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ダンジョンは世界だ!  作者: トト
74/134

71 お買い物

 開拓村には、5日に一回は帰るようにしている。


「これはまた、随分大きな命石(ライフコア)だな」


 交換所の受付でオロンが驚いている。


 今日、持ち込んだのは俺たちがツリーボアと呼んでいる魔物の、命石(ライフコア)だ。今までは、俺たちの偽装したレベルと釣り合わなかったので、持ち込んでいなかったものだ。


「ツリーボアと名付けた魔物のコアだね。イシュルさんの弓で一撃だった」


 嘘です。ホントは、シャルの弓です。


「ヘビなのか?」

「大蛇だね。倒木と間違えるくらいの」


 俺の言葉に、オロンは顔を歪めた。

 ヘビが嫌いだっけ?


 名前は、色も太さも木のようなので、俺が名付けた。ネーミングセンスがないのは、認める。


 ただ、西の森の奥の方に入ると、見たこともない魔物が大分増えてきている。

 主な魔物に命名するだけで、一苦労だ。適当な名前にもなる。


「他の素材は?」

「一応、持ってきてるんで、そっちはシャルたちが雑貨屋に持ち込んでる。ああ、肉は美味かった」


「ふーん。250(グラム)か15000サルーだな」


 オロンは命石(ライフコア)の重さを測って、銀貨を15枚よこした。

 討伐報酬金だ。


 コアはキャラバンによって、開拓局に持ち込まれ、上層の様々な場所で使われる。

 一般的な利用法は、魔道具の駆動源だ。


 おそらく、値段は数百倍になっているだろう。


 そう考えると、オロンの中抜きなんて、可愛いものだ。


「じゃあな」


 交換所を出ると、雑貨屋へ向かう。

 雑貨屋は、教会のとなりにあるが、ちょうど教会からシャルとノマ、それに雑貨屋の主人ヘルムが出てくるところに、行きあたった。


「どうだった?」

「思ったより有用だった」


 満足気にノマが言う。


「皮は防具に。骨は灰にして金属の強化。牙は毒消し。目玉は魔法の強化。そして」


 シャルは思わせぶりに溜めを作った。


「血は魔力回復薬になるって」


「ほう」


 シャルたちが言っているのは、神殿にツリーボアの素材を持ち込んで行った祈祷の結果だ。


 新しい魔物の素材を得たら、神殿で祈祷すれば使い道と加工方法がわかるのだ。

 ヘルムはそれにしたがって、素材を加工して販売している。

 雑貨屋が神殿近くにあるのは、そういうわけだ。


 ちなみに、祈祷で得た内容はダンジョン内の神殿に共有される。新たな素材と利用法が得られた事が、一斉に告知されるのだ。


 貴重な物は、キャラバンが買い上げて上層に持って行くことになる。


 今回の場合は、血がそれにあたるだろう。


 今までは、魔力回復薬は貴重な万能素材の命石(ライフコアでしか作れなかった。

 需要が多く供給が限られるコアを使う魔力回復薬は、恐ろしいほど高価になる。


 だが、ツリーボアの血は他に使い道がないのだ。一定の供給量が確保できれば、安くなる可能性は高い。


「この血、どれくらい取ってこれる?」


 まだ若いのに、妙に老けて見えるヘルムが、珍しくギラギラとした目の輝きを見せながら聞いてくる。


「まあまあ数は見るから、月1頭程度ならなんとか?」

「ちゃんと血を抜けば1樽程度は取れるよね」

「運ぶ方が難しい」


 ノマが言う通り、西の森の拠点から中身の詰まった樽を運ぶのは、大仕事だ。

 今日、素材を持ってくるのだって大変だった。

 俺たちはマイダンジョン利用の瞬間移動が使えるが、村のど真ん中に出てこれるわけじゃないしなぁ。

 

「確かに馬車でもないと無理か」


 ヘルムが唸る。


 そして馬車が通るには、道が必要だ。百歩譲って、草原部分は道なしでもどうにかなるかもしれないが、森の中は無理だ。


「村長に相談してみるか」

「道を作るように?そんなことに人を割くかな?」

「月1樽の魔力回復薬だぞ。どれだけ戦力向上になるかと思えば、考える余地はある」


 あ、上層とかに売って儲ける為じゃなかったのね。

 俺が心の中でヘルムに謝ろうとした時。


「お前だって、5千サルーくらいだったら、当然欲しいだろう?」


 結局、売る気なんか〜〜い!


 謝る必要は、カケラもなかった。


 持って来た素材は、1万サルー程で売れた。

 売った金で、森の拠点(とマイダンジョン)用の資材を買う。


 今回買ったのは、布地関係だ。他のものはともかく、布だけは自給のアテはない。

 もっとも、それは村も同じで布地は全て上層から持ち込まれている。


 つまり、高価い。


「まあ、こんなものかしらねー」

「うーん」


 手にした布の種類と量に不満そうなシャルとノマ。


「勘弁してくれよ。それで、在庫の半分だぜ」


 一方のヘルムは、口ではそんなことを言いながら、大量一括購入にホクホク顔であった。



 村での用事を済ませて、西の森の拠点に帰り始めた俺たちに、鳥のシモベから一報が入る。


 階段が見つかった、と。

読んでいただき、どうもありがとうございます。


今回の話の投稿前に、以前の話の中に出てくる討伐証明を部位からコアに変更してあります。

なるべく過去分に遡っての訂正はしたくないのですが、緻密さとは縁遠い頭をしているので……


出来るだけ気をつけますので、ご勘弁ください。

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