第44話 オリオン一族の掟
【 喫茶店 フィオーレ・デル・コニーリオ 】
由緒ある老舗が並ぶ大通りの一角に、一軒の真新しい店舗があった。
若い女性に人気の華やかな装飾と、絶品のスイーツで一躍評判になった喫茶店、『フィオーレ・デル・コニーリオ』である。
甘味を求める客層は女性に限らず、甘党の男性も多い。昼下がりだというのに、店内はほとんど満席の賑わいを見せていた。
そんな店の片隅に、丸テーブルを囲んで座る四人組の少女たちがいた。
まだあどけなさが残る顔立ちだが、身に着けている装備から彼女たちがハンターだということが伺い知れる。
「ご注文のドラゴン・チョコレートパフェです。どうぞごゆっくり♪」
笑顔のウェイトレスが、四つの大盛りパフェを彼女たちの前に置いた。
この店の人気を支えるもう一つの要素、それは制服姿のウェイトレスさんだった。
ミニスカートのメイド風衣装に、頭のウサ耳カチューシャ。その非日常的な愛らしさは、男女問わず多くの客を惹きつけてやまない。
少女たちはさっそくスプーンを手に取り、豪華なパフェへと手を伸ばした。
うん、おいしい!
濃厚なチョコの甘さと香り、そしてほんの僅かな苦みが口いっぱいに広がり、思わず笑みがこぼれる。
しかし、なぜ「ドラゴン」なのだろう?
パフェはドラゴンの形をしているのでも、素材にドラゴンが使われているわけでもないのに。
もっとも、その疑問はこれまで散々語り尽くした。今の彼女たちが最も興味あるのは、最近活躍が目覚ましい“ある人物”のことだった。
「ねぇねぇ、みんな聞いた? 『賞金首100体狩り』の話!!」
勢いよく声を上げたのはスリス。燃えるようなオレンジ色の長髪を二つ結びにした少女で、戦闘では前衛で大剣を振るう。
「ええ、もちろん! それも“小魚”だけじゃなく、“クジラ”を6体も! 凄いっすよね……」
白いベレー帽を被った青髪の少女、マーニーが目を輝かせる。彼女は魔法使いである。
ちなみに“小魚”とは、賞金1万マナ以下、“クジラ”とは賞金100万マナ以上の賞金首を指す、ハンターたちの業界用語だ。
「ユーマって人だよね! アウトランドから来た大魔導士!!」
テイルが身を乗り出す。ミディアムボブの金髪が光をはらみ、まるで大輪の向日葵が咲くかのように輝いていた。
彼女は肩出しのチューブトップという露出の高い衣装でありながらも、スリスと共に前衛を務めている。
実は彼女は武闘家であり、柔らかそうに見える脂肪の下には頑強な筋肉が潜んでいる。ゴブリンの頭程度なら素手で叩き割るほどだ。
「でもその人 すっごくスケベなんでしょ? 淫獣を片っ端から捕まえて、毎晩“お風呂屋”でフィーバーしてるって……」
薄紫色の長髪をしたエルフ族の少女、ノウトが半ば引き気味に言った。
彼女の役割は神官。……といっても神々への信仰心はない。
回復魔法を学ぶために神殿へ入門しただけという、カンヴァスでは良くいるタイプの治癒術士だ。
「そこはまぁ、英雄色を好むってやつじゃない? 大英雄様も子沢山だったし」
苦笑交じりにスリスは返す。正直なところ、彼女自身も性欲旺盛な男には抵抗がある。だが、それを補って余りある功績を裕真は残している。
欠点は誰にでもあるものだ。
「それにしても賞金首って、100体もいたんだね……」
「私達が新ダンジョン漁ってる間に、依頼が貯まってたそうっす」
「そういえば最近、普通の魔物退治してなかったわね〜」
ノウトは何気なく手帳を開き、過去の予定を確認する。
そこには、トリスター近郊にダンジョンが発見されて以来、自分たちがまったく討伐依頼を受けていなかったことが記されていた。
