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人生フリーフォール状態の僕が、ユニークスキル【大落下】で逆に急上昇してしまった件~世のため人のためみんなのために戦ってたら知らぬ間に最強になってました  作者: THE TAKE
第1章 パパス村編

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第34話 なんのため


 一言も喋らず無気力なインフを含めた僕ら三人が見上げた先には、町のシンボルにもなっている高い塔が(そび)えていた。ただ先端には町の外を見張るために作られた物見櫓(ものみやぐら)もあり、見張っている衛兵の姿も見えたため、「本当にあそこ?」と確認せずにいられなかった。



「確実とは言えへんけども、俺の鼻っちゅうか、神獣の鼻を舐めたらあかん。俺らはそこの竜族とちごて、ホンマもんの神の力が宿ってるからな、堕神やなくてホンマの神やから!」



 ポンさんの煽りに、これまで黙っていたインフの頬がピクリと反応する。



「キサマら薄汚い獣如きが、我ら神竜をコケにするとは。万死に値する」



 また喧嘩を始めた二人を強引に引き剥がし、僕はポンさんを抱えたまま町の中央に建つ塔へと急いだ。中央広場へ近付くと、住人や子供たちが避難のために集まっており、それぞれが口々に神への祈りを捧げるだけの絶望的な状況となっていた。


 衛兵たちはといえば、城壁外の守りに手を取られ、付近には姿もまばら。僕らはそんな彼らの目を盗み、塔の裏手から内部に侵入する。



「勝手に入っちゃって大丈夫!?」


「大丈夫も糞も、進まなどうにもならへんやろ。まずこの状況をどうにかせぇへんと、話が一個も始まらん」



 塔の壁を沿うように備えられた細く長い階段を一気に駆け上がった僕らは、息を切らし、最上部の扉を勢いよく開いた。



「うん? な、何者だ!?」



 見張り台で警備にあたっていた衛兵が声を荒げた。「僕らは敵じゃありません!」と前置きした僕は、そこにいた数人の衛兵たちを目で追った。



「ポンさん!?」


「……ちょい待ち。……アイツやな」



 青茶色に染まり、カビが生えたようなガビガビのお手々が、まっすぐ一人の人物へと伸びた。その行く先を追うように、僕らと四人いた衛兵たちの視線も、一斉に指し示す先へと引っ張られる。



「え、なんの騒ぎだ?」



 ポンさんが示す先には、男の衛兵が一人いて、彼はなんの違和感もなく返事した。

 何事だよと怪訝な顔をしている他三名の衛兵たちは、険しい表情で僕らに質問した。



「なんだお前ら、今がどんな状況かわかっているのか!?」


「いや、おい待てよ。敵じゃないと言いながら、そもそもそいつ、モンスターを連れているぞ!」



 彼らが敵意を向けている間にも、ポンさんは僕の耳元に顔を寄せ、「アイツに向かって俺を投げい」と命令した。「奴らを掴まえろ!」と手を伸ばす衛兵たち。しかし僕は抱えていたポンさんをラグビーボールのように構え、その指先が示す方向へ、彼を放り投げた。


 美しい放物線を描き、小さな丸い塊が衛兵の顔に着弾する。可愛らしい指をニ本立てた珍獣は、それを思い切り両目に突き刺した。



「チェェェストゥォォォッ!」


「ぐ、グアァッ!?」



 突然の目潰しにやられ、衛兵の男が顔を押さえて(うずくま)る。一回転し、シュタッと着地したポンさんは、「正体を現さんかい!?」と啖呵を切り、二本足で立ったまま短い指をクイクイ動かし挑発した。


 一体なんの騒ぎなんだと、他の衛兵の動きが止まる中、僕は三人の間をすり抜けポンさんを回収した。すると直後、顔を押さえていた男がゆっくりと顔を上げた。

 衛兵仲間の一人が、彼に大丈夫かと手を差し出した。しかし1秒後、擦れる音とともに、ぼとりと何かが落下した。



「…………え?」



 衛兵が伸ばした自分の腕を確認する。

 しかし手首から先はなく、吹き出す血と、地面に落ちた自分の手、そして元仲間だったはずの目玉がない衛兵が、不気味に微笑んでいるだけだった。



「な、え!?」



 ザシュッという斬撃音に続いて、男を助けようとした衛兵の上半身がちぎれて飛んだ。その光景に、僕はスプラッター映画を見ているみたいに驚愕しながらも、本能をフル稼働させ、ここで止まったら僕も殺されると下唇を噛みながら走っていた。



「人に擬態できるランクのモンスターや。知能があるぶん厄介やで。どないするつもりや、ウタ?」


「どうもこうもないよ、逃げるしかないだろ!?」


「ハァ? 逃げてる場合かいな。おのれ、ここへ何しにきたんや」



 塔の階段を下りながら、ポンさんの言葉で僕は我に返った。そうだ。僕は何をしにここへやってきたんだ?


 目の前で町の人を殺され、無様に逃げ帰るため、僕はわざわざここにやってきたのか?



 ……違うだろ!

 僕は町を、みんなを救うためにきたんじゃなかったのか!?


 駆け下りようとする太ももをバンと叩き、急ブレーキをかけた僕は、悲鳴が聞こえる塔の先端を見上げた。正体を晒し、仲間だったはずの衛兵に今なお手をかけようとするモンスターは、僕を視線の端にとらえながら、鎌になった右腕をゆっくりと振り上げた。



「や、やめろー!」



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