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人生フリーフォール状態の僕が、ユニークスキル【大落下】で逆に急上昇してしまった件~世のため人のためみんなのために戦ってたら知らぬ間に最強になってました  作者: THE TAKE
第2章 ペンラム国編

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第63話 生きている


「どうするもこうするもない。……これは私の戦いだ」



 意を決したようにカルラが呟く。

 そして僕ら三名を順々に目で追ってから、深々と頭を下げた。



「Fランクのキミたちがここまでやってくるには、多くの費用と尽力が必要だったに違いない。もちろん補填は必ずさせてもらう。マンティスを倒したあかつきには、必ず用意することを約束しよう。仮に、もし私が生きて帰ることができなくとも、拠点の品は全て持ち出してもらって構わない」



 そこまで言うと、彼女は僕らから目を離し、そこにいるはずの誰かを探し始めた。

 僕らはキョロキョロと注意散漫な彼女の様子に首を傾けた。



「それでウタ、他の仲間はどこに?」



 カルラの言葉に、僕らの首がさらに数度傾く。



「いや、だから他の仲間はどこにいるんだ。Fランクのキミたちが、たった三人で中層まで辿り着くなど不可能だろう。町へ戻り増援を願い出て、私の救助をしてくれたのではないのか?」



 ああ、そういうことか。

 僕ら三人が同時にポンと手を叩く。



「あの……、ええと、僕ら三人だけできました。だけど勘違いしないでください、全然大丈夫ですから!」



 僕の弁明に目を見開いたまま理解できない様子の彼女は、一頻(ひとしき)り言葉を噛み砕いてから、激昂し僕の肩を激しく掴んだ。



「な、何を考えているんだお前たちは。未熟な冒険者が、たった三人でこんなところまで。これがギルドに知れたらどうなると思ってる!?」



 確かにそれがギルドに知れれば、僕らは罰を受けるかもしれない。しかしそうだとしても、僕に彼女を見捨てる選択肢はなかった。



「死んでほしくないからです。僕は貴女に、絶対に死んでほしくないんですよ。だからここまでやってきました!」


「ばッ、な、何を馬鹿な……。素性も知らぬ私のことなど、黙って捨て置けば良いものを」


「黙って捨て置け、……ですって?」



 僕は下唇を噛みながら、彼女の手を払い、反対に彼女の両肩をグッと掴み返した。



「そんなことできるはずないでしょ!? 目の前で困ってる人を簡単に見捨てるなんて、そんなの僕が許さない。絶対間違ってる、絶対に間違ってる!」



 しかし彼女は僕の手を振り払い、首を横に振る。



「これは私のわがままだ。他人であるキミたちを巻き込むわけにはいかない。……どのようにしてここまで辿り着いたのかは知らない。しかしまだ間に合う、すぐにここを出ろ。これは命令だ」



 どちらも引かぬ言い争いに、ポンさんは「はふぅ」と呆れたようにため息を一つ。

 そして助け舟を出すように、「一つ」と短い指を立てた。



「そんなら提案や。数分後、またここに亡者の亡骸(リビングデッド)が湧くはずや。どや嬢ちゃん、そいつを見てからどうするか決めへんか?」



 ポンさんの言葉に耳を傾け、カルラは焦った様子で「なんだと?」と硬直した。そして奥歯を噛み締め、「もう一度アレと……」と先の戦闘を思い浮かべながら、額から一筋の汗を垂らした。


 ポンさんが細い目で僕に向かって頷いた。

 こうなったら仕方がない。

 僕の力を彼女に見てもらう。それしか方法はない!



「わかったよ、なら僕が一人でやる。ポンさんもインフも、絶対に手を出さないで」



 何を言っているんだとカルラが怒りの表情を浮かべた直後、後方で混沌とした紫色の光が闇間に浮かんだ。


 (つい)の亡霊が、カチャリと音を鳴らす。

 僕は三人の前に両足を踏ん張って立ち、大きく息を吸い込んだ。



「くっ、亡者の亡骸(リビングデッド)、もう現れたのか。まだこちらの状態が万全ではないというのに!」



 すぐに戦闘態勢を整えようとしたカルラの肩に乗り、「ジッとしとき」とポンさんが呟く。同じく隣でもう片方の肩に手を置いたインフも、「主様の仰せのままに」と呟いた。


 急激に目の光を増していく2体のアンデッドは、こちらへ鋭い視線を向け、写し鏡のように対照的に一歩ずつ近付いてくる。僕は吸い込んだ空気の全てを使って、口の中だけで誰にも聞き取れないほど小さな声で同じ言葉を何度も呟いてから、全身を大きく開き、「こーい!」と叫んだ。


 同時に走り出した2体が、手にした巨大な剣を振りかぶり、そして同時に振り下ろした。

 僕はそれを抱えるように受け止め、そのまま亡者2体を抱きしめた。



「な、何を考えているウタ、死ぬぞ!?」



 僕を助けようとカルラが手を伸ばす。

 時が止まる――


 彼女の指先が僕の背中に触れる直前、まばゆい光が僕の身体を包み、ドンッという破裂音とともに、亡者の亡骸(リビングデッド)の姿がパラパラと散っていく。


 彼女の指先が僕の背中に触れた。

 それに気付いて、僕は振り返る。



「……う、ウタ?」


「―― ハイ、ウタです。生きてます!」



 世界が終わったような顔をしている彼女に、笑顔で返事をする。

 たったそれだけで、悲しみに暮れる人を笑顔にすることができる。

 人を幸せにすることができる。


 このときのために僕は生きている。

 その笑顔には、そう思えるだけの価値があるのだから。


 僕はもう一度大きな声で返事をした。

 やれやれと、ポンさんが欠伸をしながら呟いた。


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