第2話 一誠vsカナデ(仮)
指ゲームの表記がちゃんとしてる心配
よろしくお願いします。
「まずはじゃんけんだ。それはさすがに知ってるよな。」
俺はカナデ(仮)に確認をとった。〝イセノ″知らないみたいだったしな。
『私もさすがにそれは知ってますよ。グー、チョキ、パーの指の形で勝敗を決めるゲームです。グーはチョキに勝つけどパーに負ける、チョキはパーに勝つけど、グーに負ける、パーはグーに勝つけどチョキに負けるという三すくみの関係を利用した遊戯ですね。起源は日本の虫拳や中国から伝来したという説があり、日本の武術や漫画やアニメなどのサブカルチャーの降盛によって世界中に広がったとされ……。』
「あああ、分かってるならいいんだ。」
そんな雑学を俺は求めてない。
「勝った方が先行な。最初はグー、じゃんけんぽん。」
俺はパーでカナデ(仮)はグー。先攻は俺。
「俺からだな。普通は技で攻めると思うんだけど、最初だから、数当てする。今から〝いっせいので〟って言ってすぐ数字言うから、お前はそのタイミングで自分の指を上げたい箇所だけ上げてくれ。」
『そのタイミングとは〝いっせいので〟と言ってる最中ですか、言い終わった直後ですか?』
「言い終えた直後、だな。というか、言ってる最中だったら確実に当てられるだろ。」
『その通りですね、それで指は左右、10本とも動かせるのですね。』
「最初はな。」
『基本は今、一誠がしてるようなグーの形ですか?』
「うーん、だいたいそうかな。動く指は基本下げておいて、数当てされるときに上げる感じ。」
『だいたいということは例外もあるのですか?』
ああ、もう。
「お前さ、始める前から質問多いんだよ。やってるうちに慣れろよな。」
『……では、そうすることにしましょう。』
カナデ(仮)はきょとんとして、何が悪かったのか分からないようだった。俺の説明不足っていうのもあるんだろうけど……。初心者に説明するのって面倒くさいな。
さて、気を取り直して。
「じゃあ、行くぞ。」
って言っても最初から当たるわけじゃないし。当てられる自信もないし。カナデがよく上げてた数字にでもしとくか。
「【いっせいのーで〝7〟】」
俺は自分の指をどこも上げずにそう宣言した。カナデ(仮)は上げたのは右の5本すべてと左の親指、人差し指。これって7本上がってるから……。
「当たった!」
『当てられました。』
落ち込むカナデ(仮)を横目に、俺は左手を抜いた。あともう一回当てれば勝ち。勝てる! だけど俺は……。
そう、俺は〝あの技〟で勝ちたかったんだ。
「じゃあ、次はカナデ(仮)の番だ。」
『え、さっきので当てられて終わりでは?』
「え、違う違う。〝イセノ〟は2回当てる必要があるんだ。」
逆にこんなので負けたら、ショックを受けるどころか、ああもう仕方ないなって潔くあきらめられたんだけどな。
「そして1回当てれば左右どちらか片方の手を抜く。両方の手を抜いたら勝ち。だから俺は今、右手しかない。」
『つまり、数当ての選択肢は減ったのですね。』
「そういうことになるな。」
その後、カナデ(仮)は少し考えるように顎に手をおいた。10秒、くらい静かだった。「そろそろ始めろよ。」と俺が言いかけた時、
『じゃあ、行きますよ。』
カナデ(仮)はそう言って、大きく息を吸った。
『【いっせいのーで〝3〟】』
カナデ(仮)は何も上げず、俺は右の親指と人差し指を上げる。
『〝2〟、ですか。惜しいですね。』
「そう簡単に当てさせてたまるかよ。じゃあ、次は俺の……。」
『ああ、ちょっと待ってください。この状況を記録するのに10秒くらいかかるのです。』
カナデ(仮)は右手を広げて、俺が次のターンに入るのを止めた。
「はあ? こんな指4本上げたくらいで?」
『一誠がどういう動きで、どこを上げたのか、映像として記録しようとすると。特に今、一誠の体は植物状態ですから、それにつながっている私の処理速度も少し遅くなっているのです。』
なるほどね。俺の体がヤバいからね。仕方ないよね……ってなるか!
