表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/51

第27話 揺さぶられる都市と、守るための距離

エルドラの“強さ”は、明確だった。


物流。

経済。

人の結束。


どれも他の都市を上回っている。


だが――


「弱点もある」


俺――アルクは会議室でそう言った。


ロイドが頷く。


「分かっている」


セリナが腕を組む。


「分かりやすいな」


リナが少し不安そうに聞く。


「弱点って……?」


一拍。


俺は答えた。


「法と権力」


沈黙。


エリシアが静かに補足する。


「エルドラは“独立都市”扱いだけど」


「法体系はまだ完全じゃない」


「つまり」


ロイドが続ける。


「正式な保護が薄い」


それが意味するのは――


「外から“合法的に潰せる”」


空気が重くなる。


セリナが笑う。


「なるほどな」


「力で来ない理由はそれか」


そう。


クロードは分かっている。


武力で来れば王国との問題になる。


だが。


「制度で潰す」


それなら問題にならない。


―――


その日の昼。


エルドラ市場。


いつも通りの賑わい。


だがそこに、異質な集団が現れた。


「王都監査官だ!」


声が上がる。


複数の役人。


書類を持ち、無表情で動く。


「営業許可証の提示を」


「税記録の提出を」


「契約書の確認を行う」


一気に空気が変わる。


商人たちがざわつく。


「なんだ急に!?」


「聞いてねぇぞ!」


ロイドが顔をしかめる。


「来たな」


俺は小さく息を吐いた。


「クロードの手だ」


エリシアがすぐに前に出る。


「私が対応する」


だが――


「無駄だ」


後ろから声。


振り向く。


クロードだ。


優雅に歩いてくる。


「これは“正規の監査”だ」


「止める権限はない」


完全に合法。


完全に正しい。


だからこそ厄介。


「どうする?」


セリナが低く聞く。


「叩くか?」


「ダメだ」


俺は即答した。


「ここで衝突したら負ける」


リナが小さく言う。


「でも……このままだと」


その通りだ。


このまま続けば、エルドラの活動は止まる。


書類不備。

規制違反。

許可停止。


いくらでも理由は作れる。


「アルク」


ロイドが言う。


「どうする」


その問いに、俺は少しだけ考えた。


そして。


「作る」


「?」


「法を」


沈黙。


セリナが笑う。


「……なるほどな」


「対抗するのか」


「そう」


逃げない。


潰される前に――


「上に行く」


―――


その夜。


温泉。


だが今日は、少し静かだった。


リナが隣に座る。


そしてすぐに寄ってくる。


完全に自然な動きになっている。


「……アルク」


「ん?」


「大丈夫?」


昼のことだ。


「正直に言うと」


一拍。


「面倒だな」


リナが少しだけ笑う。


「それだけ?」


「それだけ」


でも。


その後に続ける。


「でも負けない」


沈黙。


リナの手が、そっと俺の腕を掴む。


「……うん」


そのまま、少しだけ寄りかかる。


柔らかい感触。


温もり。


距離が近い。


かなり近い。


「……ねぇ」


小さな声。


「私も手伝う」


「何を?」


「アルクのこと」


一拍。


「支える」


まっすぐな言葉。


少しだけ、間を置いて答える。


「もう十分だ」


「足りない」


即答。


「もっとする」


その勢いに少しだけ笑った。


その時。


ツルッ。


「きゃ!」


はい来ました。


抱き寄せる。


距離ゼロ。


完全密着。


今日はいつもより長い。


離れない。


リナも離れない。


「……アルク」


「はい」


「こういうの」


一拍。


「嫌じゃない」


「知ってる」


「言わせないでよ!」


でも笑ってる。


そのまま、少しだけ顔が近づく。


かなり近い。


その瞬間――


バシャッ!!!


「混ざれ」


セリナだ。


「お前マジで空気読め!!」


「いいとこだったのに!」


セリナが笑う。


「分かりやすすぎるぞお前ら」


―――


同時刻。


クロードの屋敷。


「どうでしたか」


部下が問う。


クロードはワインを揺らしながら言う。


「順調だ」


「エルドラは“ルール”に弱い」


一拍。


「すぐに崩れる」


だが。


その目はわずかに細くなる。


「……普通ならな」


―――


別の場所。


ミレイアが一人で立っていた。


夜の街。


静かな空気。


「面白い」


小さく呟く。


「どう動くの、アルク」


その声には、敵意だけではない何かが混ざっていた。


―――


エルドラは、次の戦いに入る。


それは。


力でも、金でもない。


「制度の戦い」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