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人生フリーフォール状態の僕が、ユニークスキル【大落下】で逆に急上昇してしまった件~世のため人のためみんなのために戦ってたら知らぬ間に最強になってました  作者: THE TAKE
第2章 ペンラム国編

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第52話 理不尽の対価


 途端に泣き崩れる。

 砂漠の日差しを避けるため全身にまとっていた白マントをはだいてハンカチ代わりに抱え込み、彼女はおんおん泣きながらこれまでの苦労を嘆いた。



「ここはどれだけ掘っても砂だから、どうにか土を持ち込み押し固め地中に空間を作る作業に1年半、生活基盤の準備のためアイテムの準備や魔物よけギミックを作成するのにまた半年、そしてそれらを持ち込むためさらに半年。準備に準備を積み重ね、ようやくこれからという時に、キサマらは私の全てをぶち壊したんだ!」



 苦労して築き上げた地下空間の重要性を切実に語る彼女。

 それをたった五分で破壊した僕ら。

 泣きたくなるその気持ち、わかりますとも。だけど……



「こんなとこに人が住んでると思わないというか……、どうしようもなかったというか……」


「知らなければ何をしてもいいのか!? 理不尽な行いをして、知らなかったから自分のせいじゃありませんとでも!? 随分勝手な意見ですね、あー恐い、これだから傲慢なヒューマンは!」



 ガチでキレていらっしゃる。

 でもそんなときに限って、一方はドン引きかつ冷静になってしまうもので……


 巻き舌で捲し立てる彼女のことを改めて見上げてみる。

 これまでマントで隠れていたからわからなかったけど、上背は僕やインフより10センチほど高く、すらりとしたスレンダーなタイプ。恐らく歳の頃は、僕より少し上くらいだろうか。

 緑色の長い髪は丸く結わえてぼんぼりのようになっており、激しい怒りを露わにするたび、頭が二つあるみたいにボヨンボヨンと頭の上で跳ねていた。


 そうして砂漠地帯の水着のような軽装で一頻(ひとしき)り捲し立てた彼女は、この責任をどう取るつもりだと僕の鼻面に指を突きつけ迫るのだった。



「どうと言われましても……」


「責任も取らずに逃げるわけじゃなかろうな!?」



 ますます圧力を高める彼女に苛つき、魔力を強めたインフが「調子にのるな童が」と首を絞めて押し倒した。このまま地の底に埋めてしまいましょうと提案するので、僕はすぐに却下し、彼女の拘束を解いた。



「お願いだから、もう揉めないで。それに今回は全面的に僕らが悪いよ。知らなかったとはいえ、彼女のうちを壊しちゃったのは事実だし……」


「当たり前だ!」


「ただ本当に申し訳ないんだけど、僕もインフも責任を取れるようなお金も時間もなくて、キミの力になれるかは微妙なんだ。……本当にごめんなさい」


「あれもダメ、これもダメで通る道理などない!」


「うっ……。僕らでできることがあるなら協力します……」



 僕の提案に対し、インフが怒りを露わにした。

 目印すらない砂漠に地下空間を作り、それを壊されたから弁償しろとは都合が良すぎる話と彼女に迫った。



「インフ、もうやめて。目的は知らないけど、ニ年もかけた計画だから、きっと大きな理由があったんだと思う。なのに僕らは知らずに壊してしまった……」



「二年半だ!」と彼女がそっぽを向いた。

 しかし改めて全てなくなってしまった現実に襲われ、「私はどうすれば」と呟き、黙り込んでしまった。



「僕らも手伝います。何をすればいいか教えてください。できることはなんでもします」



 インフは不服そうだけど、こうなってしまったのも僕の責任だ。

 どうにか自分の罪を償わなきゃ、僕自身、気が済まない。



「どこの誰だか知らないが、そんな単純な話じゃないんだよ。ここで、この場所で、日中をやり過ごすことがどれだけ難しいか、わかって言ってるのか。この灼然の大地は、生半可な覚悟では半日とて生きられない。拠点を潰されるということは、それだけでも致命的だとわからないのか!?」



 埋まった道具一式を呆然と見つめながら彼女が言う。

 確かに一番近い町から往復するだけでも、かなりの労力と費用がかさむに違いない。さらに外的な要因に左右されない家の準備ともなれば、恐らくは言葉にする以上の苦労が必要だったはず。


 彼女が泣き言を言うのも頷ける。

 なのに――



「ふん、その程度のことを大袈裟な。ならばキサマの使う住居空間を用意してやればいいのだな? 主様、この穴ですが、わらわにお譲りいただいても?」



 唐突に提案したインフに「構わないけど……?」と返事すると、彼女は一旦僕らに穴から出るよう命じた。続いて地面の砂と周囲の物質を指で摘み、素材を確認してから「ふぅ」と軽く精神統一する。



「深さは十分ですから、あとは適当な空間を用意し、地下に収めるだけのこと」


「そ、そうだけど、でも砂漠の砂は固めるには適さないって聞いたことあるよ。だから彼女も長い時間をかけて、持ち込んだ素材で地下に壁を作ったんじゃないかな?」



 僕の言葉に驚いた彼女が激しく頷く。

 しかしインフは気にもとめず、「容易いこと」と言い切った。



「硬化の術など我ら龍族においては基礎中の基礎。造作もございません」



 パチンを指を鳴らすなり周囲の砂を空中集めたインフは、一瞬にして正四角形の燃え盛る巨大な砂の箱を作り出した。そしてもう一度指を弾くと、今度は箱全体を水色の液体で覆い被せた。急激に冷やされた箱は恐ろしい勢いで硬化し、そのまま穴底中央にドスンと落下した。

 さらにパチンと指を弾けば、箱の内部からくり抜かれた砂がちょうどよいサイズのレンガになって飛び出し、箱周辺の地盤を器用に押し固めていく。



「あとは中の空間をキサマの好きなように形成し、上から砂を被せ、自由に使うがいい。キサマが作った貧相な穴ぐらの百倍は堅牢なものとなるだろうぞ」



 ほんの三十秒ほどで箱部屋を作り出したインフは、これで手打ちにしろと平然と言い放った。僕と彼女は呆気に取られ、黙って互いの顔を見合わせていた。



「な、なんだ、キサマ、今なにをした?」


「キサマに家をプレゼントしてやったのだ。このわらわが直々にだぞ、ありがたく思え」



 僕と彼女は再び顔を合わせ、「いや、そうじゃなくて!?」とシンクロしながら言った。


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