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人には裏がある

「えー。私の名前は川上勇気といいます」

その男は猫背でぼさぼさな髪で目が見えているのかわからない髪型をしており、落ち着かないのか指を触っている。


そんな私は今日は高校に入って初めてみんなと対面し、自己紹介をしている。


「なんか怖いね…」

ぼそぼそ声と怪しい風格からか、みんなからは気味悪がられていた。


たしかどっかの研究によると外見で55%の印象を与えるらしい。それと話し方が38%の印象を与える。つまり私はその両方が最悪の評価なのだろう。


でも問題はない。気味悪がられていい。なぜなら私はクラスの人気者になるのが目的ではない。ただ高校に行って、卒業し、大学に行く。そして就職する。そんな平穏を望んでいる。私が望む平穏には人気者なんかなる必要がない。目立たなく、過ごす。誰の記憶にも残らないし、残ったとしてもそんな奴居たなーくらいの平穏な日常を求めている。



「えー。趣味はあんまないです。えー。よろしくお願いします」


落ち着かない顔は周りを見渡す。いや。おどおどしていると言ったほうがいいのだろう。


私が言い終わるとクラスの人は拍手をする。


拍手が終わると、すぐに後ろの人が立ち、自己紹介を始める。


「桐生大地です。趣味はサッカーです。一応サッカー部に入ってます。あ!マネージャー募集中です!」

といかにも人気者って感じの雰囲気がする話し方、そしてツーブロックの髪型。印象は完璧な奴だった。


みんな自己紹介している中、私はボーっとしていた。正直他人には興味はない。どーでもいい。


「自己紹介は終わりましたね。では周りで話し合ってください。よーいスタート!!」


そんな声が聞こえたが私は、寝る構えをしていた。話すことなんてないし、そんなの私以外と勝手にやってください。



「さっき言ったと思うけど桐生って言うんだ」


「佐藤です」


「よろしくね」


「おお。よろしくお願いします。であの…突然なんですが特技してもいいですかね?」


「え?いいけど。どんな特技なの?」


「ええと。動物の鳴き声の真似ができるんですが…。とりあえず羊やりますね」


「おお」


「めぇー」

佐藤はほとんど羊と言ってもいい声を出す。


「お前、面白いなー!佐藤!他には?」


「牛やります。もぉおーー」


「はっははは」

大きな声を出し手を叩きながら笑う。


私、こういう人苦手かもな。だいたいこういう奴は声がでかいわりに授業ではあまり声を出さなく、むしろ寝ている感じだろう。でクラス替えしたとき、「このクラス外れだわ。陰キャばっかやん」と言いそう。


私はこの時、こいつの本当の本性をわかっていなかった。その本性とは——



帰りの電車での事だった。私は端の席に座る。あとからそいつとその友達らしき人が乗ってきた。そいつらはドアの前を陣取っていた。


「いやー。佐藤っていう奴いるんだけどさ。そいつ使えそうだわ」


どう使えそうと思っているのかは知らないがこいつは上っ面の友情というものをしていた。


だからといって私には関係がないことはわかっているが胸糞が悪いのは事実だった。だが他にも胸糞が悪いことをしていた。


そいつはおもむろにバッグに手を入れ、パンを出す。そしてそいつは何食わぬ顔で食べる。


「イェーイ!」

そして悪びれる様子はなく写真を撮り始める。


「俺、かっこいいわ」


「w。キモイわ」


「うるせw」

そいつらは他の乗客の事を考えず、ペチャクチャと話し、マナーを守ることなくパンを食べる。


とても吐き気がする輩だった。こいつと一緒のクラスで1年やるのかと思うと吐き気が出てきた。


「佐藤ってどんな奴なの?」


「あ?ああ。キモイ奴だよ。話し方キモイし、特技が動物の鳴き真似だぜ?キモイだろ?」


私はそっとスマホを出し、録音をする。そしてカモフラージュをするようにイヤホンを出し音楽を聴いているふりをした。


「やっぱこのパン最高だわ。よいしょ。ぽいー」


電車の中でポイ捨てしやがったぞ。ふざけんなだよな。



数分した後奴らは電車を降りた。そして私は、ごみを拾い、電車を降りる。


そして私はSNSに録音した音声を流した。その録音した音声は瞬く間に広がっていき、炎上。でもすごいことに奴らは特定された。同じ電車に乗っていた人がSNSを見て、特徴を言ったのだろう。しかし恐ろしいものだよなSNSは。


