70 方針の確認
「お、建物が増えたな」
久しぶりに西の森の拠点にやってきて、その変化を目の当たりにする。
畑も家も大分増えている。
まだ家は10軒もないが、かなり村らしくなったといえよう。
マイダンジョンの方も、大きく変わっているけど、あっちは旅の間もちょくちょく寄っていたからね。
ちょくちょくというか、ほぼ毎日だけど。
「人手が増えましたので、作業もはかどります」
留守を預かっていたエレールが胸をはる。
「みんなのレベルは、どれくらいまで上がった?」
「獣人の皆さんは幼い子を除けば、そろそろ10に手が届きます。あとの女性の皆さんは、始めたばかりですから、やっと3というところでしょうか」
「順調じゃないか。ありがとう、エレール、ヴァニラ、ナニー」
そう礼を言うと、3人は顔を真っ赤にして頭を下げた。感極まって、声も出ない様子だ。ヴァニラなんかは泣きそうになっている。
お礼を言うのも、考えて言わないといかんな。
「さてこれからの方針だけど」
シャル、ノマに6人のシモベを前にして、俺は腹案を話し始める。
「とりあえずの大目標は、6層への進出と5層の制覇だ」
「大きくでたわねー」
「6層への階段も未発見なのに」
シャルとノマからツッコミが入る。
「そもそも5層の制覇って?」
「シャルの言うとおり、制覇っていっても良くわからんよな。もうちょっと具体的に言うと開拓村と6層への階段との間に、安全な街道を通すことを目指す」
「6層への階段を探せないと、話になんないわけね」
シャルが腕組みをして、豊かな胸が強調される。
俺の視線に気がついたのだろう。ノマも腕組みをして、自分の胸を強調しようとする。
だがノマ。
それは強調しているんじゃない。隠しているんだ。
たぶん、俺は優しい表情でノマを見つめていたと思う。
「なに?」
面白くなさそうにノマが尋ねた。
「あ〜。いや、その、階段を見つける事は、それほど難しくないと思っている」
挙動不審だが気にしない。
「その自信はどこから?」
「新しいシモベに任せるつもりだからね」
そういう俺の背後にある気に5羽の鳥が舞い降りる。
2層で馬車の外を見る為に召喚したシモベたちだ。
1、2層の監視はネズミのシモベに切り替えたので、今までは自身のレベル上げをしていてもらった。
「なるほど、空から見つけるわけか」
「幸い、5層では空を飛ぶ魔物はいないからね。早く、安全に階段を探すことができる」
大目標と、とりあえずの方針は決まった。
すでに俺たちやシモベ6人は、この森に出現する魔物は、問題なく狩る事ができる。
獣人や1層の女性たちは、なるべく早めにそのレベルに上がる事。
鳥たちは、階段の探索。
もちろん合間に各拠点の充実も行う。
イシュルたちの存在もおおっぴらにしたので、今まで開拓村に持ち込めなかった素材を持ち込めるし、開拓村からいろいろ購入することもできる。
拠点の充実も捗るだろう。
「もし、獣人や女性たちで戦うのを嫌がるものがいたら、マイダンジョン専任という事で」
俺が言うと、ナニーが首を振った。
「獣人の子供はともかく、成人で戦うのを嫌がっている人はいません」
「むしろ積極的なくらいです」
ヴァニラも頷いた。
「復讐とか考えている人もいそうねー」
「まあ少なくとも備えている人は多いだろうな」
彼らが受けた仕打ちを考えると無理もない。実際、獣人たちはいつかやると言っていたしな。
「だが、今じゃない」
このダンジョンで人類の勢力が心許ない今、わざわざさらに弱くなるような事をするべきじゃない。
「6層を平定した辺り?」
ノマが小首を傾げた。
「その時に5、6層でどれくらい人がいるかだな」
3層が味方してくれればいいが、当てにし過ぎるのも危険だ。
「そうね。人も増やさないとね」
「召喚しますか?」
この場にいる全員に聞こえるように、ココアが言う。
言いながら、ハアハア息を荒くするのはやめてほしい。
「うーん。逆に人は、こっちのダンジョンから招きたいんだよな」
「えー。せっかく力素も豊富になってきたのに」
「まあそっちは、ダンジョンの拡張と整備に使う方向で。そろそろ、層も増やしたいだろ?」
「いよいよ、多層化ですか!」
ウヒョーと奇声をあげるココア。
「いろいろ、やるべきことが多いわねー」
内容は面倒臭そうだが、愉しげにシャルが言い、ノマがコクコクと頷いた。