「受付のお姉さんも喜んでたよ! 依頼が片付いてギルドの面子が立ったって♪」
「あ〜……。そういえばギルド行く度に討伐依頼勧められてたっすね〜」
マーニーは受付嬢のもの言いたげな視線に気付いていたが、悪いと思いつつもあえて無視した。
街から遠く離れた廃墟で賞金首を探すより、近くのダンジョンでのお宝探しの方が何十倍も楽しかったからだ。
「うう……私は恥ずかしいよ……。 討伐依頼が出てるって事は、それだけ困ってる人がいるって事なのに……。私は目先のお金に釣られて迷宮三昧!! ハンターとして恥ずかしい!!」
テーブルに突っ伏しそうな勢いで涙目になるスリス。
彼女は『大英雄オリオン』や、ハンターギルドの創設者『ユリシーズ』の伝説的な活躍に憧れてハンターになった口である。
だというのに、目先の欲に負けて人助けを疎かにしていたことに、猛烈な後悔を覚えた。
そんな彼女に、マーニーとノウトはやや引き気味に声をかける。
「いやでも、ダンジョン探索だって、ハンターの立派な仕事ですし……」
「まぁ、お金に目が眩んでたのは否定できないけど」
その声にうんうんと頷くテイルが、ふいに真顔で言った。
「そうだね。魔物を倒さず、地域の平和に貢献しないハンターなんて、ただの武装した不審者だもの! そのうち街から追い出されちゃうよ!!」
「……え!? いや、うん、ぶっちゃけるとそうだけど……。もうちょっとオブラートに包んで……」
ノウトが慌てて手を振る。明け透けで体育会系のテイルだが、時折こうして本質を突いた鋭い指摘をする。
「今からでも遅くないよ! 私達も魔物退治に戻ろう!! トリスターの平和を守るんだよ!」
我が意を得たりと、スリスが勢い良く立ち上がる。
「ええ? うーん、まぁいいか。十分儲けたし、そろそろ潮時かもね」
「そうっすね。ダンジョンのお宝だって、もうじき取り尽くされるだろうし」
「決まりだね!! 明日からは魔物退治を頑張ろう!!」
興奮したスリスは、腰のマジックポーチから大剣を引き抜き、掲げた。
すると剣が眩い光を放ち、店内を真っ白に染める。
スリスと契約している『陽光の精霊』が、彼女の意気込みに応えて発光したのだ。
「お客様!? 店内で発光しないでください!」
店員の悲鳴に、周囲の客もぎょっとして振り返る。和やかな店内が一気にどよめいた。
その騒ぎを、隅の席から冷ややかに眺めている者がいた。
短く切りそろえた銀髪に、黒のタートルネックを纏った細身の男だ。
彼は飲みかけのコーヒーと代金をテーブルへ置くと、何事もなかったかのように店を後にした。
◇ ◇ ◇
【 王宮内 待合室 】
王宮の待合室は、壁一面に緻密な装飾が施され、深みのある色合いの瀟洒な絨毯が床を覆っていた。部屋の中央には彫刻が施された大理石のテーブルが置かれ、天鵞絨の座面を持つ椅子が整然と並んでいる。
テーブルの上には銀のティーポットとカップ、透き通るような水晶の皿に盛られた果物や焼き菓子が並び、香ばしい甘い香りがほんのり漂っていた。
本来は高貴な賓客をもてなすための空間に、場違いな三人の若者が緊張した面持ちで腰を下ろしている。
星野裕真、火野篤志、イリス・アーチャーの三人である。
何故彼らがここにいるかというと、数日前に完遂した「賞金首100体狩り」の件で、国王自ら謁見を望まれたためだった。
「いや〜……。謁見を申し込む前に向こうから呼んでくれるとは……。渡りに船とはこの事だな!」
裕真は頬をこわばらせながらも、務めて気楽に振舞う。
緊張しすぎるのは逆効果だと考え、軽口で場を和らげようとしたのだ。
