87 四天王(最弱)
とりあえず、シモベの召喚を行う。
エルフ、ドワーフ、ノームの三種族を各10人。
彼らには、この山を守ってもらうことにする。
その為に、まずこの山から魔物を排除して、本当に要塞化を行うのだ。
さすがに、ここまで魔王軍が来た時に30人で守るのには無理があるので、そこまで要求する気はない。
30人が行うのは、あくまで要塞化。
ここが戦場になった場合は、眷族シモベに協力者全員であたるしかない。
それまでは俺たちがこの要塞を越えて、あの魔樹の密林を引っ掻き回す。
要塞整備の時間稼ぎももちろんだが、魔樹を減らして、真木を植えまくれば、戦わずして魔王軍を6層から排除することも可能かもしれない。
希望的観測なのは、わかっているけどね。
◇◇
「前線の瘴気が薄まっているだと?」
魔王軍6層侵攻軍団本営で、軍団長にして魔王軍四天王であるゴブリン・ジェネラルが唸った。
魔王軍といっても彼らは、下層全てを支配しているわけではない。
ゴブリン・ジェネラルの属する魔王は7層から10層を支配するのみ。
7層は迷宮層なので、実質的に支配しているのは3層分ということになる。
「はい。前線で瘴気を吸収し魔素を出す樹木が植えられているようです」
報告に来たミッド・オークが頭を下げた。
「焼き払え」
「は。その手段は」
「そこまで儂の指示が必要か?頭なしの魔物を送りつければ、勝手にその樹木を攻撃するだろうが」
頭なしの魔物というのは、知能を得ていない魔物を魔王軍で侮蔑的に指す言葉だ。
「はは!」
ミッド・オークは更に頭を下げる。
「魔樹の森を進めるのは、まだ無理か」
ゴブリン・ジェネラルは傍らに立つ人形のような男に尋ねた。マッドクラウン。道化師人形の魔物だ。
「進めるのは簡単ですが、魔樹の数が足りていません。かえって瘴気の濃度が薄まるだけかと」
大げさな身振りで、マッドクラウンが言上する。
「どの程度かかる」
「当初の予定では、要塞まであと一年程度かかるはずでした。それを縮めるのは難しいでしょう」
「ふん。要塞や5層に魔樹を先行して持っていったのは、失敗だったな」
マッドクラウンとミッド・オークは黙って頭を下げている。
それを命令したのは、ゴブリン・ジェネラルだったが、それを指摘してもなんにもならないのは、部下の彼らは良く分かっていた。
「使える頭なしどもは、全て使え。奴らが暴れて死んでも瘴気は増える。せいぜい役に立ってもらおう」
「はは!」
ミッド・オークは退出した。
頭を垂れ、一切ゴブリン・ジェネラルに表情を見せることなく。