第3話 仮と本物
前回の表記法に慣れないと,何やってるか理解できないかも
でも、指ゲームをいかに文章に落とし込むかでいきついた極地みたいなものなので……
なれてほしいです。(改善点などありましたご意見お待ちしております。)
あと,今回からこの表記を境に視点が変わります。
Turn 4
Issei Knade kari 【〝0〟】
R○○○●● R●●●●●
L●●●●●
現在の天面の表示はこんな感じです。
「正直驚いたぜ、技使ってくると思ってたから。」
『どちらかというと、数当てをしたい派なので。それにしても、私の考えはいい線行ってたんですね。ただ一誠は、私が〝晴れ〟を使ってくると予想して当たらないように全部指を下げるものかなと思ったんですが。確かに〝晴れ〟や〝雨〟で固められても3本上げておけば、後で〝手術〟で治せたりしますしね。』
「なんていうか、考えてんだな、お前。」
『一応、最新式の人工知能ですからね。』
そして段々、一誠の思考も読めてきましたよ。おそらく次は――。
「【いっせいのーで〝晴れ〟】」
私の読み通り、技で攻撃してきましたね。一誠はどこの指も上げず、私は右の上3本を上げました。さっきの一誠がやっていたような、リスク回避の形。
すかさず
『【いっせいのーで〝晴れ〟】』
Turn 6
Issei Knade kari 【〝sunnny〟】
R○○○○○ R○○○●●
L●●●●●
……!
俺の指は親指含め、全滅だ。
間を取ることなく攻撃してきた。カナデ(仮)は次もさっきみたいに数当てするのかなと思ってた。だから、あいつの予想もしてなさそうな指の全部上げをしたのだけれど。
「お前、数当てしたいんじゃなかったのかよ。」
『どちらかというと、と注釈はつけましたよ。それはそうと、今までの一連の流れで、一誠の弱点はだいたいわかりました。』
「俺の弱点?」
『一誠はブラフなどに弱いですね。さっきも私が数当てしたい派といったから、数当てで来るかなと思ったでしょ。』
「それはそうだけど……。」
『一誠は嘘をつけない、素直な性格であるがゆえですかね。これならこの後3ターンもあれば、私は一誠、あなたに勝てます。』
カナデ(仮)は笑みをこぼし、勝利宣言。それもそうだろう。俺の指は上がったまますべて固められている。やるべきことはただ一つ。
「【〝手術〟】」
俺はそう宣言して親指を治した。今、俺は1か所しか動かせない。
ここが正念場だ。耐えるしかない。耐えて耐えて耐えて、手術で治して〝あの技〟で確実に……。
『【いっせいのーで〝7〟】』
Turn 8
Issei Kanade kari 【〝7〟】
R●○○○○ R○○○●●
L●●●●●
私カナデ(仮)が3本、一誠が4本指を上げている状態。
『当たりましたね。』
私は5本とも固まって動かない右手を抜きます。
「【〝手術〟】」
一誠はすぐさま〝晴れ〟で固められた人差し指を下ろして、そう宣言しました。少しでも私の数当てが当たらないように、自分の指を治しにいくようですね。
でも……。
『一誠はもう一度、数当てしないのですね。初心者の私に遠慮でもしているのですか?』
「いや、そんなことはない。それに今この状況じゃ、当てに行くよりも治しに行く方が先決だろ。」
『私は一誠が迷うことなく〝手術〟を使ったので指摘しただけなのですが。次に私が数当てで当てれば私の勝ちですし、しかも選択肢は3、4、5の三択。私が当てる可能性は非常に高い。一誠も片手なのですし、相手の不意をついて数当てするという選択肢もあっていいのでは、と考えるのですが。』
「数当てなんて外れれば、そのターン何もしないのと一緒だ。〝手術〟で治した方が確実だろ。」
一誠は不機嫌な表情で答えます。それが普通の思考なのでしょうか? 〝イセノ〟は数あてゲームなのに。それとも一誠自身が、何かこだわりをもって勝負している、そしてそれが……。
『それが、死にかける直前にもトラウマだったのですか?』
少しカマをかけました。あんまり一誠を不機嫌にはさせたくないのですが、私には一誠を生き返らせ導くという目的があります。
「それは……。」
その後の言葉が続かないということは、図星、みたいですね。
『どうしてそこまで確実な勝利にこだわるのです? 何が一誠をそこまで突き動かすのですか?』
「……そんなのどうだっていいだろ。お前のターンだぞ。カナデ(仮)!」
『なら、このターンで私が当てて勝ってもいいんですね。』
「それは……。」
一誠は私から目をそらしました。
『私は一誠の記憶を見れる分だけ見ました。でも私にも見れない記憶だってあるのです。特にカナデさんに関する記憶は……。おそらく一誠自身が記憶に蓋をしてしまっているのでしょう。それに、私が見れるのはあくまで一誠が目で見た映像のみです。一誠が何を考えているのか、私は真に理解していないのです。だから教えてくれませんか? 何が一誠を突き動かしているのかを。』
「――。」
『だめなのですか?』
「――。」
『当ててしまいますよ。』
一誠は静かに、閉ざした口を動かします。
「やれるものならやってみろよ。」
彼は睨みつけながら言いました。ムキになっているだけ? でもその目は死んでいない。
一誠は何かを狙っている?
