再出発
数日後、フールは、拠点の酒場に、ワイズと一緒に足を運んだ。円卓には、ミレナ、ガロン、そしてグレンが座っていた。
「みんな、本当に、すまなかった」
フールは、深く頭を下げた。
「俺の身勝手な行動で、みんなを危険な目に遭わせた。それに、剣に取り憑かれて傷つけそうにまでなった」
「フール、頭を上げてよ」
ミレナは、そこで一度、言葉を切った。それから、少しだけ気まずそうに言葉を続ける。
「謝らなきゃいけないのは、私たちも同じよ。あの日、あんたを傷つけるような、キツい言い方ばかりしてたと思う。あそこまで言う必要、なかったのに」
「ミレナ……」
「フール、私からもお詫び申し上げます」
ガロンが、深々と頭を下げた。
「『もう限界だ』などと、突き放すような言葉を選んでしまいました。あなたの気持ちを、もっと丁寧に汲み取るべきだったと、ずっと悔やんでおりました」
その言葉に、フールは、驚いたように目を見開いた。
「いや……お前らは、間違ったこと言ってねえよ。俺が、無茶な行動ばっかりしてたのは、本当のことだからな」
「それでも、よ」
ミレナは、まっすぐフールを見た。
「言い方ってものが、あったはずなの。あんたを追い詰めるようなことしたのは、私たちの落ち度でもあるわ」
「フール、あなたが無事でいてくれて、私たちは心から嬉しいのです」
ガロンが、微笑みながら言った。その優しい笑顔に、フールの目頭が、思わず熱くなった。
「だから、フール」
ミレナが、ぴしゃりと、しかし温かい声で続けた。
「これからは、お互い様よ。あんたも、もう自分勝手に一人で突っ走るのは、なしね。何かあったら、ちゃんと私たちを頼りなさい。仲間なんだから」
「……ああ、わかったよ」
フールは、素直に頷いた。
「今度こそ、ちゃんと、みんなと一緒に戦う。約束するよ」
その言葉に、ミレナとガロンは、顔を見合わせて、優しく微笑んだ。
「グレン、お前は、これからどうするんだ」
フールが、グレンに聞いた。グレンは、静かに答えた。
「もちろん、皆さんがよければこのパーティに残らせてもらいもす。それより、フールさん」
「ん? 何だよ」
「よろしければ、稽古をつけてもらえもはんか。あん戦いで見た、フールさんの腕、ぜひ学びたかとです」
グレンの目には、まっすぐな向上心が宿っていた。
「はは、いいぜ。俺でよければ、いくらでも教えてやるよ」
フールは、グレンと握手を交わした。
「にしてもお前、面白いしゃべり方してんな」
「ひ、人が気にしてるとこんを……」
フールの無神経なセリフにしょぼくれるグレンとは裏腹に、ワイズたちは大声で笑いのける。
「それじゃあ、改めて」
ワイズが、立ち上がって、ジョッキを掲げた。
「新生『飛竜の爪』、六人での再出発に、乾杯!」
「乾杯!」
みんなの声が、酒場に響いた。
フールは、ジョッキを傾けながら、みんなの顔を見渡した。あの追放された夜から、たくさんのことがあった。怒りに飲まれ、剣に体まで乗っ取られかけたこともあった。
でも、今、フールの隣には、また仲間がいる。
「ワイズ」
「なんだ?」
「今度は、俺も、変わるように頑張るからさ」
「ああ、約束だ。それに……」
ワイズは、少し照れくさそうに笑った。
「世界一の冒険者になるって夢、まだ諦めてないからな。これからも、一緒に目指そうぜ」
「当たり前だろ。それが、俺たちの約束だからな」
二人は、笑いながら、ジョッキを合わせた。
窓の外では、朝日が、少しずつ昇り始めていた。新しい一日、そして新しい『飛竜の爪』の物語が、これから始まろうとしていた。