「この先、そんな時間使われても困るんだよ。どっちかっていうとこのゲーム、瞬発力が命、みたいなところあるぜ。」
『とはいっても、今の私では……』
「処理速度が遅いとかなら、別に全部見る必要ないじゃんかよ。それこそ今、上がってるお互いの指の形とそのターンでプレイヤーが何を宣言したとかが分かればいいわけだし。削るとこ削ったら?」
『なるほど! 一誠は天才ですね。』
いや、お前最新式の人工知能なんだろ。それくらい、頭回せよ。
と、何やら天井が明るい。
見上げると不気味な映像? いや、文字と記号の羅列が浮かび上がってくる。
Turn 2
Issei Kanade kari 【〝3〟】
R ○○●●● R ●●●●●
L L ●●●●●
「いや、これ何?」
『私がどう処理したか、投影しました。この方が視覚的にわかりやすいでしょう。』
「は、はあ。」
『1段目がターン数、2段目がプレイヤー名と宣言した数、3段目が指の形を表します。Rがrightで右手,Lがleftで左手に対応し、黒丸、発光は紫ですがそこが指を下げてる箇所、白丸が指を上げてる箇所で、丸は左から順に親指、人差し指と対応しています。そして私が3と言ったので私の名前の右に〝3〟とあるのです。』
「へ、へえ……。」
自慢げに語るカナデ(仮)に俺は困惑した。そして、しきりに天面に投影した数字とアルファベットと丸の羅列を今の互いの指の状態と見比べて、何となく理解した。
「えっと……俺が片手だから、俺の欄には丸が五個しかないのね。なんか、野球の電光掲示板みたいだけど。お前が分かればいいんだ。」
『ではこれで毎ターン処理してますね。もちろん気になる様なら、天面を見なくても結構ですから。』
さて、再度気を取り直して次は俺の番。
「次は、技を使う。本当は技板、技の絵が描かれているプレートを持っている技しか使えないんだけど、今はいいや。さっきみたいに〝いっせいので〟って言った後、数字じゃなくてそのまま技の名前をいうから、お前はさっきみたいに上げたいと思うところを上げてくれ。」
『分かりました。ところで一誠。』
「なんだ?」
『今、楽しいですか?』
「まあまあ……、いや違う。まだ足りない。俺の求めている楽しさはまだ先だからな。」
楽しそうですね。思わず本音がでるくらい。
「何ニヤけてんだ?」
『すみません、いつでもどうぞ。』
「【いっせいのーで〝雨〟】」
一誠は5本の指すべてを上げています。対して私は、右の薬指と小指以外はすべて上げました。
「いま、お前の下げた指は固まって動かなくなる。でも次からのカナデ(仮)のターン、〝手術〟って技を使えば1か所治せる。基本、1ターンに1度だけ、数当てをするか、技を使うか、どっちか1つしかできない。」
『その〝雨〟や〝手術〟はいつでも使えるのですか。』
「そう。あと、〝雨〟の逆で指を上げたところを固めるのが〝晴れ〟だな。」
なるほど。固めるというのが処理表現として必要ですね。点でもつけて表現しますか。
Turn 3
Issei 【〝rainy〟】 Kanade kari
R ○○○○○ R ○○○●●
L L ○○○○○
『了解です。となると、これは攻撃側が有利なゲームですね。1ターンの間〝雨〟や〝晴れ〟で相手の指を固める数は多そうですが、〝手術〟で治せるのは1か所だけ。ゲームバランス的には攻撃しない側にも救済措置はありそうですが。』
「まあ、〝シールド〟で防御できたり、〝最高の手術〟で一気に回復したり、いろいろできるんだけど、全部説明するのは面倒だから、極力使わないでいいか? そうなると俺が有利だから、お前が片手抜けするまで数当てしない、とかでもいいぞ。」
言った後で、強がりすぎたなって思うやつ。
『ご心配なく、これでも私、最新式の人工知能なんですよ。一誠がこのままいっても、負けるつもりはありません。』
しかし、負けず劣らず、カナデ(仮)も胸張って答えた。こいつも強がってるよな。さっきも俺が当ててかなりショック受けてそうだったし。何せ見た目、五歳児だし。
さてそれはそうと、現状、俺が片手で有利。まだカナデ(仮)の動ける指も多い今、次の俺のターンは技で固めて、確実に……。
『では、私のターンです。行きますよ。』
たぶん、カナデ(仮)はこのターン技で攻撃して俺の動ける指を減らしに来る。さっき教えたばっかりだし、俺の指は5本とも動くんだからな。
『【いっせいのーで〝0〟】」
えっ…………。
次回2/28
とりあえずキリいいところまで頑張ります。