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いっせいノーデ!  作者: 乙島仟
第6章 オリエンテーション編Ⅰ
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第101話 崩壊

今まで一誠とノーデの視点しか書いてきませんでしたが、今回はナユユ視点でお送りします。

それでは本編どうぞ。

「冷たっ。」

 目を開ければ薄暗い雲。そこから一つ、また一つと水滴が落ちてくる。

「――雨。」

 今日って一日晴れって朝の予報で言っていたはずなのに。

「私は、確か……。」

 体を起こそうにも地面が揺れてる……。いや、ここは。

「吊り橋、でした!」

 記憶がよみがえってきます。そう、私はこの吊り橋であのフードの人に真っ先に気絶させられて。

 ほかの人は。

「おい九山、何があった? おい!」

 この声は落合君、そして九山君も。無事みたい。

「さっきからだんまりじゃわからねえよ。俺とやった時のあのすごさはどこに行ったんだ⁉」

「弼殿!」

 落合君は思わず九山君の首根っこをつかんで叫んでいます。それを止めに入ったのは千草さんです。彼女も無事で一安心ですが、九山君は明らかにいつもの調子じゃない。

「一体何があったのだ? あのフード男に何をされた?」

「ノーデを、獲られた……。」

 ――⁉

 かすれた声、それに雨でそう見えるのかもしれないですが、泣いているように見える表情。九山君によほどのことがあったのは間違いない。そしてその一言で何が起こったのか、私はなんとなく察せました。ただ、私以外は違います。

「のーで?」

「なんだそれ?」

 落合君も千草さんもノーデさんのことを知らない、だからこの言葉も自然にでてきたんでしょう。でも九山君にとってノーデさんは大切なパートナー、だからこの言葉は痛く刺さる。

