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第70話 転生王子、新たなポーションを生成する

「さて、ラーナ。もうひと仕事いくぞ!」

「はい! クレイさん」


 回復ポーションを大量作成しながら、ずっと考えていた。

 強化人間を元に戻せるのか。


 脳内で何度も試作を重ねた結果、試してみたいポーションがすでに浮かび上がっている。


 まずは―――


「ラーナ、しんどいかもしれんが、「グッ」っとやる聖水を頼む」

「は~~い、クレイさん。私がんばる!」


「くぅう……!」と踏ん張るラーナの手から、先程まで出していた聖水よりもより青い聖水が出てきた。


「神青の聖水」だ。最も濃度の高いラーナの聖水。浄化効果抜群の素材だ。


 ドバドバと瓶に注がれていく「神青の聖水」。

 よし、きついだろうがこちらはラーナに任せておくとして、次の素材の用意だな。


 俺はポーチに手を突っ込み、キノコを出す。


 フェルの毛をいじってた時にブチっと回収した、デトックスマッシュルーム。

 こいつは体内の不純物を外に出す効果がある。いわゆる下剤みたいなもんだ。


「毛づくろいのたびにブチブチ取ってたから、いっぱいあるぞ。フェルに感謝だな」


 俺はポーチからキノコを大量に出した。


 その他には、基本素材である魔力草と体力草。

 そこへラーナの「神青の聖水」がたっぷり詰まった瓶が、次々と出来上がってくる。


「よし! これで素材は揃ったな」


 さぁ~~いよいよ作成だ!


 スキルを発動して―――



「【ポーション生成】!

 ――――――【ポーション(聖浄化再生)《ホーリーリニューアル》】!」



 俺の手から、あらたなポーションが姿をあらわした。


「わぁ……綺麗なポーションですね……クレイさん」


 ラーナが聖水を出しながらも、深青の輝きを放つポーションに見惚れている。

 俺も多くのポーションを作ってきたが、ここまで綺麗なポーションははじめてだな。


 ではさっそく。


 俺は完成したポーションを持って、ヒクヒク痙攣している強化黒服の元へむかった。


「そのポーションで、クルスたちが元に戻るのか?」


「ああ、そうだ」


 強化黒服の傍にいた隊長とタイナーが、じっと俺のポーションを見ている。



「クハハハ~~元に戻すポーション? バカなんですかぁ~そんなものはこの世に存在しませんよぉ~ねぇ」



 大司教がクフフと笑いを漏らす。


 存在しないか……


 だから作ったんだよ。


 今回はぶっつけ本番だ。

 本来なら試作を重ねるのだが、そんな暇はない。


 今までの生成知識と、経験値から導きだした新ポーション。


 強化黒服の口に無理やりポーションを注ぎ込む。


「……ッ……ガッ」


 反応があった。


 強化黒服の身体がビクッと跳ねて、その場でゴロゴロと悶え始める。

 そしてうつ伏せになると……


「ギャ……グガァアア……」


 大量に黒い液体を吐き出しはじめた。


「な! おい、王子……!?」

「ふぁ! クルスさん!?」


 脇で慌てる隊長とタイナーに俺は手を横に振り、止める。


「まて。ポーション効果が出ている証拠だ」


「こ、効果なのか……?」


「そうだ、不純物をすべて吐き出しているんだ」


 強化黒服3体は、痙攣しながら嘔吐を繰り返す。


 が、その行為もすぐに収まった。


「こ、これは……!?」

「ふあ! クルスさんたちが!」


 不純物であるクスリの成分をすべて吐き尽した黒服たちは、その化け物じみた身体から、人間の身体へと徐々に戻っていった。


「ぐはぁ……むぅ……た、たいちょ……」


 意識が戻ったか。


 人間の言葉を発した強化黒服たちに駆け寄る隊長とタイナー。大司教のクスリによる支配は、ラーナの強力な聖水による浄化作用で解除されているようだ。

 さらに俺の基礎ポーションによる修復効果も効いている様子。

 まあ切れた腕などまでは再生できないが、少なくとも人間の身体は取り戻した。


「よし、効果ありだな」


「あの怪物を元に戻すなんて……クレイ殿は本当に凄いな……」

「ふふっ、クレイさんはやっぱりポーション狂いのイケメンですね」


 ラーナとエトラシアが、半ば呆れたような驚きの声をだす。


「むぅ……こんなことが……とんでもないポーション野郎だな。貴様は」

「ふわあぁあ~~みんなぁ~~」


 隊長は元に戻った黒服たちを見て、半ば信じられないといった唸りをあげる。


「……ぜだ」


 そして後方からもれる声。大司教か。

 彼は護衛の強化騎士をかき分けて、黒服たちを凝視した。



「なぜだぁああ!―――――――――なぜ戻っているぅううう!!!」



 目に血管を幾重にも走らせたダムロス大司教が、叫び声をあげた。


「ありえない……人形どもは時間経過で爆散するか、その前に生命力を限界まで使い切って壊れるかのどちらかだぁ! それ以外の結末はないんですよぉ! 元に戻すポーションなんて存在しないんですよぉおお! たとえ聖女ラーナの聖水をもってしても!」


 大司教の憎悪の視線が俺に向けられる。


「だが戻ったぞ」


「ありえないありえないありえないぃいい! わたしのクスリがぁああ!!」


「そのクスリを過信しているようだが、俺もポーションにかけてはゆずれないんでな」


 それにな……


「ラーナの聖水は人を苦しめるためにあるんじゃない。助けるためにあるんだよ」


「こ、このポーション王子がぁ……うきぃいいい!」


 頭を掻きむしり奇声を発する大司教。


 俺は、再び黒服たちに視線を向けた。


「黒服たち。これで貸し借りはなしだぞ」

「ああ、わかっている。礼は言わんぞ王子」


 アイリアのピンチを救ったし、共闘とはいえ彼らの働きは大きかった。

 が、あくまで一時休戦なだけ。こいつらと慣れ合う気も無い。


「さて、どうする? 敵対するなら、容赦はしないが」


「……はじめに言っただろう。終わったら去ると」


「何を言っているのですか、あなたたち! さっさと王子たちを始末しなさい! 今まで育てた恩をアダで返す気ですかぁ!」


 恩て……どの口がそんなことを言うんだよ、こいつ。


 隊長はヒステリックに叫ぶ大司教には答えず、俺に視線を向ける。


「我らがあやつの元にいる存在意義は無くなった。この場で敵対もしなければ加勢もしない! 行くぞ!」


 その言葉を残して、黒服5人は音もなくその場から消えていった。


「ぬぁああ! 役立たずのクソどもがぁあ! あなたたち! 早くそのうっとしい槍娘をなんとかしなさい!」


 アイリアの攻撃に、押され気味な大司教護衛の強化聖騎士たち。

 スピアを縦横無尽に振るうアイリアの猛攻に、徐々に動ける護衛聖騎士が減り始めている。


 これで当面は、俺たちに横やりは入れられないな。



「よしラーナ! もうひと踏ん張りできるか?」

「もちろんです! クレイさん!」


 なら、今度は――――――こっちだなぁ


 俺は再びポーション生成!の連呼を開始する。


 作るのは【ポーション(聖浄化再生)《ホーリーリニューアル》】だ。


「ガンガン作るぞラーナ!」

「は~~い、クレイさん!」


 強化人間なんざ、全て元に戻してやる!



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