だが、イリスの顔色はますます蒼白になっていく。
「ど……どうしよう……。 私、宮廷の作法なんてさっぱり……。何か無礼を働いて、お手打ちとか……」
召集されたのは裕真一人だったが、「付き添いを二人まで許可する」と伝えられており、その枠を篤志とイリスが志願した。
しかし王宮の威容を目の当たりにして、イリスは今になって自分の選択を激しく後悔してしまう。
「心配しなくても大丈夫ですよ。国王陛下は温厚で聡明な御方です。こちらが作法に疎い事ぐらい承知でしょう。多少無礼があったからといって、手打ちにされるような事はありませんよ」
穏やかな声でイリスを宥める篤志。
だがイリスは怪訝そうに眉をひそめて問い返す。
「会った事あるの?」
「いいえ、ただ商工会を通じて色々評判を聞いてますから。というか、オリオン連合は法治国家ですから、王様と言えど些細なことで人を罰したり出来ませんよ」
「へぇ……。勝手に中世ぐらいの文化だと思ってたけど、けっこう近代的なんだな」
裕真は素直に感心したように頷く。地球でいうと立憲君主制が広まり始めた18世紀ぐらいだろうか?
そんな会話の最中、重厚な扉が静かに開いた。
紫の官服を纏った女官が一歩踏み込み、澄んだ声で告げる。
「皆様、お待たせしました。謁見の間へご案内いたします」
案内役のその人は、褐色の肌に銀髪を頭上でまとめ、凛とした立ち居振る舞いを見せる美しい方だった。声は澄んでいて、場の空気をさらに引き締める。
「あっ はい!」
裕真は思わず立ち上がり、端正な美貌に視線を奪われる。
その横で、イリスは鼻の下を伸ばす彼の様子に少しだけムッと唇を尖らせた。
◇ ◇ ◇
【 トリスター宮殿 謁見の間 】
謁見の間は広大だった。
天井は高く、黄金に縁取られたアーチが幾重にも連なり、光を受けて煌めいている。壁面には精緻なモザイク画が施され、大陸全土を描いた巨大な世界地図と、連合王国の始祖にして大英雄オリオンの堂々たる像が、玉座を守るように鎮座していた。
だが、数百人を収められるはずの大広間に、今は裕真たちを含め六人しかいない。
先ほど案内してくれた宮廷女官『セラン』さん。国王の親衛隊長を務める騎士『フォード』卿。
そしてもう一人は、裕真の目を疑わせる人物だった。
喫茶店『ムーンラビット』で見かけた水色髪の少女店員が、頭に一匹のウサギを乗せ、玉座の前に立っているのだ。
「……あれ? ムーンラビットの店員さん? なんで王宮に?」
「え? まさかあなた……様が、国王陛下!?」
思わず口に出た裕真の疑問に、すぐ隣のイリスが目を丸くする。
だが、思わぬ方向から答えが返ってきた。
「ワシじゃよ ワシが国王じゃ」
「……ウサギがしゃべった!?」
裕真が声を裏返らせると、少女の頭に乗っていたウサギはひょいと飛び降り、玉座の前に降り立った。
次の瞬間、ウサギは白い光に包まれたかと思うと、白髪に白髭の壮年の男性へと姿を変えたのだ。
頭上にはオリオンの象徴たる三ツ星の王冠を戴き、威厳をまとったその姿。彼こそがオリオン連合王国の国王、『ケダリオン十三世』陛下に他ならなかった。
あまりの光景に唖然とする裕真たちをよそに、国王は玉座に「よいしょ」と腰を下ろす。
「いやぁ、驚かせてすまない。だが口で説明するのもややこしいと思ってな」
「へ……変身魔法ですか? いや、驚きました……」
月は日によって姿を変える。
月の大精霊『ディアナ』と契約を結ぶオリオン一族は、その加護により変身魔法を得意としているのだ。
「……ということは、陛下は変身した姿で喫茶店にいらしてたんですか?」