「しばらく、一人にさせてくれないか。」

 そう九山君が言い出すのも理解できました。

 ここは事情を知っている私が、何か言わないと……。

「九山君……。」

 私の起き上がった第一声はそれでした。

「戻りませんか。雨も降ってますし、一度宿舎に……。」

「ごめん、ナユユ。」

 九山君は私に一言そういうと、背を向けて歩き出します。

 私は、かける言葉を間違えたかもしれない。

「どこに行くんだ! まずは傷の手当てや運営に文句言いに、宿舎に戻るべきだろ。」

 落合君の言葉など目もくれず、九山君は無言で橋の向こう側に進んでいきます。

「くそっ、あいつ。」

 落合君も追いかけようと前に進もうとして、千草さんが再び制止します。

「まて。一誠殿には拙者がついていく。弼殿は二人を頼む。」

「はあ? お前何言って。」

「女子二人を置いていくのはよくないだろう。またあのフード男のような不審人物が現れた時二人を守れるのは弼殿だけだ。それに弼殿が言うように運営に報告も必要だ。」

「女子っていうならお前も大概だろ。今の九山はあてにしない方がいいぞ。」

「心配してくれるのだな。」

「チームメイトだから当然だろ。」

 なんでしょう、ちょっといい雰囲気かも。落合君はたぶん平常運転なのですが、千草さんはちょっと照れてる? って今はそんな場合じゃありません。

「おほん、だが心配無用だ。スリーが復活したようなのでな。」

 千草さんはそう言って橋の向こう側に目を向けます。そこは九山君が向かっているのと同じ方向、そこに大柄の人が立っています。

「というわけで任せた。」

 千草さんはそういうと九山君の後を追いかけていきます。そんな姿を見て、ふと思います。


 本当なら私が、九山君を追いかけるべきなのではないか、と。


「おい! くそ、どいつもこいつも。近田と尾関山、大丈夫か。」

「私は、大丈夫ですけど。」

 そういえば、尾関山さんは。

「奈湯ちゃん、落合君……。」

 声のする方を向くと、手も足も震わせながら、橋のロープにしがみついている尾関山さんがいました。足からは血が出ています。

「今うち、立てそうにない。」

「だ、大丈夫……なわけないですね。傷の手当て、しなきゃ。」

 私は立ち上がりました。私は一応、このチームのリーダー、こんなところでへたばってちゃいけない。

 私はロープにしがみつきながら、一歩一歩尾関山さんに近づきました。そして彼女の肩を抱えようとするのですが、私一人では力が足りません。

「弼さん、その、肩貸してもらえませんか。私一人じゃ、尾関山さんを抱えられなくて。」

「仕方ねえな。でもその足じゃ、宿舎どころか、湖の小屋も遠いだろ。吊り橋行く途中で見かけた簡易休憩所にいくぞ。屋根とベンチしかなさそうだがな。」

 ああ、私より判断が早いなぁ。

 私と落合君は左右それぞれの尾関山さんの肩を抱え、来た道を引き返し始めます。その間にも雨脚はどんどん強まっていき、足場も悪くなっていきます。

 それでもなんとか、目的地の休憩所までたどり着きました。幸い、水道が通っていて、尾関山さんの傷を水洗いできました。

「土砂降り、ですね。」

「これじゃ、宿舎に戻るのは骨が折れるぞ。」

 そんな中、園内放送も流れてきます。

「オリエン参加者の皆さんに連絡ですぅ。雨が強まってきましたのでぇ、川や湖は避け、マップに表示されている待機場所に移動をお願いしまぁす。」

 マップを確認したところ、ここはその待機場所ではないようです。やはり湖の近くの小屋が一番近そうですね。湖は避けとは言ってますが、あそこは小屋自体は高台にはなっていましたから大丈夫でしょう。

「また現在進行している行事は室内で継続予定ですがぁ、緊急の要件などありましたら運営に連絡をください。皆さまの安全第一ですからねぇ。」

 上戸先輩の園内放送はそれで終了しました。と同時に尾関山さんがつぶやきます。

「こんな行事、まだ続けるんやな。」

「尾関山さん……?」

「奈湯ちゃんすまん、うちはもう無理や。今でもまだ体が揺れて、手足の震えが止まらん。」

 やっぱりそうだ。

 尾関山さんの震えは寒さからではなく、あのフードの人の恐怖からくるもの。たぶん立てなかったのも、震えのせい――。実際私だって思い出すと怖い。今も宿舎に戻って部屋で落ち着きたいとさえ、感じています。

「それって、優勝あきらめるってことか。」

 落合君のこの言葉、なんでしょう。

「優勝って、今そんなこと言ってる場合じゃ。尾関山さんを休ませる方が先決です。」

 そう自分で言いながら、ああ私、いらっとしたんだと理解しました。尾関山さんの気持ちを考えていないような気がして。

「そんなのわかってんだよ。でも、今回の行事はチーム戦、〝イセノ〟だって5人そろわないとできねえ。一人でも欠けたら、そこであきらめろって言ってるのと同じ意味だろ。」

「ですが……。」

「俺は行く前に妹と約束したんだ。優勝して、楽しい話をいっぱい聞かせてやるって。だから、こんな形で終わりたくねえ。」

 その気持ちも、わかります。吊り橋に行く前は私も、優勝を目指していたから。

 だからつらい。

 ただでさえ、九山君や千草さんと離れ離れになったのに、目の前の2人の思いも違ってきている。そして、D2チームのリーダーは私。私が何か方向を示さないとこのままじゃ。


 チームがバラバラになる。


「私は、どうすれば……。」

 そんなときでした、足音が聞こえて。

「D2チームさん、で合ってる?」

「あなた達は――。」


 A1チームさんがやってきたのは。


雨の中の、邂逅――。

次回はいったん設定集,12/21までに更新予定です。よろしくお願いします。



♦♦以下、少し裏話♦♦

いつぞや一誠とノーデの視点しか書かないといったのですが展開上難しくなってきまして。

今までは他人視点=誰か(主にノーデ)がその人の視点に立つという書き方でしたが、今後はその書き方は難しくなりそうです。(視点に立とうにもみんなバラバラだからなあ。)

ということで前書きに誰視点ですと表示しようかなと思います。ご配慮願います。

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