一誠が動く指は親指と人差し指。私は数当てをすると明言した。ならおそらく一誠は、一番当てられる可能性の高いどちらか一方の指を上げる、ということはしないでしょう。だから今動く指2本ともを上げる、もしくは下げてくるはず。後はそのどっちか、ということですが。
今の彼は保守的です。そういう心情は、おのずと指の上げ方にも表れるはず。〝3〟、くらいでしょう。
しかし、このままいっていいものでしょうか。いや――。
『【いっせいのーで〝10〟】』
Turn 10
Issei Kanade kari 【〝10〟】
R●●○○○
L●●●●●
「は?」
〝10〟なんて、カナデ(仮)が指を全部上げないと、あり得ない数字。でも、目の前のこいつは、1本も指を上げていない。
「お前、ふざけるなよ。」
『私はふざけていませんよ。』
「いいや、ふざけてる。わざと数当てを外したな。手、抜いても勝てるってか。それとも、生き返るって名目で俺をわざと勝たせようとでもしてるのか⁉」
『そんなことはありません。私はいつだって真剣です。』
「ならどうして……」
『このまま勝負に勝ったとしても、一誠は生き返らない。それは私が望む勝ちではありません。一誠が抱えているトラウマを解消して初めて、私にとっての勝ちになる。私のこだわり、と捉えてくれてかまいません。』
「こだわり?」
『そう、そして一誠も勝利に、何かこだわりがあるのでしょう?』
「それは……。」
その後の言葉が続かない。それは説明力が足らないだけじゃなくて、戸惑いがあるんだと思う。こいつに話してもいいのかっていう。
『Operation code 失効の承諾』
「急に何言って……。」
『私の機能を停止させるときの合言葉です。今のカナデ(仮)という名前の後に、そういってくだされば、私のデータそのものは消滅し、仮に外部の人間が私のチップを取り出しても、今ここでしゃべっている内容、私が見た一誠の記憶等のデータを見ることは万に一つ、あり得ません。』
「それってどういう……」
『私が消えれば、秘密にしたい内容は外部に漏れないということです。』
「ちょっと待て。それって、お前が死ぬ、ってことだよな。」
『人で例えるなら、そうですね。』
……意味が分からない。
「なんで俺なんかのために、お前が命を張る必要があるんだよ。」
『正確には命ではないですが、死にかけの一誠を助けるために私は埋め込まれたのですよ。こちらも持てる者すべてをささげるのは当たり前のことです。』
こいつの目は、カナデが「ここぞ」という時に数当てしてくるときの目そっくりだ。
『ここにいるのは私だけです。話してくれませんか。』
カナデ(仮)、なのに。俺を見つめる表情は本物だ。
本気、なんだ。
ここまでされちゃ、恥ずかしいから無理だ、とか言えない。それに、こいつなら分かってくれるかもしれない。
「俺の負けだな。話すよ。」
負けだよっていってるけど続きます
次回3/1
今後もよろしくお願いします。




