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第71話 戦場を踊るポーションたち

「はい、クレイさん!」

「ほいきたラーナ! 【ポーション生成】!」

「次です、くれいさん!」

「よっしゃ、こいラーナ! 【ポーション生成】!」


 ラーナが聖水を出して、俺が素材とまとめて【ポーション(聖浄化再生)《ホーリーリニューアル》】を生成。そんな流れ作業が延々と繰り返されていた。

 俺の周りに、次々とポーションの瓶が生み出されていく。


 さて、ポーションを作りつつも、やるべきことがある。


「ティナ、こっち来れるか?」


 短髪を揺らして、ぬっと俺の傍に来たティナ。

 アイリアやエトラシアが前線に復帰したことで、ティナに余裕ができた。


「ん……」と無表情に俺の作ったポーションを覗き込んだ。


「ああ、これは強化人間を元に戻すポーションだ」

「クレイおにい、サラッととんでもないのつくる」

「でな、ある程度数が揃ってきたんだが」

「ん……わかった。万事ティナに任せるがよろし」


 俺の考えを察したティナは、杖を掲げて詠唱に入る。



「――――――物質掌握舞踏(マターコントロール)!」



 魔法発動と共に、ポーションの瓶が次々と宙に浮いた。


 浮いたポーションたちは一斉に戦場を駆け巡り、クスリを注入された強化聖騎士たちの口に、スポスポ突き刺さっていく。


「ふあぁ……すごい、ティナちゃん」


「えっへん。ティナの言葉に偽りなし」


 魔法を連続使用しつつも、控えめな胸を張る小さな大魔導士。


 ラーナの言うとおり、こんなとんでもない魔法を使えるのはティナだけだ。

 実はこれ、ちょっとした生活魔法が元なんだが、ティナは改良に改良を重ねてある程度の物体を操れるようになった。


 相応の魔力に加えて、複数の物体を精密にコントロールする技術が無ければなしえない魔法。

 幼少の頃から、その才能に奢ることなく魔法研究と実践に明け暮れた、魔法オタクのティナだからこそできる芸当である。


 これで、作ったポーションは即時に飲ませることが出来る。


「よし、ラーナ! ガンガン作るぞ!」

「は~~い、ドバドバ聖水だします!」


 こうして、俺たちでポーションを作りまくり、ティナが飲ませまくりの怒涛のラッシュが始まった。

 戦場に飛びまくるポーションたち。


「ギョガァ……ァァ……」

「グビャァ……ァ……」

「ゴルップゥウウ……」


 ポーションを突っ込まれた強化聖騎士たちが、次々とその場に倒れて痙攣をはじめる。

 嘔吐と痙攣にまみれた戦場は、異様な雰囲気になってきた。


「はぁ……わ、わたしはなにを??」

「くはぁ……」


 最初にポーションを飲んだ強化聖騎士たちは、人間の意識と姿を取り戻し始めていく。


 よし、効果は充分に発揮している。


「ば、ばかなぁ……わたしの人形たちがぁ……!?」 


 人間に戻り始めた強化聖騎士たちを目の当たりにして、狼狽えるダムロス大司教。


「し、新種のポーションを生み出したうえに、た、大量生産だとぉ……こ、こんなことがぁ……あり得ん」


 大司教が聖騎士たちに攻撃続行を叫ぶも、何が起こったのか把握しがたい状況に陥った彼らにその言葉は届かない。


「うむ、半数は元に戻ったな」

「ですね、クレイさん。ハァハァ……」


 ラーナが肩を震わせて、息を切らしている。

「神青の聖水」は普通の聖水を出すより、ラーナの負担がはるかに大きい。


「ラーナ」

「大丈夫ですよ。あと半分……やり遂げます」


 俺が何を言おうとしたのか、なんとなく察したのだろう。

 彼女は続行の強い意志を示した。


「クレイさんこそ……オーバーワークですね。ハァハァ……ずっとポーション作ってますよ」


 そうか、オーバーワークか……俺の残業まみれだった前世ならば、その言葉が当てはまるんだろう。

 が、ここはかつての俺がいた場所じゃない。


「ラーナ、これはワークじゃない俺の趣味だ」


 だからなんの苦も感じないよ。


「ふふ、そうでした。クレイさんでした」


 テヘっと舌を出したラーナが、思い出したように呟いた。


 その後も、ポーションを作りまくった俺たち。


 時間の経過と共に、

 強化聖騎士たちは、全て人間へと戻っていった。


 俺はポーション屋敷のメンツとフロンド戦闘班に、いったん戦闘停止の指示を出す。

 ブちキレていたアイリアも暴れまくって気が済んだのか、俺の言う事に素直に従った。


「だ、大司教様! これはいったいどういうことですか!」

「なぜ我々に化け物のクスリを!」


 正気に戻った聖騎士たちに取り囲まれる、ダムロス大司教。


「…………クフフ……まあよくもここまでぶち壊してくれましたねぇ。わたしがお膳立てしてあげたとうのにぃ」


「お膳立てとは、どういうことですか!」

「そうだ、そうだ! 説明を!」


 取り囲んだ聖騎士たちが、口々に声をあげる。


「どうもこうも、そこの聖女ラーナが手に入れば、わたしの強化人間は完成するんですよぉ~あなたたちみたいな失敗作ではなくねぇ~」


「では、聖女が犯罪者で邪教徒たちを扇動しているというのは嘘だったのか!」

「な! 失敗作だと! 人の命をなんだと思ってるんだ!」


 大司教の企みに、聖騎士たちの怒りのボルテージがみるみる上がっていく。

 俺は鞘に手を当てた。


 アイリアも同じく、武器を構える。


「なにかありそうですわね」

「ああ、そうだなアイリア」


 取り囲まれた状況下で、赤裸々に自身の罪をさらした大司教。

 追い詰められてゲロったとも取れるが、やつはなにか吹っ切れた感じがする。


「大司教、あなたを聖教国に連行する」

「おとなしくせよ!」


「クフハハハハ~~まったくここまで人類に尽くしたわたしが、連行ですって? 笑えますよぉお~~!!」


 大司教は、懐から出した注射器を自身の腹に刺した。


「ぐぬぅう……クズどもに裁かれるぐらいならぁ~~ここで全てをぶち壊してやりますよぉ~~」


 ダムロス大司教の身体が、どんどん膨れ上がっていく。

 強化人間のクスリを自分に使いやがったな……



 ―――いいだろう、決着をつけてやる。




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