表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

後編

バレンタインデー当日。

彼との連絡を取らなくなって、数日。

今日は、平日だし、何事もなく過ぎ去って行くだろうな…。


私の周りは、ハートを飛ばしてたり、友チョコ・義理チョコを配る女の子達で溢れてる。

そんなイベントを遠巻きで傍観していた。

平和そのものですね。

何て、さも自分は関係ありませんよっと、素知らぬ顔をして見ていた。


「安部。お前からは?」

突然クラスの男子が声を掛けてきた。

「は?何で私が、あげなければいけないのよ!」

咎めるような声が出てしまった。

悪気があって言った訳じゃない。これは、只の八つ当たりでしかないことは、わかってるんだ。だけど、心はそうもいかないみたい。

「えっ、あっ、ごめん」

その男子は、驚いてタジろいだ。

「こっちこそゴメン。私、持って来て無いから…」

申し訳ない気持ちで一杯で、そう言葉にした。

「うん、じゃあ…」

彼は、そう言って去って行った。



何やってるんだろう。

自分で自分がイヤになる。

もういいや、今日の授業は終わってるし、帰ろ。

私は、鞄を掴むと教室を出た。

あちらこちらで、告白してるから、目のやり場に困るが、兎に角学校の外に出たかった。

ハァー、リア充だらけ…。

そう思いながら、帰路についた。



家の最寄り駅を出て歩く。

何処を見てもバレンタインの飾り付け。

この飾りも、今日までだよね。早いところは、ホワイトデーの飾りになってるし…。

何て思いながら、商店街を歩いて行った。


家の前に、誰か立ってる。まさか、不審者?

怖いけど、恐る恐る近付いてい行くと、彼だった。

何で、居るの。

今日は、バレンタインデーだよ。

あの彼女と一緒に過ごすんじゃないの?

足が止まり、彼を凝視していた。

彼が、こちらに気付き振り向いた。

視線が絡む。

イヤ…。

会いたくなんか無い。

そう思った瞬間、私は踵を返し、走り出していた。


「美憂!待って!!」

彼は、そう言って追ってきた。

「イヤだ、来ないで!!!」

私は、拒否し、全速力で走ってるのに彼の足は、予想以上に速くて、気付けば、腕を捕まれてた。

「イヤ。放して!」

私は、解放して欲しくて、捕まれてる腕をブンブンと振り回す。

…けど、なかなか外れず逆に力強くなるだけだった。

「なぁ、美憂。俺の話し…「聞きたくない!」」

私は、彼の言葉を遮るように言う。

こんな態度を取れば、お子様だと余計に思うだろう。

それでもいいって思った。

彼が、私の方を向いてないのわかってたから…。

「美憂!!」

彼の声が、何時もより、幾分か低い。

怒ってるのがわかる。

どうしたらいいのかわからない。

「聞きたくない!さっさと、あの人の所に行けばいいでしょ!!」

私は、子供のように叫んだ。

もう、どうだって良いんだ。

付き合ってる間、一度も口にしてくれなかった。

たった一言なのに、彼の口から聞けなかった。

それもあって、自分だけが彼を好きなんじゃないかって、思ってたから…。

潮時なのかもって、思ってたんだ。

私の言葉に彼のてが放れた。

私は、解放されて、再び全力で走り出した。

「ちょ…待てって、美憂」

彼も気付き追いかけてくる。


ハァ…ハァ…。

何で、追ってく来るのよ。

私なんか忘れて、彼女の所に行けばいいじゃんか…。

今まで我慢してきたものが、込み上げてきて頬を濡らす。

何で、今更、私なんかを追ってくるの…。



再度捕まり、向き合う。

イヤだ見て欲しくない。

私は、彼から顔を背ける。

「美憂…」

彼が、切な気な声で名前を呼ぶ。

「私なんか構ってないで、あの女の人の所に行けばいいじゃん!」

子供っぽい言い草。

ほんと、イヤになる。

「何の事?」

こんな時でも、惚けるんだ。私を子供だと思って、甘く見てるんだ。

「私より、彼女の方が総司には、お似合いだよ。お子様な私なんかといて、可愛い彼女の所に行けばいいじゃん。彼女、待ってると思うよ」

私は、涙を無理矢理止めて、笑顔を向けてそう言った。

いまいち上手く笑えてる気はしない。でも、今の私に出来るのって、これぐらいだから…。

「早く、行ってあげて…」

早く行って、涙が溢れる前に…。

好きな人には、泣き顔よりも笑顔の私を覚えてて欲しいから…。

「美憂?何を勘違いしてるんだ?彼女って、誰の事だ?」

真顔で聞いてくる彼。

まだ、しらばっくれるの?

