第14話 ゴリゴリの低ランク冒険者
同時に声が上がる。
そうでしょう、そうでしょう。
さぞかし美味しかろう。なにせ僕が腕によりをかけて作ったのだから。
しかし続く彼らの反応は、僕にとって「???」だった。
「うーん、確かに美味い気がするが、なんだかよくわからん。これ本当に肉か? 柔らかすぎて食ってる気がしねぇよ」
「確かにそうですね。普通お肉って、こうガシガシとした弾力と、ドンッとくる肉肉しい匂いが鼻にグッとくるというか、むしろ生臭いのが良いというか」
「確かに。して主様、おかわりはまだですか?」
。。。。。。
嗚呼、なるほど。
こいつら、繊細さのカケラもない、質より量なアッチ側の人ですか!
「ちっ、このバカ舌どもめ……!」
「主様? 何かおっしゃいましたか?」
「いーや、何も言ってませーん。すぐ次を作りまーす。お待たせして申し訳ありませーん!」
『???(三人)』
僕は下味だけした豪快肉をそのまま豪快に焼き上げ、特製のタレだけぶっかけて皿に盛った。彼らはそれを涙を流すほど「美味い、美味い」と頬張り、それこそ馬鹿みたいな量を平然と平らげた。
『天才だ……! こんなとこに天才シェフがいた……!!』
彼らの僕に対する評価値は鰻登りみたいです。しかしこれはこれで違う気がするんですけど!?
「あー、食った食った。最高かよ、サイクロプスホーンのモモ肉!」
「それだけじゃありませんよ。あの大きなお肉を焼き上げるウタさんの腕が凄いんです。でなければ、あれほどジューシーでボリューミーな味は出せないはずです!」
「さすがは我が主様。それでこそついてきた甲斐があるというものです」
一頻り好き勝手な感想を言い終えたところで、片付けをしている僕の背中を見つめながら、何か思い出したようにサロムが「あっ」と呟き、皆の気を引いてから尋ねた。
「そういやよ、さっき聞き忘れたんだが、このモンスターは、本当にパパス村の近辺で討伐したんじゃないんだよな?」
インフが首を横に振るのを確認し、「違います」と否定する。サロムは「だよなぁ」と、どこかしっくりこない顔をしながら皆に伝えた。
「実はさっきギルドの団長に呼び出されてな。ちとおかしな話を聞いたんだ」
「お兄ちゃん?」と、レビンが僕らに気を使い、話を遮った。
「いいや、これは冒険者である二人にも関係のあることだから聞いてもらいたい。実はな、少しばかり村の周辺でおかしなことが起こっているようでよ」
これまでの空気とは一変し、シリアスな表情になったサロムが僕とインフを交互に見つめながら続けた。
「二人も知ってのとおり、このところ村の周辺から動物やモンスターが姿を消してしまってるみたいでよ。低ランク冒険者たちがクエストをこなせなくて困っているらしいんだ」
「それは私たちギルド職員にも報告が届いています。でもそれがギルマスさんに呼び出されるほど大きな問題とは思えません。なによりも、村の近辺で凶悪なモンスターやダンジョンが発生した可能性は低いと聞いてますし」
「確かにそういった情報は今のところ届いてない。しかしその反動なのか、南のメルビンの町付近に大量のモンスターが集まってるらしいんだ。パパス村のギルドにもこれから討伐強力の依頼が入ってくることになるって話を聞かされた。そこで、だ。二人にも何か心当たりがないか、ってのを確認しておきたかったんだ」
僕はインフの顔を横目でチラリと確認した。彼女は平然と誤魔化しながら、彼らの話に我関せずを貫いた。
「外からきた二人が知るはずないとは思うが、カーズルインの崩壊後、大きな変化が起こっているのは間違いない。今回のことも恐らくその一つなんだろうが……。念のため用心しておいてほしい」
「でもお兄ちゃん、その話がお二人に何の関係が?」
「いや、だって二人は駆け出し冒険者だろ? だったらやっぱり倒したいだろ、低ランクモンスター」
「あっ」とレビンが察する。
彼女のなんとも言えない表情で、僕も大体の流れを察してしまった。
僕のレベルは1
→ ゴリゴリの低ランク冒険者
→ 低ランククエストしか受諾できない
→ 低ランク冒険者が受諾できるクエストは?
色々想像を巡らせていくと、恐らくこの村で僕が受けることのできるクエストは……
「僕が受けられるのって採取クエストのみ、でしたよね?」
レビンが複雑な表情で頷いた。
現状、低ランクモンスターすら倒せない僕が単独で受けられるのは、採取系のクエストのみ。しかし採取クエストであれ、低ランクモンスターが完全に出現しないわけではない。イコールそれは実質受けられるクエストが『一つもありません』という結論に繋がってしまう。
「ギルドとしても、さすがにレベル1のウタさんを一人で行かせるわけにはいきません。しかし今回のように都合よく他の冒険者が帯同できるわけでもありませんので……。実質そういう結論となります」
「やっぱりそうですよね」
「で、ですが、ウタさんがもう少しレベルアップいただければ、条件も緩和されます。ですので、まずはクエストを受諾せず、簡単なモンスターの討伐を目指してみてはいかがでしょうか」
「でも……、村の周辺で出現しないんですよね?」
ハッと顔色が悪くなるレビンをフォローすべく、まぁまぁとサロムが促す。
「そこで俺から一つ提案だ。ウタ、……俺と一緒にメルビンの町へ行かないか?」




