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人生フリーフォール状態の僕が、ユニークスキル【大落下】で逆に急上昇してしまった件~世のため人のためみんなのために戦ってたら知らぬ間に最強になってました  作者: THE TAKE
第1章 パパス村編

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第39話 潮時


 再び西の方角で爆発が起こった。

 瓦礫の崩れる音と、おどろおどろしいモンスターの咆哮が町の中にまで響き、その瞬間、みんな同時に西の門が破られたことを悟った。



「やべぇ、やべぇよ! おい、俺たちはあっちへ行かなくていいのかよ!?」



 北の守り手にも動揺の声が広がり、あれほど高かった士気が蜘蛛の子を散らすように消えていく。

 肩から下りたポンさんは、西の方角を見つめながら、「やっぱり間に合わんかったか」と無念の言葉を呟く。反対に再び息を吹き返したように雄叫びを上げたモンスターは、もはや目的すらなく、ただひたすら進軍を続けるだけだった。



「そんでも今は一人でも多くのんを助けるんが先決や。ここは他に任せて、俺らは町の人をこっから逃がすで」



 僕らは北の関所を衛兵の皆に任せ、すぐさま町の中央部へと走った。しかし先程までと状況は変わりつつあり、これまではなかったモンスターの姿が町中に広がっていた。



「マズいよポンさん、どうしよう!?」


「まずは真ん中に集まってる住人を北門から逃がすで。余計なこと考えてる暇があんなら、塔があった方に走れ!」



 モンスターと戦っている時間も今は惜しい。速度低下(スロウ)を使えば必然的に移動速度が落ちてしまうため、僕らは危険を顧みず跳躍を使い、建物の屋根を伝って走った。



「あかん、モンスターを統制するもんがおらんせいで、どいつもこいつもやりたい放題や。目に付くもんを見境なく襲っとる!」



 人々の逃げ惑う声が聞こえるたび、ごめんなさいと心の中で唱え、走ることしかできない。どうして僕はこんなに無力なんだと考えている間にも、刻一刻と被害が広がっていく。家から家へと飛び移るたび、人々の声が大きくなっていく。どうやら避難民の多くは町の中心部に位置するギルド本部に避難しているらしく、僕はパパスの村で見たギルド紋章を頼りに、それらしい建物を探した。



「どこや、ギルド本部っちゅうのはどこにあるんや!?」


「ポンさん、あれ見て、ギルドの紋章!」



 大きな建物の屋根に、破れた旗がなびいていた。しかしその旗もモンスターが切り裂いたのか、今にも散ってしまうほど無惨な姿を晒していた。

 人々の無事を祈りながら本部の屋根に滑り込んだ僕は、悲鳴が聞こえた方向を振り返った。本部の入口では、数少ない冒険者や衛兵たちが、押し寄せるモンスターをギリギリのところで振り払っていた。



「ポンさん跳ぶよ、準備して!」


「加減しぃや、巻き込んでしまうで!」


「わかってる、少しずつ感覚が掴めてきた!」



 僕がドスンと着地すれば、衝撃もドスンと響く。逆に優しく着地すれば、その反発力もまた小さくなる。羽が舞うイメージでモンスターの正面に着地した僕は、目の前の数体を吹き飛ばすとすぐに速度低下(スロウ)を発動させ、取り囲むモンスターに向かって突進した。



「 どけぇぇぇ! 」



 折り重なり突っ込んでくるモンスターを正面から受け止め、一匹残らず弾き返す。もはや体裁など関係く、目に付く全てを可能な限り吹き飛ばした。「援軍だ!」と沸き立つ住民たちは、建物の中でかろうじて無事で、屋内から外の様子を不安そうに見つめていた。



「ギリギリ間に合ったな。ウタはなるべくモンスターを引き付けて、奴らを南の方角に引っ張るんや。あと衛兵連中に、中の人を北門へ避難するよう伝えぃ。俺はみんなと手分けして住民の避難を誘導するで、あとは頼むで!」



 人語が話せないポンさんに代わり、衛兵を先導する冒険者に事の次第を伝えた僕は、数多のモンスターの血で汚れてグチャグチャになった服の袖を破り捨て、大きく深呼吸した。そして避難を開始した人々の列を背中に感じながら、押し寄せるモンスターに向かって、人生で一度も出したことがないほどの声を腹の底から張り上げた。



『 こい、ザコモンスターどもめ。全部全部、全部、この僕が相手だ! 』



 言葉など通じていなくとも、普遍的な敵意や煽りはどんな相手に通じる。

 僕への殺意と同じく、言葉に込めた僕の決意も、相対している敵に伝染していく。必死の形相で襲いかかってくるモンスターは、どうやら僕を敵と認めたみたいだ。



「落ちろ、落ちろ、落ちろ落ちろ落ちろー!」



 山のように折り重なり、僕を押し潰そうとするモンスター。

 しかし強引に押せば押すほど、僕の身体は強度を増し、反発力も飛躍的に上がっていく。

 神様はなぜ、僕にこんな能力(スキル)を与えたのだろう。こんなにも弱くて、ツイていなくて、何ひとつ成し得たことがない僕みたいな存在に……



「ドィリャァァァアー!」



 モンスターの束を解きながら、南へ南へと中心を引きずり込む。押し寄せる山のような塊を、倒されては弾き、ねじ伏せられては、また弾き返す。


 しかしそれでも、僕一人の力で全てを止めるなんて無理に決まってる。

 知恵のあるモンスターは、集団で移動を始めた人々を狙い、僕の元から離れていってしまう。

 どうにかこの場に繋ぎ止めようと手を伸ばしても、統率なくバラバラに動き回る全てを止めることなんかできない!



「待てよ、逃げるなよ、僕から逃げるなぁぁあ!」



 周囲に固まったモンスターに道を塞がれ、次第に身動きが取れなくなる。集まれば身動きは取れず、追えど手は届かない。どれだけ無敵に近い状態にあっても、数の力の前ではどうにもならないことがある。例え僕は死なずとも、守りたい人たち全部を守るなど到底不可能に決まってる。



「ああああ、行くな、行くなよー!」



 衛兵もモンスターから町の人たちを必死に守っているけど、全て守りきるなどできるはずがない。ギルドへ押し寄せるモンスターも秒ごとに数を増し、いつからか東門付近からも黒い煙が上がっている。

 近くのモンスターを強引に吹き飛ばした僕は、群れから離れて距離を取った。すぐに跳躍を試みるが、速度低下(スロウ)の効力で早くは動けず、すぐに足を掴まれて引きずり込まれてしまう。



「放せ、放せよ! 畜生、これ以上どうすればいいんだよ、僕は!?」



 次々飛びかかってくるモンスターを跳ね上げたってきりがない。

 しかしその時、僕の耳元で誰かが囁いた。




「 そろそろ潮時ではございませんか? 」



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