私は、腹を決めた。

「先週の木曜日午後七時頃。商店街を可愛い女性を連れて歩いてる総司を見ました。とても楽しそうにして、腕を組んでたから、声もかけれなかった。その女性が、今の総司の彼女なんでしょ。私なんかどうでもいいじゃない。可愛い彼女の所に行きなよ、私の事なんて、ほっておいて!!」

私は、一気に言い切った。

自分の感情をさらけ出すように…。

可愛いげが無いとは思うけど、言わないとわからないなら、言うしかないじゃん。

私の言葉に彼は考え込む。

手は、放してもらえない。

「えっ…あぁー。うんとあの日…あの日はあいつの誕生日でプレゼントせがまれて…見てた…の」

彼の動揺が見てとれる。

あいつって、彼女でしょ。

「あれ、俺紹介してなかったっけ?一つ下の妹とだよ。てっきり、紹介してたもんだと思い込んでた」

苦笑交じりでそう言う、彼。

いも…うと?

はっ、そんなの信じられるわけ無いじゃない。

だって、あんなにも密着してたんだよ。無理に決まってる。

「美憂。…美憂は、信じてくれないのか?」

切な気な目で、私をジッと見てくる。

「信じられるわけ無い。あんなに寄り添ってたら、信じろって言う方が難しい」

親密な関係じゃなきゃ、あそこまで引っ付かないでしょ?それ出来るのって、彼女以外の何者でもないじゃない。

「美憂…。どうしたら、信じてくれるんだ?俺には、美憂だけだよ。今日、美憂の所に来たのも、美憂の様子が可笑しいと思ったから、直接会って、話しをしようと思ってたんだよ」

さっきと違って、不安げな表情。

なんで、なんでそんな顔をするの?

私が、悪い事したみたいじゃない。

「メールしても送信エラー。電話しても着信拒否、ラインもそう。こんな事一度も無かったから、焦った。俺が、何かしたんだろうかって…。ずっと考えてて気付けば、仕事にも身が入らずにミスばっかり。情けないよあ。美憂の行動一つで、自分が一喜一憂して…」

彼は、悲しげな顔でどうしたらいいのかわからないって顔をして、私を見る。

「美憂…。不安にさせて、ごめんな。もっと美憂との時間を作るから…。許して」

今にも泣き出しそうな顔で、彼は言う。そんな顔で見られたら認めざる終えないよ。

「私こそ、ごめんなさい。ちゃんと聞けばよかった」

私は、俯きながら言葉を紡いだ。

「美憂……」

彼は、私の名前を呼ぶと腕の中に閉じ込める。

「…好きだよ」

耳元で、聞こえるか聞こえないかの声で彼が囁く。

えっ…。

驚いて、顔をあげると彼が、至極真面目な顔で言った言葉。

それは、私が、ずっと欲しかった言葉で、まさか言われるなんて思ってもみなくて、あたふたしてしまう自分が居て…、なんだか落ち着かない。

「美憂、顔真っ赤」

彼がクスリと笑う。

もうやだ。私は彼の胸に自分の顔を押し付けた。

「ごめんな。ずっと言えなかったんだよ。恥ずかしいのと言い過ぎて安っぽくなるのがイヤで、ここぞって時だけに使おうって決めてたんだ。自己満足かもしれないが、美憂にとっては、不安でしかなかったよな」

彼は、私の頭を撫でながら言った。

私は、首を横に振った。

今、言ってくれた事で、私は安心してる。


「それよりも美憂。俺のチョコは?」

突然聞かれて。

「ごめんなさい、チョコ無いの」

私は、正直に言った。

「総司、去年は沢山もらってきたから、私からは無くても良いかな…なんて思って…」

一様、言い訳もつけてみた?

「去年の美憂を見て、今年は誰からも貰ってないんだ。美憂がくれないんなら、今年は無しになるんだけどね」

えっ…。

その言葉に驚きを隠しきれなかった私に。

「何てね。本当は、もらったよ。弟君経由で俺の手元にな」

悪戯っぽい笑みを見せる彼。

何で?

あの子ってば、食べなかったんだ。

「弟君、こんな事いってたぞ“俺じゃあ、これ食べれませんから”だって…。これ、見るからに俺用だろ」

えっ、あっ…。

驚きを隠せない。

「ありがとうな」

彼は、とろけそうな笑顔で言う。

うっ……。その笑顔、反則だよ。

「このまま夕飯食べに行くか?」

彼の優しい声に素直に頷いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