095.「」
我ながら本当にお粗末で、間の抜けた話だと思う。
もとはレドックスに対抗するために宛てにしたのがイズンだったはずなのに。結果はその真逆で、イズンと命懸けで戦い、救い出してくれたのがレドックスなのだから。
そしてその出来事こそが、今現在の不可思議な関係へと結び付いている。
「じゃあナンダ、結局キンタマに全部ゲロっちまったのかよ?」
「そうね、おおよその流れというか……。大体のことはお話しました」
聞いてきたのはレドックスだ。
小膝を抱え、不貞腐れたようにアルメリアが答えると、小馬鹿にしたように鼻で笑われる。
「カッ、さんざん浅知恵ひねってやがったクセにそのオチか。冴えねぇな」
「仕方ないでしょ。だってまさか、あんなことになるだなんて思わなかったんだもの」
待ち合わせてから移動した先は、かつてレドックスが寝床にしていたという洞穴だ。切り立った岩肌にぽっかり口を空けているもので、まず誰も近づかないし、一緒にいるところを目撃される心配もない。
『たしかに、ここでならゆっくり話せそうね』
それで今ではすっかりお馴染みとなっていた。
森で落ち合ってからここまで徒歩で移動し、壁際の定位置に並んで腰を下ろす。
そうして二人、気ままに言葉を交わすことが。
ひとまず此処に着くまでに、何があったかは話し終えたところだ。
祝勝パーティに参加していたところ、アクシデントがあって頭から酒を浴びてしまい卒倒。ライナルトに救護された成り行きで、ひと通りは事情を明かすことになったと、事の次第と顛末を。
といっても、かなりハショった。
声が出なくなったとか、聞いてないけどたぶん大事なところも見られてしまっていることとか。そんなのはどうでもいいのでオールカットさせてもらっている。
打ち明けたのは、あくまで話の大筋と肝要なところだけだ。
でもそれでライナルトには十分伝わったことだろう。
なぜこんな密会のような形で、アルメリアとレドックスがコソコソ顔を合わせているのかと。
そして――。
なぜアルメリアがポーション屋なんか始めることになったのか、その理由も。
「だが道理でな。さっきから酒クセェわけだ」
「え、ウソ!? 匂うの!? 友だちは大丈夫って言ってたんだけど……?」
「あーぁ、プンプンだぜ。あれだ、ラムだろ。甘ったるいったらねぇからな」
「当たってる……」
腕や服にもう一度、鼻をスンスンしてみるけど、アルメリアとしては無臭だ。
「ぜんぜん分からないけど……。さすがは狼の嗅覚ってことなのかしら」
「カカカッ、鼻ほじるより楽勝だぜぇー!」
なんかわりと喜んでいた。
証拠に尻尾がフリフリと横に振られている。
ちなみにレドックスはお酒もそこそこ好きだ。
だからだろう。
「ついでにまだ、他にも匂うんだよなぁ」
アルメリアがぶら下げてきた布袋をシゲシゲと見やり、ベロリと舌舐めずりをする。
「はいはい、正解ですよ。ちゃんとレドの分も貰ってきてるから」
お察しの通り、中身はパーティの余り物を分けてもらったやつだ。
お酒もビン単位で幾つかあって、アルメリアが取り寄せるとガチャリと良い音を奏でる。
「でも、そのまえに」
だらしなく伸びてきた手から、それらを遠ざけつつアルメリアは言った。
「お薬、ちゃんと飲んでからね」




