王の寝室の鍵を開けた。
「よし、これで開くぞ…」
三人は、ゆっくりとアラヤ王の寝室に入った。
寝室の中央には丸くて大きなテーブルがあり、たくさんの果物やお菓子が並べられていた。
そして、ベッドには綺麗にシーツが敷かれ、アラヤ王は、スヤスヤと眠りについていたのである。
フリンは、ゆっくりと近付いた。
「殿下…殿下…起きてください…」
フリンはアラヤ王の肩を優しく揺さぶって起こそうとした。
サンボラは寝室全体を見守り、フルシアンは寝室の外を見張った。
「う…ん…だぁれ?僕のことを起こすのは…」
アラヤ王は、眠い目を擦りながら目を覚ました。
「殿下、私のこと覚えるかにゃ?あの時、ダークグリフォンの首を持ってきたウェアキャットです」
フリンは王を刺激しないようにゆっくりと優しく話しかけた。
「え?あ、ああ、うん…覚えてるよ…す、すごかったね…」
「殿下、我々はハンネ妃…お母様の使いです。これから城の外へ連れ出します。我々と一緒に来ていただけますでしょうか?」
アラヤ王は、キョトンとした顔をした。
その時である。フルシアンの足元に、再びネズミが近付いてきたのである。
ネズミは何やらフルシアンに伝えたいことがあるようであった。
「うん?君はさっきの…どうしたんだい?」
サンボラは、何やらフルシアンがぶつぶつと言っていることに気が付いた。
「フルシアン…どうかしたのか?」
フルシアンは、血相を変えた。
「…な、何だと!?そんな…」
突然フルシアンは、寝室に飛び込み、フリンに叫んだのである。
「フリン!離れろ!そいつは王じゃない!」
すると、フリンの背中に負われていたアラヤ王の手には短刀が握られており、それをフリンの胸に突き刺したのである。
「グフッ!」
フリンは血を吐いて倒れ込んだ。
「クソッ!」
フルシアンはすぐさま弓を取り出し、矢を放った。
アラヤ王は、その瞬間、信じられないスピードで飛び上がり、矢を避けたのである。
「…何ッ!?」
サンボラは、杖を取り出し、念じた。
「貴様…正体を明かせ!アクセプト!」
サンボラの杖から紫色の波動が迸り、アラヤ王の体を包んだ。
「ぐああっ!」
アラヤ王は叫び、もがいた。
すると、たちまち王の体は不気味に変形し、召使いの格好をした女性に変わったのである。しかし、彼女の顔つきはうつろで目の色は白く、血の気のない真っ青な顔であった。
「貴様!何者だ!」
「キキキキ…」
その女性は不気味な笑い声を浮かべながら、短刀を持ち替えてサンボラに襲いかかった。
シュバッという音と共に、あっという間にサンボラの胸元までたどり着いた。しかし、寸前でフルシアンの弓矢が刃を防いだのである。
「このスピード!パワー!こいつ普通の人間じゃない!」
フルシアンは弓で防ぎながら、ナイフを取り出し、その女性を斬りつけた。
しかし、さっとそのナイフを交わし、女性は後ろに飛んだのである。
フルシアンは、ナイフを構えながら、フリンに目をやった。フリンは胸元を押さえながら苦しんでいる。
「サンボラ!フリンを!」
サンボラはフリンの元へ駆け寄り、傷口を見た。
「大丈夫だ!心臓には達してない!止血せねば!」
サンボラは、マントを破り、フリンの胸にギュッと縛り付けた。
そして、詠唱を始めた。
「白魔法ほどではないが、古代の回復魔法を…ナオロイン!」
すると、サンボラの手から青白い光が浮かび、フリンの傷を照らし出した。
フルシアンは弓矢を構え、ジリジリと召使いの女性と対峙している。
ヒュッと矢を放つと女性はすぐさまその矢を短刀で払い落とした。
そして、素早く矢を装填し、再び放った。
すると再び女性は払い落とした。至近距離であるのにも関わらず、常人離れしたスピードである。
フルシアンは、咄嗟に考えを巡らせた。すると彼の視線の中に、ランプが入ったのである。
フルシアンはおもむろにランプを掴むと、女性めがけて投げた。ランプが女性のちょうど頭上付近に達すると同時に、フルシアンは再び矢を放ち、ランプを破壊したのである。
すると、ランプのガラスが飛び散り、中からオイルが漏れ、女性の体にかかったのである。
「キキッ!」
女性は何事か分からずに、払い除けようとした。
すると、フルシアンは懐から何やら石を取り出し、その石を再び女性に向けて投げつけた。
そして、また再び矢を放った。
「燃えろ!」
矢は石に当たり火花が散った。するとその火が女性の体にかかったオイルに引火したのである。
「ギャアァァァァァァーッ!!」
火は、女性の体を包み込んだ。火だるまになり、女性は必死にもがき苦しんでいる。
そして、フルシアンはもう一度弓を力いっぱい引き、女性の眉間目掛けて放った。
シュバッ!!
矢は女性の眉間に見事名中した。
「ギャウァァァァァァ〜ッ!!」
人間とは思えない断末魔の叫び声をあげ、女性は力尽きて倒れた。
「よし!やったか…」
フルシアンは、ふうと息を吐き、弓を下ろした。
その時である。
「…そこまでだ!」
寝室の窓際から声がした。全員その方向へ向くと、そこにはランディー伯爵が立っており、彼の目の前には、アラヤ王が立っていたのである。
ランディー伯爵は、アラヤ王の首元にナイフを突き付けていた。
「ランディー伯爵!アラヤ王!!貴様!!」
サンボラはフリンを抱えながら叫んだ。
「よくぞこの城に入ってきたな…貴様らは反政府組織の連中か?…うん?よく見るとどこかで見た覚えのある連中だな…」
ランディー伯爵は、鋭い眼差しと低くしゃがれた声で彼らに話しかけた。
「貴様らはクァン・トゥー王国の使者どもではないか…なんだ?我が城に侵入し、王を誘拐しようとするとは…これは我が帝国を敵に回すということになるぞ?」
ランディー伯爵の目が赤く光り出した。
「黙れ化け物め!貴様ランディー伯爵に化けてこの国をどうするつもりだ!」
フルシアンは叫んだ。そして弓を構えた。
「キキキキ…わしは紛れもなくランディー伯爵だ。何を言うか…おそらくハンネ妃の使いだろう。あの女め…わが計画を邪魔しおって…」
アラヤ王は、涙を流しながら耐えている。
「矢を放っても無駄だ。王に当たるぞ。貴様ら…王の命を守りたくば武器を捨てるのだ…」
サンボラ、フリン、フルシアンは悔しさを滲ませながら武器を捨てようとした。
その時である。
ランディー伯爵の背後から何者かが近付き、ランディー伯爵を剣で斬りつけたのである。
「グアアッ!」
その瞬間、アラヤ王を掴んでいた手が緩み、アラヤ王はすぐにフルシアンの元へ駆け寄った。
「よし!」
ランディー伯爵が物凄い形相で振り向くと、そこには剣を持ったケリー公爵が立っていたのである。
「この化け物め!」
「ケリー公爵!!」
サンボラは、驚いた。
「よくも私を…皆を騙しおったな…!許せん!」
ケリー公爵は、剣を持ちわなわなと震えている。
ランディー伯爵は、ケリー公爵を睨み付けた。
そして、不気味な笑みを浮かべた。
「よかろう…どうやら本気でわしを怒らせたいようだな…」