私はいつも通り電車を降りる。


イヤホンをつけ歩く。


「HAPPY!HAPPY!♪」

洋楽である。


全然HAPPYになりたい訳ではないが適当に聴く。元々洋楽が好きでこのように聴いているという訳だ。


しかし聴いている雰囲気が台無しになることがことが起きる。


ブーンというバイクの音だ。しかも多い。ということは族だろう。イヤホンしていても聞こえる。騒音である。


私はトイレに逃げ込む。


「落ち着け、落ち着け」

いつものように指を触るが、落ち着かない。どうしても落ち着かない。


心拍数が上昇していく。


深呼吸をする。

「ふぅー」


そうすると自然と冷静になる。



そしてある事を思ってしまう。


”いつものように族狩りすればいい”と。


人には誰しも隠している”裏”がある。それはやましいものであったり、様々である。


私にはそれは族狩りだった。理由はなくやっていた。もしかしたらそういう奴が嫌いだからやっているのかもしれないし、あるいは本当に理由はなくやっていたのかもしれない。自分でもそういうのがわからない。


髪を整え、いつもの恰好をし、族のところに行く。



「ぶんぶーん!!今日も気分がいいぜ」


足音が響く。


「おい!ここは俺らで独占してんだ!どっか行け」


ライトに照らされ、顔が見える。


「なんだこいつ!顔をピエロみたいに塗っているぞ!ww」


ある程度の人は私を見て笑っていたが、例外も居た。どうやら知っている人なのだろう。



「おい。やめろ。戦闘準備だ」


「なんでだよー」


「やばいぞ。マズったら全滅だぞ…」


「は?なに言って…」


「黙れ。早くみんなでかかるぞ」


「なに言ってんだよ。こんな華奢なピエロに全滅?そんなやばいやつに見えないぞ」


「いいからやるぞ」

多分、ボスみたいな人が冷静にそう言うと空気がピリつき、子分みたいな人たちは囲ってきた。


数は20くらい。ボスはそれなりに戦闘経験がありそうだが子分は全くなさそうな素人だった。



結果は一瞬だった。子分たちが一気に襲ってきたが動きは単純。次がどう動いてくるなど読みやすい。子分1のバット攻撃を避け子分2に当てさせる。子分2は気絶。子分1は反動でよろけているところに殴り、気絶させる。


同じようにまとめてやると一瞬だった。


「くそ…」

残ったのはボス1人だった。


「俺ってさ。キレやすいのかな…」


1人称が”私”ではなく”俺”になっていた。まるで人が変わったかのように。


「なにが目的だ?」

ボスは少し震えていた。


「知らないよ。本能で動いちゃうんだよ」


「なんだと?」


「ごめんね」


ボスからはただのピエロではなく草食動物を狩るライオンのように見えていた。


「許してくれ!なにか気に障ったなら謝る」

謝罪をしてきた。


「謝らなくていいよ」


「じゃあ…許してください」


「1つだけ約束してくれたら許してあげるよ」


「はい!なんでも約束します!!」


「じゃあさ族を引退してよ。そしてまともに生きて」

意外にも優しい言葉であった。なぜ”いつも”こんな事を言ったのかわからない。


「はい!今すぐやめます」



私の族狩りはこうやって終わる。もしかしたら族をやめて真っ当に生きてほしいのかもしれない。そう思っているから族狩りをやっているのかもしれない。



帰ろうとした瞬間だった。落ちてしまう。地面があるはずなのに。


いや。地面をすり抜けたと言ったほうが正しい。


ゲームのバグとかであるすり抜けバグのようなものだった。


やがてどこかにたどり着く。


「ここは一体?」

そこには見たことがない景色だった。

見てくれてありがとうございます。

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