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雫先輩と二人きり!

 雫ちゃん先輩の顔を見るなり、ひかりは踵を返しドアを静かに閉めて出て行った。


 フフフっ、という満足そうな笑みを浮かべた雫ちゃん先輩。



 …………何故だ?


 あ、あ、あのっ、ひかりが退いた?


 って、雫先輩は何の技を使ったのか?


 これは、是非伝授してもらうしか無い。


「あの、雫先輩。どうやってひかりを追い返したんですか?」


「フフっ、知りたい?」


「ええ、もちろん! お昼一月分の食券でもオッケーです」


「まあ、そんなに? 困ったわね。私はお弁当だから、必要無いのよね。

 でもね、もしもお弁当じゃなくても、それは秘密じゃないわよ? ひかりちゃんは遠慮してくれただけだと思うよ」


 天使なのか悪魔なのかわから無い微笑みで、小首を傾げる雫ちゃん先輩は、やんわりと質問を遮った。




 ……可愛い顔してかなり上手みたいだな。



 所謂、天然悪女の部類なのだろう。

 僕の手を握ったままの雫先輩の手は、指を絡ませて来た。


「ねえ、これって恋人同士みたいだね。

 私、彼氏がいないから、一度してみたかったわ。

 その相手が、ひかる君とは思わなかったけど、同時に昔からの夢が二つ同時に叶っちゃった!

 たぶん今日は、嬉しくて眠れないかもしれないわ」


 あいも変わらず、雫先輩の鈴の音の様な声は不思議と僕には聞き覚えがあるみたいな感じがする。

 しかし、学内の人気者なんて、そう簡単に忘れる筈は無い。


 だって、No.3なんだからね。


 ちなみに、No.1はひかりNo.2はつばさという順番だが、好みの問題なので、僕の気持ちの順番なら一番がつばさで、二番が雫先輩となる。

 ひかりは論外だ!


「ねえ、ひかる君は、彼女はいるの?」


 突然の爆弾発言に驚きながらも即答する。


「生まれてこの方、そんな人はいません!」


 力んで答えたけど、少しだけ罪悪感が残る。

 本命のつばささんの笑顔が頭に浮かぶ。



 ……ご、ごめんね、つばささん。


 でも、雫先輩とは今日限りだから、明日からは心を入れ直すから、大丈夫だよね。

 彼氏がいなくても、雫先輩とは校舎も違うし、接点がない。だから、少し惜しいが今日限りだよ。


「ねえ、ひかる君? どうしたの?」


 怪訝そうに、僕の顔を見て、如何にも心配しているという雫先輩の顔は、確かに見覚えがある。


 いつのことだろうか?

 雫先輩は、僕もひかりも知っている様だが……。


 雫先輩って、苗字は何だっけ?

 怪訝そうに雫先輩を見つめると、いまだに握っている手に力が入ってきた。


「るるちゃん。思い出してくれないの?」


 にこやかに微笑む姿には、やっぱり、何となく見覚えがある。


「私は七瀬 雫、お久しぶりね。るる君」


 ……るる君って、しずちゃんか?


「まあ、従姉妹を覚えてないなんて悲しいわ。

 でも、仕方ないかな。光希おば様が家に来なくなってそれっきりだものね。

 私は一人っ子な分、あなた達が家に来なくなって、ずっと寂しかったし、話したかったけど、二人ともいつも周りに人がいるから、素直に遊びに行けなかった……。だから、今日は、チャンスね。

 りりは逃しちゃったけど、るる君がいるなら、遊びに行けるね。これからよろしくー!」


 ……さっきまでとは大違いだ。


「いや、雫先輩。じゃあ、ひかりは知っていたということかな?」


「だーめ。雫ちゃんでも、雫でもいいけど先輩はNGだよ」


 ほっぺたを膨らませた顔は、ますます可愛いさが増しているが、こんな従姉妹がいた事を覚えてないなんて、何でだろ?


「あ、あのっ、僕……、お姉に怒られるよ」


 とうとう困ったということを伝える。

 一瞬、固まった雫先輩がワナワナと小刻みに震え始めた。


「えええええっ、るる君ってば

 わ、わたしのことを……。

 お、お、お、お、お、おぼ、おぼえて……、ない?」


 雫ちゃん先輩の瞳から一筋の涙がこぼれた。


 ……ええええっ、女の子を泣かせたら、ひかりと母者怒られる。


 いや、その前に従姉妹だったのか?

 しかも、交友関係が無いとは、どういったことなのだろうか?


「いや、いや、お、思い出しましたのです!」


 本当は思い出して無いんだけれど、雫先輩のだだ漏れの涙に負けた。


「えっ、じゃあ……、あの約束も覚えているかな?」


 心なしか、期待しながら上目遣いに雫先輩から見られると僕の心臓の鼓動は早くなる。


「も、もちろんじゃあない!

 あ、当たり前のことを聞いて欲しく無いな」


 自信満々に腕を組んで、頷いてみせると、雫先輩の顔が華やかな顔に変化する。


「じゃあ、じゃあ、私は大学を蹴って、るる君のお嫁さんになっていいんだよね!」


 …………えっ?


 そんな約束だったのか?

 雫先輩、ちょっとお待ちくださいね……。


 んっと、雫先輩と結婚することになるのなら、僕としては少なくともマイナスは無い。

 ただ、気掛かりは、つばささんへの想いと、これからの生活の変化かな?


 しかし、つばささんにOKを貰うなんてことは、ありえ無いだろうから……、ここは雫ちゃん先輩をゲットして、めくるめく大人の世界にデビューしちゃいますか!


 いやいやいや、ちょいと待て、それでいいのか?

 今、つばささんを諦めると一生、後悔しないのか?

 撃沈されても雫先輩は待っててくれるだろうし、つばささんへの気持ちを俺は我慢出来るのか?


 ふぅ、難しい問題だ。


「じゃあ、まだ何か考えているみたいだから……。

 そもそも、強要はしたくないし、私がお嫁さんに合格かどうかを知って貰うために、明日は、私が今日のお礼にお弁当を作ってくるから、それで少し考えてくれない?」


 少し残念な顔をしながらも雫先輩は結構大胆な話を僕に切り出した。


 ……確かに、一理あるのだが、何か違和感が残るのはどういうことだろう?

 しかし、お弁当ぐらいなら、大事にはならないから……、うん、これで済まそう。


「雫ちゃん。明日は楽しみにしているね」


「はい、るる君」


 ここで、僕は安心してしまったのだが、あとの祭りとはこんな事をいいうのだろうと身に沁みた。

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