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2.アナウンサーからアレクに改名

ーーそれから。

推しを幸せにしてみせると誓ってから何日か経った。

ラピスラズリとして生きていく毎日はとてつもなく、

穏やかであった。

いや、穏やかというよりも"暇"の方かもしれない。

ベッドの上でふかふかな毛布に包まれながら

ずうっと、部屋の天井を眺めるだけであった。


二十六年間生きてきた私にとっては

赤ちゃんの生活はあまりにも暇であった。


朝起きて、お腹がすけばミルクを飲んだり

お腹いっぱいになって眠ったり。

それを往復していた。


赤ちゃんとはこんなに何もできないんだな。

身体も自由に動かすこともできないし、

手を伸ばそうとしてもぷるぷるとして震えるだけ。

足を動かそうとしても布団の中でモゾモゾするだけ。


ゲームしたい。けれどできない。

ライトノベル読みたい。読むことなんてできない。

立ち上がりたい。まだ生まれたばかりなので不可能。

「ふぇぇ…」

思わず情けない声が出てしまう。

するとーー。

「あら?どうしたの?ラピス。」

マリアンヌがすぐに隣に駆け寄ってくれた。

そしてそっと私を抱き上げた。

「寂しくなったのかしら?」

「ふぇ…」

マリアンヌの胸に頬をつける。

柔らかくて温かくてとても安心する。

(お母さん…)

ゲームでは亡き人であったが

今は、こうやって抱っこしてもらっている。

本当に存在しているんだと実感する。

「今日も元気ね。」

「あう…」

「ふふ。何かお話しているの。」

違うよ。お母さん。

私見た目は赤ちゃんだけど中身は二十六の女なんですよ。

そう言いたくても

「あう…」と赤ちゃんの声しか出せない。

けれど、マリアンヌは愛おしそうに見る。

「ふふ。今日も可愛いわね。」

その言葉に心が温かくなる。

「お母さんはずっと傍にいるからね。」

(…うん。)

(私もお母さんを守ってみせるから。)

まだ、歩くことも走ることも話すことも戦ったりすることも

できない赤ちゃんだけれど

いつか絶対に強くなってみせる。

(そのために今は…いっぱい寝よう。)

そう思っていると瞼が重くなっていく。

あ…また寝るのか。

(とりあえず寝よう。)

マリアンヌの腕の中で私は欠伸をした。

「あら、眠くなってきたのね。」

そのまま優しくベッドへと寝かされ

布団を優しくかけてくれて、額を撫でてくれた。

「おやすみなさい、ラピス。」

「スゥ…」

私は静かに眠りについた。

────

ーーそしてラピスラズリが眠りについている間。

「……」

真っ白な空間の中に私の意識だけが浮かんでいた。

ただどこまでも続く世界。

「また、ここにきた。」

眠っている間は、私の意識がこちらの空間へと飛ばされる。

「お目覚めになりましたか。」

いつものようにあの無機質な声が響いた。

「うん。」

ラピスーー。麻衣子は頷いた。

「ねぇ、アナウンサー」

『はい。』

「あなたって名前ないの?」

『私はシステム上、固有の名前を設定しておりません。』

「そっか…。」

「でもさ、これからずっとアナウンサーって呼ぶの

面倒なのよ。」

「名前つけていい?」

『構いません。』

私は少し考えた。

そして、あっ!と閃いて口にした。

「じゃあ、アレク!」

『アレク…ですか?』

「そ!」

「ほら、あるじゃない。アレ〇サってやつ。」

『前世の音声アシスタントを参考にした名称ですね。』

「そうそう、だからアレク!」

『……。』

「もしかして嫌?」

『問題ありません。』

「やった!」

何もない空間の中で私はガッツポーズをした。

『では、名称設定を開始します。』

《旧名称:アナウンサー》

《新名称:アレク》

《命名登録を実行しました。》

ピコンッ!と電子音が聞こえた後

『命名登録が完了しました。』

「じゃあ、これで名前はアレクね!」

『はい。』

「これからよろしくね!アレク!」

『こちらこそよろしくお願いします。ラピスラズリ様。』

「名前長いからラピス様でいいよ。」

『承知しました。ラピス様。』

こうして、アナウンサーからアレクへと改名した。

「ねぇ、アレク」

『はい。』

「これから、色々と教えてね。」

『もちろんです。』

「私、絶対に推しを幸せにしたいから。」

『そのためには回想(リコレクション)を

上手く活用してくださいね。』

「はーい!」

白い空間の中で明るい声が響き渡る。

やがてーー。

『そろそろ覚醒時間です。』

「ん?」

『ラピス様がそろそろ起きられるようです。』

「寝たら、また会える?」

『はい。』

「じゃあ、またねー!」

『はい。またお会いしましょう。』

その言葉を最後に、白い世界が遠ざかっていく。

それからーー。

「ふえ。」

目が覚めてゆっくりと目を開ける。

見覚えのある天井が映った。

そして横を見てみると

「あら、起きたのね。ラピスラズリ。」

優しく微笑むマリアンヌがいた。

私は小さく笑った。

読んでいただきありがとうございました。

良ければ評価よろしくお願いします

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