4.推しとの接触により興奮度上昇中
やはり生まれたばかりでは何もできることはない。
今日も今日とて、ベッドで眠りお腹が空いたらミルクを飲んで、眠くなったら眠る。
そして目を覚ましては天井を長め続けていた。
(暇だな…。)
そう思っていた。その時だった。
「マリアンヌ。」
低い声が部屋に響く。
「…!」
身体がピクリと動いた。
特徴的な低い声に私の胸は高鳴り始めた。
そしてーー。
扉が開かれた。
「あなた!」
マリアンヌは嬉しそうに顔をあげる。
「体調はどうだ?」
「もう大丈夫よ。」
「…そうか。」
その低い声の持ち主は部屋の中へと入ってくる。
黒を基調とした衣装に、美しい銀色の髪。
鋭さを感じる赤い瞳。整った顔立ち。
威厳のあるような雰囲気。
どこからどうみても私が
大好きであった『グランディア・アンダーテイル』の
最終敵魔王ことルシファーではないか。
(ちょっとちょっとちょっとちょっと!!)
(え?本物?)
(本物のルシファー様!?)
私の脳の処理が追いついていない間に
ルシファー(推し)が私の方へと近づいては覗き込んできた。
「これが…私たちの娘か。」
「ええ。ラピスラズリよ。」
「ラピスラズリ…」
「いい名前だな。」
小さく微笑みながらそう言う彼に
私は喜びを噛み締めた。
(ぎゃああああ!!)
(推しに褒められるなんてぇ…!!)
『ラピス様。』
そんな中、普段はこちらから呼ぶというのに珍しく
アレクから話しかけてくれた。
『現在、あなたの精神的興奮度が上昇中でございます。』
(それは当たり前じゃない!)
『非常に高い数値を記録しております。』
(だって!!)
(推・し・の)
(ルシファー様だもん!!)
(何十年も、画面の先でしか見れなかった推しが…)
(今、目の前にいるんだもん!!!)
「ふぇ…!」(ひゃあーー!!)
おっと、思わず本音が漏れ出てしまったみたいだ。
そのためか、ルシファー様が首を傾げる。
「ん?起きていたのか?」
「あぅ…」
(やばいやばい!)
(顔がかっこいい!)
(近い近い!!)
前世であれば、私はすぐにスマホを取って
彼の顔を連続で撮っていたと思う。
うぅ…。今スマホがないのが悲しいが。
でも、今は推しが目の前にいる。
そして私を見ている。それだけでも幸せ。
「…小さいな。」
そう言いながら優しく人差し指で私の頬に触れた。
「…!」
今…今、推しが私に触れた…!?
(ひゃああああ!!)
『精神的興奮度再び上昇中。』
(だって推しなんだもん!!)
『分かっております。』
(なんで知ってるわけ!?)
『あなたの前世のデータを所持しておりますので。』
(恥っず…。)
私とアレクが会話をしている間に
ルシファーは見続けていた。
「私に似ている所はあるか?」
それにマリアンヌは笑う。
「青い瞳は私と一緒で、
銀色の髪や雰囲気はあなたと一緒ね。」
「そうか。」
ルシファーは嬉しそうに笑う。
すると、ルシファーはいきなり私を抱っこし始める。
突然のことに脳の処理がまたまたできていない間に
ルシファーははっきりと言った。
「ラピス」
「私はお前の父親だ。」
「……!」
「これから先、何があったとしても
俺がお前を守ってみせよう。」
「……!!」
なんてかっこいい言葉なんだろう。胸がキュンとした。
原作では、妻であるマリアンヌを失い絶望する。
そして闇堕ちをしていき魔王になってしまう。
最終的には、世界の敵となって
勇者の前に立ちはだかる存在になる。
けれど今は、妻であるマリアンヌは生きている。
そして愛娘であるラピスラズリもいる。
そんな二人がいるからこんなにも幸せそうな顔をしている。
(この笑顔を守ってみせるから。)
(絶対にあなたを魔王にしたりはしない。)
私は手を伸ばしてルシファーの指をぎゅっと握った。
「…!」
ルシファーは驚いたように目を見開く。
「私の指を…」
マリアンヌは嬉しそうに微笑む。
「まぁ…!きっとお父様のことが分かるのよ!」
ルシファーは少しの間呆然としていたが
やがて
「可愛いな…」
と小さく笑った。
『精神的興奮度が上昇しております。』
(だって…)
(今、推しが幸せそうにしているんだもん。)
推しの幸せそうな様子を見ながらも
私は絶対に推しの幸せにしようと。心に強く刻んだ。
そうしているとーー。
「ラピス?」
マリアンヌがルシファーの隣から顔を覗かせた。
「今日は、随分とご機嫌ね。」
「…あぅ。」
マリアンヌがやってきて優しく頬を撫でてくれた。
(マリアンヌ…。)
マリアンヌの顔をじっと見つめる。
(絶対にこの人も死なせない。)
原作では、この人はラピスラズリの目の前で死んでしまう。
その出来事が大きな変化が起こってしまう。
けれどーー。
(今回は違う。)
(この私がいるから…。)
私はまた小さな手を動かした。
「まあ!」
「ラピス、手を動かせるようになったの?」
「…あぅ!」
嬉しくなってまた手を動かしてみる。
すると、小さな手が持ち上がる。
(やった!)
(昨日より動く!)
そう思っていると…
ピコンッ!と電子音が響いた。
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