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4-9 やったね! 大成功!




 そのとき、結晶体が輝きを増し、周囲を照らし出した。


 怪猫王は何かに警戒するように動きを止める。

 何が起きたのか?


 俺は自分の首が動くようになったことに気づき、周囲を見渡した。

 外輪山の外側から、たくさんのものが近づいてくるのが見えた。


 ――猫だ。


 白猫、黒猫、三毛猫、ブチ猫、キジトラ、サバトラ、茶トラ――

 あらゆる種類の猫が、数十、数百と集まってきている。

 先頭を行く2匹には見覚えがある。

 オリゴン村のアザーとテイタスだ。

 俺たちを応援するため、仲間を集めてくれたのか!?


 気づくと、俺は全身が動かせるようになっていた。

 立ち上がると、アザーたちと反対方向からも、猫たちが集まってくるのが見えた。

 先導役を務める黒猫は、エデルの町で出会ったアスパーだろう。


 結晶体の輝きはさらに強くなり、俺のヒットポイントゲージはぐんぐんと回復していった。

 ステイタス異常も消え失せ、全身に力がみなぎっていく。

 いまや怪猫王の動きは完全に静止し、恐怖で硬直しているように見えた。


 前方には、新たな猫の集団が出現した。

 聖猫神殿のバーナム大司教は確かな足取りで、数百かそれ以上の猫たちを引き連れていた。

 俺はいつのまにか、自分の体も輝いていることに気がついた。

 そしてやがて、俺の体内で《《何か》》が弾けた。


 次の瞬間に俺が見たのは、ディドロの体が真っ二つに分断され、光の粉になって飛び散っていく光景だった。

 俺の体から放出された強力な光の束が、瞬時にして敵を貫いたのだ。


 勝利のファンファーレが鳴り響いた。

 見上げると、空を覆っていた暗雲は消え失せ、澄み渡った青空が広がっている。


 終わったのだ。


「デオロン!」


 元気そうなアイリアの姿を見て、俺は仲間たちのステイタスを確認した。

 よかった。

 全員が生きていて、状態異常も回復している。


「やったね!

 大成功!」


 ナルがガッツポーズを決めたことで、他の仲間もようやく勝利を実感した様子だった。


「師匠、お疲れっす!」


「わたしたち、勝ったんですね」


 カリサだけは何も言わず黙っていたが、無理して感情を押し殺していることがみえみえだ。

 今なら迷わず断言できる。

 俺たちは、最高のチームだと。

 

「……デオロン……」


 そのとき結晶体から、俺の名を呼ぶ声が聞こえた。

 内部を覗きこむと、1匹の猫がじっとこちらを見ている。


 俺と同じマヌル猫だが、遥かに老いており、言い得ぬ威厳に満ちていた。


 ――猫神!


「お主のような者が現れるのを長い間、待っておった」


「わしは老いてしまった。

 これ以上、この結晶を守り抜くことはできんのじゃ」


「お主に頼みたい。

 猫神としての役務を引き継いでくれんか」


 そのとき俺はすべてを理解した。

 この猫神のあとを継げるのは、同じマヌル猫である俺だけなのだ。


 この申し出を俺が引き受けることで、物語は完結する。

 それがメインシナリオ。

 つまり変えられない運命なのだ。


 俺は振り返り、仲間たちの顔を見回した。


「ここでお別れだ。

 わしは猫神としてこの世界を護る役目を担うことにする」


「そんな、いやだよ!」


 ナルが涙に眼を潤ませて叫んだ。

 不憫だがしかたない。

 物語はいずれ終わるものだ。


「ナル、いい仲間ができてよかったの」


 俺の決意が決して変わらないことを悟ったのか、彼女はその場で泣き崩れてしまった。


「……デオロン殿、他に方法ないのですか?」


 アイリアの問いに俺は頷く。


「残念ながら、無いな。

 アイリア――最後の攻撃は見事じゃった。

 お主はもう立派な騎士じゃ」


 『騎士』という言葉の重みに応えるためだろうか、彼女は肩を震わせながらも嗚咽をこらえていた。

 マイラとカリサは押し黙っていたが、俺を見つめる眼には情愛の念が込められていた。


 それだけで十分だ。

 ありがとう。

 お前たちと冒険ができて、本当によかった。


「師匠!

 いっちゃやだよ!」


 チーカは泣きながら俺に駆け寄ると、両腕で俺をきつく抱きしめた。

 全身の震えが伝わってくる。


 本気で……泣いてるのか?

 演技ではなく?

 すまん。

 お前は演技できるほど器用じゃなかったな。


「チーカ。

 案ずるな……猫神はこれからもずっと……お前の近くにおるぞ」


「師匠!」


 チーカに抱かれていた俺の体は幻のように彼女の腕をすり抜け、ゆっくりと結晶体の中へ吸い込まれていった。


 数千匹の猫たちが結晶体に向かって祈りを捧げるように頭を垂れる。

 猫神と俺の体が重なると結晶体は輝き、一筋の光が天へと昇っていく。


 俺が新たな神になった瞬間だった。


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