第73話 完全固定――揺れなき存在との対峙
動けない。
―――
空間そのものが“止められている”。
「……っ!」
指一本すら動かない。
俺――アルクの周囲は、完全に“固定”されていた。
―――
「――排除」
その一言。
感情のない、絶対の宣告。
―――
上位存在。
その“本体”。
―――
形はない。
だが。
「……全部、あれか」
空間そのものが敵。
―――
「アルク……!」
リナの声。
だが。
そちらも固定されている。
―――
「……まずいな」
―――
完全に。
手も足も出ない。
―――
だが。
―――
「……止まってるだけだ」
―――
思考は動く。
―――
「なら」
―――
“内側から変える”。
―――
錬金術。
―――
だが。
―――
「……弾かれる」
―――
完全拒否。
―――
「……やっぱりそうか」
―――
なら。
―――
「作るしかない」
―――
外じゃない。
―――
“内側”。
―――
自分の中に。
―――
「定義を置く」
―――
その瞬間。
―――
わずかに。
―――
“動く”。
―――
「……っ!」
―――
指先が、ほんの少し。
―――
動いた。
―――
「……いけるな」
―――
その瞬間。
―――
さらに圧が強くなる。
―――
「……抵抗確認」
―――
「強制固定、強化」
―――
空間がさらに硬くなる。
―――
だが。
―――
「関係ない」
―――
少しずつ。
―――
動かす。
―――
「……アルク」
リナの声。
―――
「見えてる」
―――
「……何が」
―――
「“ここ”」
―――
一瞬。
―――
流れが繋がる。
―――
「……分かった」
―――
一点。
―――
「そこか」
―――
“固定の核”。
―――
「行くぞ」
―――
「うん」
―――
その瞬間。
リナが無理やり流れを繋ぐ。
―――
「……っ!」
―――
その代償。
―――
リナの体が震える。
―――
「やめろ!」
―――
「大丈夫!」
―――
強い声。
―――
「まだいける!」
―――
その瞬間。
―――
“動ける”。
―――
完全ではない。
だが。
―――
「十分だ」
―――
一歩。
踏み込む。
―――
空間が軋む。
―――
「……異常」
上位存在が言う。
―――
「許容外」
―――
その瞬間。
―――
さらに強い固定。
―――
「……っ!」
―――
膝をつく。
―――
重すぎる。
―――
「……アルク」
―――
リナが崩れそうになる。
―――
「やめろ」
―――
「まだ……!」
―――
その声。
消えかけている。
―――
「……十分だ」
―――
その瞬間。
―――
決める。
―――
「ここからは俺がやる」
―――
「……アルク?」
―――
「一人でいい」
―――
一歩。
前へ。
―――
「――単独干渉」
―――
錬金術。
―――
今までとは違う。
―――
“完全な定義”。
―――
「……何だそれは」
上位存在が言う。
―――
「俺だ」
―――
一歩。
踏み込む。
―――
「俺が定義だ」
―――
その瞬間。
―――
空間が“割れる”。
―――
完全固定に、亀裂。
―――
「……不可能」
―――
「可能だ」
―――
「ここにいるからな」
―――
その瞬間。
―――
一気に踏み込む。
―――
核へ。
―――
「……っ!」
―――
あと少し。
―――
だが。
―――
「――最終固定」
―――
空間が閉じる。
―――
完全に。
―――
「……止まった」
―――
あと一歩で。
―――
「……アルク!」
リナの声。
―――
振り向く。
―――
リナが立っている。
―――
震えながら。
―――
「……一緒に」
―――
その言葉。
―――
もう止められない。
―――
「……無茶するな」
―――
「一人じゃない」
―――
その言葉。
―――
すべてだった。
―――
「……分かった」
―――
手を取る。
―――
その瞬間。
―――
流れが重なる。
―――
「……これなら!」
―――
再び。
―――
動ける。
―――
「行くぞ」
―――
「うん!」
―――
二人で。
―――
最後の一歩を踏み込む。
―――
その瞬間。
―――
完全固定が。
―――
“崩れ始める”。
―――
「……崩壊」
―――
「定義、破綻」
―――
上位存在の声。
初めて。
―――
“揺れる”。
―――
「……次で終わりだ」
―――
最終決着が、目前に迫る。




