異変
雫ちゃん先輩から解き放たれて、そのまま教室に戻ると、やはりブン太からサボりの原因を聞かれたのだが、これは予想の範疇であり答えは決まっていた。
「おめーには関係ねーよ!」の一言。
ブン太の質問にまともに答えるつもりはハナからない。それでもブン太は食いさがるだろうが、別の話題に振ることで雫ちゃん先輩との甘いひと時には全く触れずにブン太の話を終わらせた。
ブン太に振った別の話題とは、もう分かっていると思うのだが、分からないなら容易く想像出来るとヒントを出してあげましょう。
そうです単に、ひかりの話を持ち出しただけ。
んで、毎回、ブン太は懲りずに引っかかるブン太は可愛い奴だと思ってしまう。
それに不憫な奴ともね。
まあ、奴のキャラだと思い、割り切ると別に気にしないでもいいだろう。誰も不幸にはならないし、むしろ、ブン太的にはひかりの話の方が重要だろうから……。
だが、この思考は、ひかりに似てきたかも知れない。
……気をつけよう。
ホント。
ここで僕の気持ちにわだかまりが生まれた、ブン太……コイツは、ひかりの話を聞くためだけの目的で僕の友達になっているのだろうか?
その疑念は間違い無いだろうが、解決までは一瞬だった。
あ〜あ、時間の無駄だった。
無駄に頭を使ってしまったよ。
ブン太の成績を考えると器用な真似は絶対に出来ないだろうから、白だろう!
以上、分析終了だ。
しかし、次の休み時間がかなり怖い。
ひかりから詰問されることが予想され、その時の理不尽さまでもがリアルに想像できてしまう辺り、自分が不憫だと思ってしまう。
休み時間のチャイムが鳴ると、僕は意識せずに身構えてしまう。
さあ、そろそろだろう……。
十分後、授業の始業をしらせるチャイムが鳴り、僕の緊張感は一気に抜けた。
そして、新たな緊張感に包まれる。
あのひかりが来ないとは?!
一体、どういうことだろう……?
やはり、雫ちゃん先輩の話は嘘ではないようだが、効果があり過ぎて、いまいち実感出来ないよ。
はてさて、雫ちゃん先輩は、僕達と従兄弟姉妹と言っていたが、そこに僕が知らない秘密が隠されているのだろうか?
しかし、従兄弟姉妹と言っても、たかが知れていると思うし、どういうことだろうか?
……………………やだけど、ひかりに聞くのが手っ取り早い。よし、次の休み時間にひかりの所に行って聞いてみよう。
そうすれば、つばささんにも会えるから、一石二鳥というメリットもあるし、ひかりと話すリスクを考えると、多少のメリットは許される筈だ。
それに、雫ちゃん先輩のお弁当を食べる前につばささんに会っておかないと総合力で雫ちゃん先輩の魅力に屈伏してしまうとも限らん。
基本的に、つばささんも雫ちゃん先輩も僕の好みであり、学園の上位にランキングされかいるが、あの二人ならば大差はない。
たぶん、雫ちゃん先輩があまり人前に出ない分、認知度が低いためのランキング結果だと考えている。
一方で、つばささんはひかりと共に行動しているから、学内で目立つことこの上ない。
これもわざとしている事ではないし、ひかりがいなくても十分に人目を引いてしまう可愛さだと断言が出来る。
だから、どちらでもいいと言うと失礼だが、より確実な方を選んでしまうのは、自然の摂理だよね。
そうこう考えているとまたも授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。
素早く教室を出て、ひかりの教室に入る。
入る前にブン太に付けられていないかの確認は抜かりなくやっている。
あいつは、ひかりの事なら何処にでも現れるから厄介なんだ。まるでゴキブリみたいな奴だ。
──ゴキブリ……
よし、ブン太のあだ名はゴキに命名しよう。
ひかりの教室に入り、ひかりの机までやって来たが、肝心のひかりがいない。
海上の鳥山宜しく、ひかりの席の周りに人だかりしていたのだが、その人だかりはつばささんもものであった。
男女合わせて、ざっと十人は超えている。
この中には、ひかり目当ての奴もいたのだろうが、ひかりがいなくてもつばささんでも十分とのことだろう、あわよくばひかりが帰って来るのを待っているのかも知れない。
僕はと言えば、ひかりがいないなら用はない。
ひかりがいるからこそ、つばささんにも話が出来るのだから、諦めて帰ろう。
僕が後ろを向いた途端、透き通るような声が聞こえた。
「ひかる君、ひかりは前の授業の途中で帰ってしまったよ。
なんか、大切な用が有るって言ってたし、ひかる君がここに来るだろうから、ひかりは帰ったと伝えといてと頼まれてたんだよ」
僕は首だけ振り向いて、手短にお礼を言って教室を出て行こうとしたら、どういう訳か、つばささんが取り巻きを席に残したまま、僕の所にやって来た。
「ねえ、ひかる君。制服のネクタイが曲がっているよ。いつもはひかりがしてるから、今日は私が代わりね」
軽くネクタイを緩めると、位置を合わせてから適度に締めてくれるのだが、すっげー髪の良い匂いが鼻腔をくすぐる。
このまま、ガバッと抱きつきたいが、つばさの頭越しに見える取り巻きの視線がちょー怖い!
「はい、終わり!」
僕だけに微笑んでくれた事は至福だが、身の危険がとても切実となって来た。
しかも、止めてくれる筈のひかりがいないなら、どんな目に遭わされることやら?
「つばささん、ありがとう。じゃあね」
そう言って、そそくさと退散する予定だったのだが、つばささんからストップが掛けられてしまった。
「ちょっと来て」
そう言うと、僕の右手を握って廊下に向かって歩いて行く、教室のドアを閉めた途端、『バンっ』という幾つもの音が聞こえて来た。
ヤロー共がドアに向かって上履きを投げたのだろう。しばらく、この教室には来られないようだ。まだまだ命は惜しい。
せめて、人並みの青春を経験だけはしておきたい。そう、恋のABCは絶対に欠かせない。
つばささんは黙々と歩いて、階段を登って行く。仕方なく、僕もついて行くが、その間に二人の間に会話は無かった。
つばささんが話好きということは、僕の情報の中では常識となっているから、なんだかひかりと同じくらい異常な状態だろう。
歩き始めて、約五分。
着いた先は、屋上だった。
そこで、次の授業の始業を知らせるチャイムが鳴った。
「さあ、ひかる君。今なら邪魔者はいないから正直に答えてね」
なんか、リクエストが多いんですけどねー(笑)
これは、あくまで自己満足の作品ですよ!!




