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人生フリーフォール状態の僕が、ユニークスキル【大落下】で逆に急上昇してしまった件~世のため人のためみんなのために戦ってたら知らぬ間に最強になってました  作者: THE TAKE
第2章 ペンラム国編

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第73話 いち凡夫


 話に割って入ったのは、これまで口を噤んでいたインフだった。

 まるで敵でも見るようにインフを睨みつけたカルラは、先の一連の出来事を思い出しながら彼女に迫った。



「なんのつもりか知らないが、我らエルフの方針に第三者が口を挟むとは、どのような了見だ」



 胸元へ手を伸ばしたカルラの指先を払い、「愚鈍なエルフ風情が」と呟いたインフは、その場にいた僕以外を流し見たのち、臆面もなく吐き捨てた。



「貴様らエルフの民がどうなろうと、わらわの知ったことではない。しかし竜を討つなどという勝手な話を進められるのは(いささ)か不愉快だ。そもそも貴様ら如き()()()()が、この世界から消えてなくなるくらい、大したことではなかろう?」



 あまりの物言いに、怒りを露わにしたカルラが腰の剣に手を伸ばす。やれやれと他人のふりを決め込んで横になって足をポンポンしているポンさんとは対照的に、僕は慌てて二人の間に割って入った。しかし……



「貴様、先の戦いの中でも私の攻撃を邪魔してくれたな。どういうつもりなのだ!?」


「どうもこうも。貴様が勝手な真似をするから、わらわが止めてやったまでのこと。不服か?」



 今にも斬りかかりそうなカルラを止めながら、インフに「なんてこと言うんだよ!」とたしなめる。しかし今回ばかりは引く気がないのか、ポンさんも「そりゃそやろ」と呆れるばかり。完全にこじれた状況に、僕ひとりではお手上げ状態だ。


 しかし何かに気付いた村長が「もしや」と目を見開く。

 そして(いが)み合うインフに直接質問した。



「お主、もしや竜の民か……?」



 ニヤリと不敵に微笑み、「それがどうした?」と答えるインフ。

 それを聞いていた村長や村人は、狼狽えながら不安の色を隠すことができず、恐ろしい生物を見る目で彼女に怯え、遠目に避けているようだった。



「貴様が竜族ということをすっかり忘れていたよ。しかしたとえ相手が貴様の同族とて、我らも黙って見過ごすわけにはいかん。同族がやられた借りは、きっちりと返させてもらう!」



 ついに剣を抜いてしまったカルラを抱えこんで止めた僕は、「待ってよ!」と強引に引き離した。止めるなと声を荒らげるカルラに対し、インフもまた好戦的な真紅の眼に魔力を滾らせ、蠢く右手をかざしていた。



「いい加減にしてよ。こんなところで争ったって何も始まらないよ!」



 村長の手を借りてどうにか場を(いさ)めたものの、各々思惑はバラバラで、結論など出ようはずがない。それどころか村人らの僕たちへ向ける視線は秒ごと険しくなり、今にも別の争いが勃発しそうな気配すら孕んでいる。

 このままでは埒が明かないからと、村人に席を外すよう促した村長は、カルラにも一度席を外してくれないかと詫びた。エアリスに連れられ二人が離れたのを見届けたのち、村長はこれまで以上に険しい表情のまま僕らに語りかけた。



「まさかカルラのお連れした客人に竜の者がいようとは……。しかもそれが擬人化できるほどの人物で、こうして目の前で対面しようとは、正直まだ信じられません。こうしている間も、私などは生きている心地がいたしません」



 冷や汗滲む額を拭いながら、村長は心底疲れ果てたように息を飲んだ。そんな大袈裟なと僕が思っている常識と、この世界に住む人々の常識は、それだけ乖離(かいり)があるのかもしれない……



「あの娘らの前では言えませんでしたが、カルラは恐らくは貴方様のお手を借り、我らの目的を遂行いただいたと推察いたします。世間知らずのカルラが皆様にご迷惑をおかけしたこと、娘らに代わり、このドゴルがお詫びいたします」



 突然平伏しインフに詫びる村長。

 僕は状況が理解できずポンさんの横腹を肘でつつき、小声で質問した。



「ポンさん、これどういうこと?」


「知らんがな。黙って聞いとき」



 鼻くそをほじりながら退屈そうにしているポンさんを尻目に、ひとまず納得した様子のインフは、前置きを全て省き、端的に聞いた。



「者どもの住処はどこだ?」


「者ども……。それはドラゴンたちのことでしょうか。そうであれば、東の平原を進んだ先に、岩だけで作られた岩窟山と呼ばれる小高い山がございます。奴らはそこを根城にしております」


「"奴ら"……。して、"奴ら"とは……?」


「い、いえ、……ドラゴンたち、でございます」



 ひりつく空気に、こちらも心臓を握られているように落ち着かない。するとそこで唐突に、「主様」とインフが僕に話しかけてきた。僕は肩をビクッとさせ、思わずはずみで寝転がっているポンさんの後頭部を蹴ってしまった。



「ど、ど、どうしたの、インフ?」


「わらわはこれから、あの者どもの住処(すみか)へ行かねばなりません。しばしの間、単独行動することをお許しいただけますか?」



 彼女の僕に対する話しぶりに、村長の顔に困惑の色が浮かんだ。

 誰がどう聞いても、会話から読み取れる僕とインフの立場は世間の考えるそれとは真逆で、主と呼ばれた僕を見る村長の表情が複雑なことこの上ない。だけどそれはそれとして、僕はインフの提案をハッキリダメと断った。それどころか、絶対に許さないと断固拒否した。



「な、なぜですか、主様」


「ダメに決まってるでしょ。そんなことさせたら、インフまた無茶なことするんだから」


「いいえ、主様に迷惑をかけるようなことは何も……」


「ダメ、絶対許さない。……だけど」



 僕は村長に頭を下げ、「一つ、僕のわがままを聞いていただけますか」と提案した。



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