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ダンジョンは世界だ!  作者: トト
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89 砦 その1

 いやもう、大変なとこに来ちゃったな。


 それが正直な感想だった。


 オレやエスタなんかは、尖兵見習いの中では、まあそれなりにやれているとは思っていた。

 だが、まさか6層への階段を守る砦に行けと言われるなんて。


「ガライ。まだビビってんの?」


 揶揄うように言ってきたのは、砦行きを命じられた尖兵見習いの中の紅一点。モーラだ。


 魔法を身体強化以外に全く使わない、珍しいタイプでもある。


「そりゃビビるさ」


 カッコ付けてもしょうがないので、素直に言う。


 つか、モーラ。お前、最初に砦見た時に「やべ。チビりそう」とか言ってたよな。


「あ、あれは武者震いみたいなもんだし」


 完全な小物の台詞だね、そりゃ。

 オレとエスタは顔を見合わせた。


 モーラも黙って立ってりゃ、かわいいんだけどなぁ。喋ると非常に残念になる。

 弟のハースなんて、さっきからイケメンを全く崩さず黙って立っているのに。

 ハースは、ハースで無口すぎるけどね。


 ここでのオレたちの仕事は、砦の周囲の警戒と、一緒にやってきた開拓者たちの警護だ。


 もちろんオレたちだけでやるわけじゃない。


 イシュルさんたちの仲間のドワーフ、パムさんが一緒だ。


 パムさんがリーダー兼オレたちの教官ってとこだろう。


 正直、パムさんなしに砦周辺の魔物に勝てる気はしない。


 え?一月もすれば勝てるようになる?実例もある?


 それはやる気がでる話だ。

 特にモーラは、抜き身の剣を持ったまま興奮している。


 オーガと戦ったばかりで、全身に返り血を浴びているんで、怖いんですが。


 オーガを解体回収した上で、周囲に植えた真木に異常のない事を確認して、砦に戻る。

 昼メシ前に風呂を浴びた。特に前衛は血と油で酷いことになってるしね。


 同じ前衛で、しかもハンマー使いのパムさんは、大して汚れてないのになあ。


 早く、強くなりたい。


 共同浴場で湯に浸かりながら、さっきまでの戦いを反省する。


 といっても、湯が気持ち良すぎて油断すると眠りそうになるんだけど。


 砦は前線といっても、ちゃんと必要なものがそろってる。


「一番疲れる場所なんだから、一番寛げるようにしとかないとな」


 デレクさんは、そう言っていた。


 共同浴場はもちろん、教会や雑貨屋、鍛冶屋に食堂まであって、砦というより完全に村だ。


 もっとも多い家も、まだちょっと足りずに共同生活をしているが、近いうちに希望すれば一人一戸となるだけの数が建つはずだ。


 尖兵も開拓者も交代で家を建てまくっているからな。


 ちなみに今日のオレたちの予定は、午後から畑仕事の手伝いとなっている。


 風呂で襲ってきた眠気を振り払い、午後も頑張ろう。


 3層からやってきた開拓者と一緒に畑仕事に精を出す。


「戦ってるよりキツい」


 ハースがいつものクールな寡黙さをかなぐり捨て、汗だくで肩で息をしながら鍬を振っている。ちょっと鼻水まで出てるぞ。


 ここの姉弟は、本当に色々残念だ。


 手を抜かないのは、偉いけどさ。


「やっぱり草抜きの方がいいんじゃないの?」


 心配そうにエスタが言った。


 今オレとエスタがやっている草抜きは、(軟泥〉をかけては根っ子ごと草を引き抜く作業だ。地魔法を鍛える事にもなり、魔法主体で戦うハース向きに思える。


 だがハースは自分で、草を抜いた後の土を返す作業を希望した。


「腰を屈めて作業するなんて、僕には無理」


 さよか。


 まあ頑張りたまえ。


 脇でモーラや開拓民の子供たちが軽々と鍬を振っているのと、対比がすごいけどね。


 モーラにはともかく5、6才の子供には負けるなよ。


 それにしても開拓民の人たちは若い。一番歳上の人でも、オレとあまり変わらないくらいだ。


 エスタとは、前から知り合いっぽかった。


「前に王都に行く途中で、ちょっと知り合ったんだよ」


「俺たちが襲ったんだよ!」


 え?なにそれ。

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