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6話 最後の死闘〜絆を合わせて〜

ホールは、息を潜めた静寂に包まれていた。


シャンデリアの光が弱く揺れ、床に伸びる影が不気味に蠢く。


黒銀の黒いオーラが渦を巻き、闇そのものが生き物のようにうねり、朱莉と桃華を睨みつけていた。


朱莉の心臓は、激しく、痛いほど鳴り続けていた。


視界の端で、桃華の震える肩が見える。


黒銀の目、あの冷たい光……あいつは本気で、私たちを壊そうとしてる。


でも、桃華がいる。


あの夜、屋敷の個室で抱き合って泣いたとき、


桃華が「大丈夫だよ」って言ってくれた温もりが、


今も胸の奥で燃えてる。


その温もりが、私をここまで連れてきてくれた……


桃華の優しさ、桃華の涙、桃華の笑顔……


全部、私の力なんだ…… 絶対に、負けない……!)


黒銀の低い声が、沈黙を切り裂く。


声は低く、抑揚がなく、ただ冷たく響く。


「女2人なんて……雑魚だ」


黒銀がまず桃華に飛びかかる。


拳が風を切り、桃華の肩を掠める。


桃華の体が後ろに吹っ飛び、床に膝をつく。


小さな悲鳴が漏れる。


その声が、朱莉の心を刺す。


鋭く、痛く、心臓を締めつける。


「桃華!」 


朱莉は叫び、体を投げ出すように黒銀に飛びつく。


黒銀の背中に腕を回し、必死に抑えようとする。


黒銀の体は熱く、汗ばんでいて、筋肉が硬く張りつめている。


黒銀は笑いながら朱莉の腕を振り払い、朱莉の体を壁に叩きつける。


背中が激痛に震え、朱莉の視界が一瞬揺れる。


壁の冷たい感触が背骨に伝わり、息が詰まる。


(痛い……体が……壊れそう。でも、この痛みは……あの屋敷で何度も感じたものと同じ。


みんなが次々と消えていく恐怖。


一茶の処刑、白樹の死、茉黄の夜襲……


あのとき、私一人じゃ耐えられなかった。


桃華がいてくれたから……


毎晩、抱き合って「信じてるよ」って言葉で、心が折れなかった。


今も……同じだ。


桃華のためなら、この痛みなんか……! 


桃華の優しい笑顔を、もう一度見たい。


あの温もりを、もう一度感じたい。


だから……負けられない……!)


黒銀が近づき、朱莉の腹に膝を入れる。


息が止まり、朱莉の体が折れそうになる。 


内臓が潰れるような衝撃。


黒銀はさらに拳を振り上げ、朱莉の顔を狙う。


その拳は、ゆっくりと、確実に近づいてくる。


朱莉の視界に、黒銀の拳が大きく迫る。 


「お前を……ぶん殴れて、最高に嬉しい」


黒銀の右フックが朱莉の頰を掠め、皮膚が裂けるような痛みが走る。 


朱莉は後ろに吹っ飛ばされ、床に転がる。


頰から血がにじみ、味が口に広がる。


黒銀は笑いながら追撃。


左のストレートが肩を直撃し、骨が軋む音が響く。 


痛みが電流のように全身を駆け巡る。


朱莉の視界が一瞬白く染まり、膝がガクンと折れかけた。 


(痛い……! 痛いよ……! あいつの拳、重い……


体が……持たないかも……


黒銀の黒いオーラが、私を飲み込もうとしてる…… )


黒銀は笑いながら追撃を続ける。


上段からのパンチが朱莉の頭をかすめた。


朱莉は必死に避けながら、黒銀の脇腹に掌底を叩き込む。


黒銀の体がわずかに後退するが、すぐに踏み込んでくる。


黒銀のパンチが連続で朱莉の腹、脇腹、顎に飛ぶ。


一撃一撃が、重いハンマーのように朱莉の体を震わせる。


朱莉の体が、壁に押しつけられ、逃げ場がなくなる。


黒銀の拳が、再び振り上げられる。


「はっ……はっ……」


朱莉の息が上がり、汗が目に入る。


視界が揺れ、膝が折れそうになる。


黒銀の拳が再び振り上げられ、朱莉は防戦一方だった。


黒銀の黒いオーラが、朱莉を飲み込もうと迫ってくる。


(……負けそう……もう、立てない……


桃華……ごめん……私、一人じゃ……


あの約束、守れなかったかも……)


そのとき、桃華の声が響いた。


彼女は床に這いつくばりながらも、声を振り絞った。 

「朱莉ちゃん……がんばれ!絶対、負けないで!」


桃華の声が、朱莉の胸に届いた。


桃色の優しいオーラが、ふわりと朱莉を包む。 


朱莉の赤いオーラと混ざり合い力がみなぎってきた。


朱莉は体を起こし、黒銀の次のパンチをかわす。


黒銀の拳が空を切り、わずかな隙が生まれる。


朱莉は一歩踏み込み、黒銀の脇腹に強烈なボディブローを叩き込んだ。


拳が黒銀の体に深くめり込み、息を吐き出す音が聞こえる。


「ぐおっ……!」


朱莉は追撃を入れようとするが、黒銀はすぐに体を起こし、朱莉の髪を掴んで引き寄せた。 


「俺が女ごときに負けるわけねぇよ!」


黒銀の膝が朱莉の腹にめり込む。


朱莉は息が止まり、視界が白くなる。


痛みが爆発し、吐き気がこみ上げる。


体がくずおれそうになるが、朱莉は歯を食いしばって耐えた。 


(……痛い……でも……桃華がいる……負けない……!)


