第22話 烈風破裂
「あわわわわ、なんなんですか、あの数。それに、モンスターってなんかグロいんですけど!?」
巨大な昆虫のようなバケモノや、ドロドロに溶けた人型の兵士。豚のような戦士や羽を使って飛んでいるゾンビもいる。多種多様な種類のモンスターは速度も大きさも様々で、一気に距離を詰めてくるものもいた。
「カッセ、そっちに一匹それた!」
「おうよ、任せろ!」
正面から飛んできた複数匹の蜂のようなモンスターを、巨大な斧で一刀両断する。真紫の血が飛び散り、僕は思わず仰け反って馬車の壁で頭をぶつけた。
「おいおい、たかだかビートル相手にそんなビビっててどうするよ。それでも冒険者か?」
余裕綽々なサロムは、手際よく馬車を操ると、谷へと続く渓谷の側道を駆けていく。未だ諦めず追ってくるモンスターの圧力を背後に感じながら、馬車は秒ごとに速度を増し、土煙を巻き上げて進む。
「ちっ、少々敵さんが速ぇな。エリル、上の集団どうにかなるか!?」
「少しなら」
「少しと言わず、どんとやれ。渓谷に入る前に極力数を減らしておきたい」
頷いたエリルは、自分の背丈ほどある杖の先で円を描くと、「火球!」と叫んだ。描いた魔法陣の中心から飛び出した炎の弾が、上空を追ってきたモンスターを巻き込み爆発した。
「凄い。なにもないところから炎が」
「当たり前だ、魔法なんだから。次、またくるよ。用意しな!」
ビータの声掛けに反応し、三人は驚くほど連携が取れた動きをみせ、迫る敵の魔の手を阻む。
サロムは足を、エリルは上空を、そしてカッセは近接と、モンスターを寄せ付けず、いよいよ一本道となった渓谷の入口に差し掛かる。
それほどの緊張感の中、よだれを垂らしてうつらうつらしているインフをよそに、僕は自分も何かできないか模索した。たとえ魔法や剣術が使えないとしても、少しくらい役に立つ方法はあるはずだ。
「ビータ、渓谷の一本道に入るぞ! この先はあそこまで横道もない。誘い込んじまえば、あとはこっちの思う壺だ」
「だね。でも念には念を入れるよ。エリル、アタシをあそこへ飛ばしてちょうだい!」
すり鉢を横に倒したような一本道は、左右を高い壁に囲われ、前後を塞いでしまえば逃げ場もない。しかしエリルに合図したビータは、馬車の天井を足場にして飛び上がると、空中で小さな盾を足裏に装着させて、「お願い!」と叫んだ。
「水柱!」
杖先から噴射された水鉄砲を足裏の盾で受け、ビータが空高く飛び上がった。そしてそのまま側壁の上まで飛び上がり、見事着地した。
「ええええ、なんて身軽なんだ!」
僕の驚きすら意に介さず、側壁を超スピードで駆けていくビータは、馬車と逆方向へ踏み込むなり、今度は高飛び込みでもするように踏み切った。そして迫りくる後方のモンスターたちがいる真横の壁へ向けて、輝く短剣を振るった。
「烈風破裂ッ!」
空気を切り裂いて放たれた風の斬撃が側壁を破壊する。衝撃を受けてひび割れた巨大な岩が石の飛礫のように落下し、モンスターたちに襲いかかる。
後続を断ち切り、かつ戦力も削る見事な一撃に、僕は思わず見入っていた。
しかし「油断するな」と僕をしっかり座らせたサロムは、全速力を続けたまま前方に見えてきたものに目標を定めた。
見事敵を分断し、渓谷の斜面を駆けて追いついたビータが馬車の天井に着地した。その姿を見届け、サロムは手綱を強く握りしめ、馬たちにバチンと大きな合図を出した。
「てめぇら、舌噛まねぇように気合い入れとけ、一気に渡り切るぞ!」
渡ると表現するものに、僕は覚えがある。メルビンへ向かう道中、渓谷を通過した場面で、僕の記憶に残っている風景といえば一つしかない。
「や、や、や、やっぱりアレですよね!?」
「そりゃそうだ、一気に行くぞ!」
ガコッという軽い踏み音とともに、足場が急激に揺れた。
それもそのはず、それなりの重量があるこの馬車が、渓谷にかけられた吊橋の上を、速度を落とすことなく走っているのだから……
「カッセ、エリル、準備できてるんだろうな!?」
【作者からのお願い】
よろしければ、
・ブックマークに追加
・広告下にある「★★★★★」評価
を押していただき、本作を読み進めていただければ幸いです。
皆様の応援が作品を続けていくモチベーションとなります。
感想などもお気軽にどうぞ!




