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人生フリーフォール状態の僕が、ユニークスキル【大落下】で逆に急上昇してしまった件~世のため人のためみんなのために戦ってたら知らぬ間に最強になってました  作者: THE TAKE
第2章 ペンラム国編

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第53話 エルフのカルラさん


「い、インフさん、アナタちょっと、こんなことできるなら僕に穴なんか掘らせないで、ポンさんの休憩スペース簡単に作れたじゃないのさ!」


「私の、私の2年半の苦労は!? 土を持ち込んで、塗り固めて、必死に働いたあの時間は。それがたったの30秒って、……ハァ!?」



 さも当然のことと意にも介さないインフは、自分がなぜ責められているのかもわからないご様子。

 そんな人に何を言っても無駄だってことくらい僕も知ってる。

 だったらもう、黙って受け入れるのが一番に決まってる!



「と、とにかくですよ、これで貴女の(ウチ)はどうにかなったと思います。……が、こ、これだけだと……、やっぱりダメ、ですよね?」



 強く言いたそうな彼女だが、様々なことが重なり言葉が出てこない様子。

 うん、僕にもその気持ちはよくわかる。



「し、しかし、まだ埋もれてしまった道具やアイテムは使えないままだ。そ、その点はどうしてくれる……?」


「でしたらどうでしょう。そこは僕らでお手伝いするというのは……?」



 顔をしかめ、苦渋の決断をする様子で「わかった」と答えた彼女に、「何様だ、キサマ」とインフが目をひん剥く。だけど、これでどうにか落ち着いて話ができるかもしれない!


 ポンさんの容態がようやく落ち着き、砂漠に夜の帳が下りてくる。

 月明かりが優しく僕らを照らし、真っ暗というには程遠い見通しが利く砂の地は穏やかで、風はほのかに冷たい。僕らはまだ使えそうな彼女のアイテムをどうにか砂の中から発掘しつつ、新しくインフが用意した箱部屋に、ひとまずの寝床を準備した。



「今夜はここまでにしようか。手伝っていただき助かった。その、なんだ……。先程は強く当たって済まなかった、旅の人」


「そ、そんなこと。もとはといえば僕らが壊してしまったのがいけないわけで。そうだ、まだ自己紹介してませんでしたね。僕はウタといいます。こっちはインフで、そっちに寝てるのがポンさんです」


「私はカルラ=イベルドローラだ。カルラと呼んでくれればいい」



 握手した僕は、改めて彼女にここで何をしていたのかを尋ねた。



「見てのとおり、私はエルフ族の冒険者だ。わけあって、この地で探索を続けている」


「エルフ? エルフってあの!?」


「どのエルフかは知らないが、エルフはエルフだ。大戦後の種族開放以降、どの町にも一人くらいはいるだろう?」



 そういうと彼女は、大きな髪のぼんぼりの中に隠していた長い耳を見せてくれた。

 僕は物語の中でしか見たことのないエルフという種族に胸を高鳴らせていた。



「それで、え、エルフのカルラさんは、ここで何を……?」



 一考したカルラは、せっかく手伝ってもらうのだからと僕らを値踏みしたうえで、回収した荷物の中からアイテムを一つ取り出し、僕らの前に置いた。



「話せば長くなるが、私はこれを修復するため冒険者となった」



 置かれていたのは剣のようだった。

 見た目は鞘に収められた長剣で、鞘は細かな細工がなされ、素人の僕が見ても美しく繊細なのがわかる。しかし見たところ壊れた様子はない。不思議そうな僕の表情に答えるよう、彼女はグリップを握り、鞘から剣を抜いてみせた。



「あっ……」



 剣は切先が欠けており、剣身もところどころ削り取られたようなボロボロの状態だった。それでも炎の光に照らされたブレイドの輝きは本物で、僕の顔を真っ直ぐに映し出している。



「これは一族に伝わる秘宝であり、死んだ父の形見でな。今はこの剣を直すため、材料を集めている」


「形見、ですか」


妖糸(フェアリースレッド)の剣と呼ばれる、この世に二つとない由緒正しき剣だ。しかし今はこのとおり、ブレイドが欠けてしまい、使用することはできない」



 遠目で様子を窺っているインフもどうやら興味があるのか、腕組みしながらソワソワこちらを気にしている。確かに今にも折れてしまいそうな剣は脆弱そのもので、修復しないことには使用することなど夢のまた夢に思えた。



「しかし剣を直すため、わざわざこんな場所へ? 見たところ、ここは砂山しかないように思えるのですが……」



 僕の疑問に対して、「ダンジョンやな」という声が背後から聞こえてきた。

 ポンさんが正気を取り戻したようで、むっくり身を起こし、目を擦りながら教えてくれた。



「ダンジョン?」


「おのれら知らんやろけど、こっからちょいと進んだ先に、それはそれはデカいダンジョンがあんねん。ここはそこを攻略するための拠点やろな」



「御名答」とカルラが頷く。

「また地下なの?」という僕の素朴な疑問は無視され、カルラが続けた。



「ダンジョンの中層にグレートマンティスというモンスターがいてね。そいつの腹針がブレイドの補修材料になるのさ。私はその腹針を手に入れるため、こうしてはるばるペンラムの砂漠帯にまでやってきたというわけさ」



 ダンジョンに、修復用のアイテム。

 どれもラノベの一情報でしか聞いたことがないものばかり。

 僕はそもそもダンジョンなどというものが本当に存在するんだという驚きが勝ってしまい、話半分で会話を聞いていた。



「しかしペンラムの地下ダンジョンは少々特殊でね。近くに拠点として使える町が一つもないんだ」


「それはまぁ……、歩いてみてなんとなくわかりました」


「しかもここは手に入るアイテムや出現するモンスターも異質ときている。それもあって、ほとんどの冒険者は関わろうとしないのさ。よって私のような変わり者の冒険者は、自分で拠点を作って攻略するか、一気に目的までの道筋を進めるかの二択を迫られるわけさ」


「だったらカルラさんはどうして拠点を? それほど時間をかけて準備する必要があるのですか?」



 ハハハと乾いた笑いで躱したカルラは、返答に躊躇しているようだった。

 助け舟を出すように、ポンさんが代弁した。



「決まってるやろ。……時間かけな倒せんようなモンスターやからや」



 肯定も否定もしないカルラ。

 しかし彼女の表情からは、どこか覚悟のようなものが漂っている。



「なら人を雇って一気に攻めるとか、ギルドでパーティーを組んで挑戦するとかは……?」


「さっき言うたやろ。そもそも誰も行きたがらへんねん。傭兵を雇うにしろ、相手はあのグレートマンティスや。……簡単に仕留められるモンスターちゃうやろ」


「あの、と言われましても……。そんなモンスター知らないよ」


「なに言うてんねん。グレートマンティスといえば、おのれが町で相手したカマキリやないか」


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