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第31話 動き出す準国家と、見え始める戦場

エルドラは、変わった。


ただの街ではない。

王国の一部でもない。


“準国家都市”。


その言葉が、すでに周辺に広がり始めていた。


「噂の広がりが早いな」


俺――アルクは市場を歩きながら言った。


ロイドが苦笑する。


「そりゃそうだ」


「王国が認めた時点で、ただ事じゃない」


セリナが肩を回す。


「で?」


「次は何が来る?」


その問いに、俺は少しだけ空を見た。


「二つだな」


一拍。


「一つは軍」


「もう一つは――」


少しだけ間を置く。


「露骨な嫌がらせ」


セリナが笑う。


「後者はもう来てるな」


―――


その日の昼。


エルドラ南門。


「来たぞ!」


兵士の声。


整列する部隊。


王国軍。


だが今回は違う。


規模が違う。


装備が違う。


「……本隊か」


セリナが低く言う。


リナが少しだけ緊張する。


「また戦い?」


「いや」


俺は首を振る。


「今回は味方だ」


前に出てきたのは、あの男。


「久しぶりだな」


レオニス。


王国第三軍団長。


「約束通り、来た」


その一言で分かる。


これは“監視”じゃない。


「協力だ」


―――


軍の導入は、すぐに始まった。


兵站の再編。


補給ラインの最適化。


拠点の配置。


そのすべてに、俺の錬金術が組み込まれていく。


「……これは」


レオニスが呟く。


「戦争が変わるぞ」


その言葉は重い。


だが事実だ。


「効率が違う」


ロイドが横で言う。


「無駄が消えてる」


「兵の疲労も減る」


エリシアも頷く。


「持久戦に強くなるわね」


つまり――


「価値が跳ね上がる」


それは同時に。


「狙われる」


ということでもある。


―――


その日の夕方。


問題はすぐに起きた。


「アルク様!」


職人が駆け込んでくる。


「鉄の供給が止まりました!」


沈黙。


ロイドの表情が変わる。


「どこだ」


「北の鉱山です!」


「……やられたな」


セリナが舌打ちする。


「クロードだ」


完全に分かりやすい。


物流の根本を止めに来た。


「どうする?」


ロイドが聞く。


俺は少しだけ考えて――


笑った。


「なら作るか」


「……は?」


「鉄を」


沈黙。


リナが目を丸くする。


「え?」


「錬金術で?」


「そうだ」


一拍。


「鉱山がなくても、資源は作れる」


ロイドが小さく笑う。


「……マジか」


セリナが笑う。


「頭おかしいな」


「褒め言葉として受け取る」


―――


その夜。


試作はすぐに始まった。


炉の中。


赤く輝く金属。


「……できた」


俺は静かに言った。


純度の高い鉄。


天然以上。


リナが目を輝かせる。


「すごい……」


ロイドが呟く。


「これ、もう止められないぞ……」


その通りだ。


クロードの手は、ここで折れた。


「資源封鎖は無意味になる」


セリナが笑う。


「ざまぁだな」


―――


同時刻。


クロードの屋敷。


「……は?」


報告を聞いたクロードの顔が、初めて歪んだ。


「鉄を……作った?」


「はい……錬金術で……」


沈黙。


数秒。


そして――


「はは……」


笑い出す。


「面白い」


だが目は笑っていない。


「なら次は」


一拍。


「もっと“人間側”を壊す」


完全に本気だ。


―――


夜。


温泉。


今日は少し違う。


空気が柔らかい。


リナが隣に座る。


そして、自然に寄ってくる。


完全に密着気味。


「……アルク」


「ん?」


「今日もすごかった」


素直すぎる。


「そうか?」


「うん」


そのまま、さらに寄る。


柔らかい。


温もり。


距離が近い。


かなり近い。


「……ねぇ」


小さな声。


「こういうの」


一拍。


「独り占めしたい」


一瞬、止まる。


「それは難しいな」


「なんで」


「街もあるからな」


リナが少しだけ不満そうな顔をする。


でも。


すぐに笑う。


「……じゃあ」


一拍。


「今だけ」


そのまま、強く寄りかかってくる。


完全にくっつく。


その時。


ツルッ。


「きゃ!」


もう様式美だな。


抱き寄せる。


距離ゼロ。


完全密着。


今日はかなり長い。


離れない。


リナも離れない。


「……アルク」


「はい」


「これ」


一拍。


「ほんと好き」


「どっちが」


「全部」


素直すぎる。


少しだけ笑った。


そのまま、静かな時間。


珍しく――


セリナが来ない。


そのまま、数秒。


穏やかな時間が流れる。


―――


エルドラは。


“戦場”に立った。


次は――


「人」


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