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人生フリーフォール状態の僕が、ユニークスキル【大落下】で逆に急上昇してしまった件~世のため人のためみんなのために戦ってたら知らぬ間に最強になってました  作者: THE TAKE
第2章 ペンラム国編

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第64話 一人で全部終わらせる



   ☆ ☆ ☆ ☆




「乗りかかった船やから、今回だけは手伝ったる。せやけどこれ一度っきりや。二度目はあらへん」



 再び中層に降りたところでポンさんが釘を刺すように言った。完全に復調しているわけではないカルラは、初めて僕らのことを仲間と認めてくれたのか、深く頷いた。



「しかし主様、前回訪れた時とは明らかに地形が異なっている様子。どうなさいますか?」



 以前は細い通路を出たところに、まばゆいばかりの光が差し込む空間が広がっていた。しかし今は、カルラが口にしたように、初めから深い木々に囲まれた森の風景が広がっている。



「カルラさん、この前はどう動いたんですか?」


「あくまでも偵察の範疇だったからな。この場所を拠点に据え、いつでも戻れるよう範囲を限定して進めるつもりで動いていた」


「動く範囲を限定する? そんなことが可能なんですか」


「ダンジョンを散策するために、事前にマップ範囲を確認できるアイテムと、位置情報を保存しておけるアイテムを準備していた。しかし……」


「上手く動かなかったんやな」



 ポンさんの相槌に頷いた彼女は、手にしたアイテムを見せながら首を振り、実際にそれを中層の入口に設置してみせた。



「これを置いた私は、発信される情報を頼りに散策を開始した。マンティスの生息域を見つけるべく、ここを中心として円を描くように範囲を広げるつもりが、知らぬうちに拠点を離れ、奴らが手をこまねく森の奥へと誘い込まれていた」


「ふ~ん。でもそれ、どうしてわかったんや?」



 無言のままパチンと指を鳴らした彼女は、魔法で作り出した小さな風の渦を空へと放った。風は一定の高さまで達した直後、何かに吸い込まれるように飛散し消えてしまった。



「この森の中は、何者かの魔力が働いている。使用するアイテムも、どうやら正常な動きを封じられるようだ。気付いた時には後の祭りだったがな」



 設置したアイテムの示す位置と、僕らがいる位置とを示し合わせ、提示してみせる。地図が読めない僕はわからなかったけど、ふむふむ覗き込んでいるポンさんは納得できたみたい。



「奥へ奥へと引き込まれ、気付いた時には手遅れだった。背後を大量のモンスターに囲まれ、どうにか逃亡を図ったが、最後には掴まって戦闘になった。それから先はウタたちも見たとおりさ」



 彼女の言葉を文字どおり受け取るとすれば、僕らは現在進行系で敵の術中にハマっている。しかし逆を言えば、アイテムに頼って動き回ることで彼女が辿った道筋をなぞることも可能。しかしそれは敵側が彼女の存在に気付いていない前提の話で、それすら罠である可能性が高い。


 どうすべきかを模索しているポンさんをよそに、インフが僕にだけ聞こえる声で囁いた。



「面倒ですね。主様が森ごと一撃で焼き払ってしまえばよろしいのでは?」



 難しい顔で「むむむ」と口を結んだ僕は、確かにそれもありかもしれないと頷く。

 でも僕は初めから決めていた。ここから進むべき道は、僕が決めるべきではないことを……



「あの……、一ついいかな」



 悩むポンさんとカルラの手前、僕がこんなことを言うのはおこがましいし、間違っているかもしれない。でも僕が考えられる結論で、恐らくこれ以上のものは出てこない。どうしたと尋ねた二人に対し、僕はカルラだけを見据えて質問した。



「その……、カルラさんは、どうしたいんですか?」



 僕の質問が意外だったのか、彼女はしばし黙ってから「どうしたい、とは?」と聞き返した。



「確かに僕らは、貴女を助けたいと言いました。だけどそれは、僕らが先に立ち、マンティスを倒すという意味ではありません」



 僕の言葉に、彼女は何も答えなかった。

 しかし彼女に代わってポンさんが嫌らしく言った。



「どーゆー意味や。まさかおのれ、俺らが手伝う方法を、()()()()()()って言いたいんか。せやったらお門違いやで、ここは最も簡単で楽な方法を選択すべきに決まってる。それしか方法はない」



 そう。当然そうだと思う。

 だけど僕は……



「嫌だ。それは僕が許さない」


「はぁ!? なに言うとんねんおのれ!」


「だから、それは嫌だって言ってるんだよ!」



 唇を上下に震わせながらアバババとメンチを切るポンさんは、目の前にフワフワのでっかい顔を突きつけ、「なーにふざけたことぬかしとるんや、アァン!?」とツバを飛ばしながら言った。



「だってそうでしょ。……これは僕らの戦いじゃない。カルラさんたち一族にとっての戦いだ」


「んなことわかっとる! せやから手ぇ貸して、一緒に狩る言うとるんや。それの、な~にがイヤやねん!?」


「……マンティスは、彼女自身の手で狩る。いや、狩らなきゃダメだ!」



 とぼけた顔でさらに顔面を突きつけたポンさんは、「舐めんな、おのれ」と熱り立って怒っている。


 僕もそれくらいはわかってる。

 彼女のランクがCと聞かされた以上、Bランク超えでなければ太刀打ちできないマンティスに対し、彼女一人で戦わせるのは無謀だ。でもそれは建前であって――



「本当のことを言ってください。カルラさんは、……本当にそれで良いんですか?」


「良いも悪いもない! あれを嬢ちゃん一人で倒すんは無理や。せやからずっとこうして」


「ポンさんは黙ってて。カルラさん、正直に教えてください。本当は最初から、誰の力も借りる気なんてなかったんじゃないですか?」



 プンスカ怒り狂うポンさんをインフに任せ、僕はもう一度同じ質問をする。

 無言で俯いた彼女に、僕はさらにもう一度同じ質問をした。



「そ、それは……」


「前からずっと気になっていました。あんな場所に拠点を作っていたことも、誰の手も借りずにダンジョン攻略をしようとしていたことも、色々と理由をつけて僕らを遠ざけようとしていたことも……。本当は最初から、一人で全部終わらせる気でいたんじゃないかって」



 それでも彼女は無言だった。

 しかしそれがまた彼女の核心を突いている気がして、僕は言葉を止められなかった。



「だってそうでしょ。……二年半ですよ? それだけの手間と、費用と、時間をかけておきながら、直接的なダンジョン攻略については誰の手も借りない。あんな場所に拠点を用意する以上、それだけの時間と費用がかかることくらい最初からわかったはずです。なによりそれだけのお金があれば、Bランクの冒険者一人雇うくらいできたんじゃありませんか。それに今回だって、僕らが偶然手助けすることになった途端、これまで入念に時間をかけてきたのが嘘みたいに、前倒ししてダンジョンの攻略を始めてる。まるで誰かに介入されるのを恐れているみたいに……」



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