桃華が叫ぶ。


「行けー! 朱莉ちゃん! 絶対やっつけよう!」


その声が、再び朱莉に力を与えた。


赤と桃色のオーラがさらに強く渦巻き、朱莉の拳が速くなる。


朱莉は黒銀の腕を振り払い、黒銀の顎にアッパーを叩き込む。


黒銀の頭がガクンと仰け反る。


「なんだと……!」


朱莉は止まらない。


連続でパンチを浴びせる。


右ストレート、左フック、右アッパー


一つ一つの拳に、桃華の想いが乗っている気がした。


黒銀の体が揺らぎ、鼻血が飛び散る。


黒銀の目が、動揺の色を浮かべた。


彼は後退しながら、声を絞り出す。


「し、しまった……!」


赤と桃色の光が、黒を押し返すように広がる。


黒銀は壁に寄りかかり息を荒げて立ち上がる。


黒いオーラが再び渦を巻くが、その渦は、先ほどより明らかに弱々しい。


黒銀の目が、本物の恐怖に揺れる。


そして動揺した瞬間、大きな隙ができた。


朱莉は全力で跳び上がり、最後のアッパーカットを叩き込んだ。


「あたしの情熱の1撃、喰らいなさい!」


「てりやぁぁぁぁ!!」


拳が黒銀の顎に直撃し、衝撃が全身に伝わる。


「ひぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」


黒銀の体が吹っ飛び、数メートルも浮き上がり、

床に激しく叩きつけられる。


コテンパンにされた体が、痙攣するように震える。


黒銀は体を丸め、息を荒げながら這う。


白目がゆっくり広がり、完全に意識が飛ぶ。


口から泡がポタポタと落ち、体がピクピクと震える。


朱莉はゆっくり近づき、黒銀を見下ろした。


汗が滴り、拳が痛むが、心は晴れやかだった。


「……いい?黒銀」


黒銀の体がピクッと反応する。


かすかに、目が動く。


まだ、意識の欠片が残っている。


朱莉は微笑みながら、言葉を落としていく。


「女はね……いざという時、男より強いんだから」


黒銀の息が、苦しげに漏れる。


朱莉の心が、熱く高ぶる。


「だから……2度と、女を舐めんなよ」


朱莉の目が、燃えるように輝く。


「女は弱いって決めつけて、女は黙ってろって思って、女は雑魚だって笑って……


それが、あんたの運命を決めたんだよ」


朱莉は拳を少し下げ、黒銀の白目を真正面から見据える。


「私たちは、桃華と一緒に、怖くても、痛くても、

絶対に諦めなかった。


あんたみたいに、一人で強がって、仲間を疑って、


最後まで女を下に見てたやつは……


こうなるんだ」


朱莉の声が、少し大きくなった。


黒銀の体が、ビクッと震える。


朱莉は微笑みながら、最後の一言を叩きつけた。


「これも……あんたの運命だよ。


女を舐めた代償。忘れるなよ……


二度と、こんな目に遭いたくなかったら」


朱莉は拳をゆっくり下ろし、背を向けた。


黒銀の体は、もう完全に動かなくなっていた。


白目をむいたまま、泡を吹き、完全にダウン。


身体が点滅とともに、ゆっくりと消滅していった。


ホールに、重い沈黙が落ちる。


朱莉は桃華のもとに駆け寄り、強く抱きしめた。


二人は涙を流しながら、笑い合った。


「終わったね……桃華」


「うん……朱莉ちゃん、ありがとう……

一緒に勝てて……本当に嬉しい」


決め台詞の余韻が、二人の絆をさらに強くする。


赤と桃色の光が、優しく二人を包み込んだ。


朱莉は桃華の耳元で、小さく囁いた。


「桃華……これからも、ずっと一緒に……約束だよ」


桃華は朱莉の胸に顔を埋め、頷いた。


「うん……ずっと、一緒……」


二人は長い間、抱き合ったままだった。


屋敷の光が、少しずつ二人を照らし始める。


ゲームは……終わった。


朱莉は桃華の髪を優しく撫でながら、 


心の中で繰り返した。


(桃華……あなたがいたから、私は強くなれた。


これからも、どんな闇が来ても二人で、光を灯して進もうね)


ホール全体が、赤と桃色の柔らかな光に満ちた。


闇は、もうどこにもなかった。

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