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第4話 初めての依頼

 冒険者ギルドで薬草採取の依頼を受けた俺とリリアは、街の門を出て森へと向かっていた。


「そういえば、薬草ってどんなものなんだ?」

「えっ、知らないの?」

「いや、名前は知ってるけど、実物は見たことないからな」

「そっか。じゃあ、森に着いたら教えてあげるね」


 リリアはそう言って笑った。


 異世界に来てから、まだそれほど時間は経っていない。

 魔物との戦闘は経験したものの、薬草採取なんて当然初めてだ。

 そもそも、俺は植物の知識なんてほとんどない。

 ちゃんと依頼を達成できるのだろうか。


「大丈夫だよ。そんなに難しい依頼じゃないから」

「そうなのか?」

「うん。薬草の見分け方さえ覚えれば、初心者でもできる仕事だよ」

「なるほど……」


 そんな話をしているうちに、森の入口が見えてきた。


「ここが今回の採集場所だよ」

「おお……」


 目の前には、見渡す限り木々が広がっていた。

 最初に起きたときの森と同じような景色だが、今はリリアが隣にいる。

 一人で歩いていたときとは安心感がまるで違う。


 女子と二人で出かけるとかいつぶりだ?

 ……まあ、前世に1度はあるだろう。


「それじゃあ、さっそく薬草を探そうか」

「ああ!」


 俺たちは森の中へと入っていった。

 しばらく歩いたところで、リリアが足を止めた。


「ユウト、これが薬草だよ」


 リリアが指さした先には、小さな緑色の植物が生えていた。


「これが?」

「うん。ヒール草っていうんだ。回復薬の材料になるんだよ」

「へえ……」


 見た目は普通の草とそれほど変わらない。

 これが薬草だと言われなければ、気づかずに通り過ぎてしまいそうだ。


「葉っぱの形をよく見てね。似た植物もあるから、間違えないようにしないと」

「なるほど。じゃあ、これは?」


 俺は少し離れた場所に生えていた草を指さした。


「あ、それは違うよ。葉っぱの形が少し違うでしょ?」

「本当だ……」

「それに、薬草は根を傷つけないように採取するんだよ。雑に引っ張ると使えなくなっちゃうからね」


 リリアは実際に手本を見せてくれた。

 根元の土を少し掘り、丁寧に薬草を取り出す。


「こんな感じだよ」

「おお、分かりやすいな」

「ふふっ。じゃあ、ユウトもやってみて」

「任せろ!」


 俺は近くに生えていたヒール草を見つけ、リリアに教わった通りに採取してみた。

 ……よし。


「どうだ?」

「うん、上手に採れてるよ!」

「よっしゃ!」


 思わずガッツポーズをする。

 たかが薬草採取だが、いざ自分でやると感動するな。


「そんなに喜ぶこと?」

「いや、初めてだからな!」

「そっか。じゃあ、どんどん採っていこう!」


 それから俺たちは、周囲を探しながら薬草を採取していった。

 しばらく作業を続けていると、ふと気になったことがあった。


「なあ、リリア」

「ん?」

「リリアって、どうして冒険者になったんだ?」

「私?」

「ああ。何か理由があるのかなって」


 リリアは少し考えるように視線を上げた。


「うーん……。昔から外の世界に興味があったんだよね。それで、いろんな場所に行ってみたいと思って冒険者になったんだ」

「へえ、そうなのか」

「うん。まだ行ったことのない街もたくさんあるし、見たことのない景色もいっぱいあるからね」


 リリアは楽しそうに話していた。

 なるほど。

 彼女にも彼女なりの目標があるらしい。


「ユウトは?」

「俺?」

「うん。どうして冒険者になろうと思ったの?」

「それは……」


 どう答えたものか。

 どうにかして、当たり障りのない解を出さなくては、


「いろんな場所を見て回りたいと思ったんだ」

「そっか! じゃあ、私と同じだね!」

「ああ、そうだな」


 少しだけ申し訳ない気持ちになったが、嘘ではない。

 俺もこの世界をもっと見てみたいと思っている。

 そんなことを話していると、

 ガサッ。

 近くの茂みが揺れた。


「ん?」 


 俺たちは同時にそちらへ視線を向けた。

 すごくデジャヴがするのだが。


 茂みの奥から、小さな魔物が姿を現した。

 大きさは大型のネズミくらいだろうか。

 鋭い前歯を持ち、こちらを警戒するように睨んでいる。


「フォレストラットだね」

「フォレストラット?」

「うん。比較的弱い魔物だけど、噛まれると痛いから気をつけて」

「分かった」


 俺は少し距離を取った。

 グレイファングとやらに比べれば小さいが、魔物であることに変わりはない。

 油断はできない。

 フォレストラットは地面を蹴り、こちらに向かって飛びかかってきた。


「うわっ!」


 俺は慌てて横に避ける。

 魔物はそのまま地面に着地し、すぐにこちらへ向き直った。


「ユウト、落ち着いて! 動きをよく見て!」

「分かった!」


 リリアの声を聞き、俺はフォレストラットの動きを観察する。

 魔物は一度こちらを睨んだあと、再び地面を蹴った。

 今度は動きを見てから横へ避ける。

 よし、避けられた!


「いい感じ! そのまま距離を取って!」


 リリアが弓を構え、矢を放った。

 ヒュンッ!

 矢はフォレストラットの身体に当たり、魔物は地面に転がった。

 しかし、まだ動いている。


「まだ倒れてないのか!」

「油断しないで!」


 フォレストラットは再び起き上がり、リリアに向かって走り出した。

 まずい。


 俺は近くに落ちていた木の枝を拾い、魔物の進行方向に振り下ろした。

 バシッ!

 枝が魔物に当たり、動きが一瞬止まる。


「今だよ!」


 リリアがもう一度矢を放った。

 矢は魔物に命中し、フォレストラットはその場に倒れ込んだ。

 しばらく様子を見ていたが、もう動く気配はない。


「……倒したのか?」

「うん。もう大丈夫だよ」

「そ、そうか……」


 俺は大きく息を吐いた。

 グレイファングと比べれば大した相手ではなかったが、実際に戦うとなるとやはり緊張する。


「ユウト、さっきの動きよかったよ!」

「本当か?」

「うん!だけど、武器買ったほうが良かったね。ごめん忘れてて」

「あ!」

 リリアは気まずそうにそういった。

 俺は握っている枝を見て少し恥ずかしくなった。。


「……そうだな」


 その後、俺たちは薬草採取を再開した。

 先ほどの戦闘で少し時間を使ってしまったが、依頼に必要な量は十分に集められそうだった。


「これで最後かな」

「うん。必要な分は集まったと思うよ」


 リリアが袋の中身を確認する。


「よし、じゃあ街に戻ろう!」

「うん!」


 こうして、俺の初めての依頼は無事に終わった。

 森を出て、街へと戻る。

 途中、リリアと今日の出来事を話しながら歩いていると、あっという間にミレアの門が見えてきた。


「初めての依頼はどうだった?」

「そうだな、思っていたより大変だったけど、楽しかったよ」

「ふふっ。それならよかった!」


 俺は今日一日のことを振り返った。

 薬草の採取方法を教わり、魔物とも戦った。

 どれも初めての経験ばかりだったが、少しずつこの世界で生きていく自信がついてきた気がした。

 そうしてもう1度思い出してしまった。


 この依頼で、生きていけるだけ稼げるのか?

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