「そうじゃよ、まぁ視察というやつじゃな。王宮に籠ってばかりでは下々の生活が見えてこない。だから変身して街の様子を見に行ってたという訳じゃ」
「なるほど……」と裕真は唸る。だがすぐに首を傾げた。
「でも、小動物の姿は危険じゃないですか? うっかり踏まれたり、猫に襲われたりしません?」
その問いを予期していたかのように、国王は愉快そうに口元を緩める。
「無論そういう危険もあるが、それ以上の価値がある。人は自分より弱い者を前にすると本性を現す。王の前では決して見せぬ姿を見せてくれおるのじゃ。……良くも悪くもな」
言葉に、場の空気が一変する。
イリスと篤志が目を輝かせ、感嘆を漏らした。
「それを知る為に危険を承知で……!!」
「いや、流石です! そのような深いお考えがあったとは!! 大変感服いたしました!!」
「ふっ 玉座に座ってるだけでは王は務まらんのでな」
威厳に満ちた微笑みと共に言い放つ国王。だが――
実 は 嘘 で あ る 。
本当は小さくて可愛い生き物になり、ただひたすら女の子から甘やかされたかっただけなのだ。
大国の王という重責を担うには、癒しの時間が必要なのである。
「しかし陛下……そのような話を、なぜ私達に? 本来ならトップシークレットのはずでは……」
遠慮がちに篤志が問いかける。
「それは君達が信用できる人間だと判断したからじゃよ。だからこちらも信じてもらう為に、ひとつ秘密を明かしたという訳じゃ」
国王は玉座から立ち上がり、ゆっくりと裕真たちの前に歩み寄る。その一挙手一投足に、場の空気が自然と張り詰めていく。
「失礼ながら、喫茶店での会話を全て聞かせてもらった。ユーマくん、君は強大な力を持ちながらも、それに驕ることなく、仲間の意見を尊重し、人助けを第一に考え行動している……。いや今時珍しい実に立派な少年じゃ」
横で控えていた店員の少女が、こらえきれず笑いを噛み殺している。国王の言葉が半ばおべっかだと知っているからだろう。
だが裕真たちは国王の真剣な眼差しに見入っており、その様子に気づかない。
「いやいや、そんな……。俺はそれほど大した人間では……」
強大な力といっても、所詮は冥王からの借り物だ。自分の力と胸を張って言えるものではない。
「ははは、そう謙遜することもあるまい。ところで君達が100体狩りに挑んだのは、ワシに頼みたい事があるからであろう? 遠慮なく言いなさい」
「あっはい! 実は――」
裕真は冥王から邪神討伐の使命を帯びていること、そのために国宝の神器が必要であることをつぶさに語った。
さらに念押しとばかりに『冥王コール』を使い、実際に冥王の声を響かせる。
禍々しい冥王の姿を垣間見せられ、さすがの国王も目を見開いた。
「……なるほど、だから《マスターリング》が必要だと。あい分かった、邪神討伐の為とあらば断わる理由がない。我が国の宝をお貸ししよう」
「おおっ! ありがとうございます!!」
喜びを隠しきれず声を弾ませる裕真。だがその直後、国王の口から続いた言葉に凍りついた。
「しかし、《マスターリング》単体では何の効果も無い」
「……え」
真顔になった裕真に、国王はこほんと咳払いをして説明を続ける。
「この神器は、使用者のMPを分け与えるものなのは知っておろう。その際、MPの“受け皿”となる《フォローリング》が必要なのじゃ」
「ああ……なるほど。マスターリングが送信機で、《フォローリング》が受信機なんですね」
「左様。《フォローリング》は全部で七つ。今この場にあるのは一つだけじゃ」
国王が言うと、先ほど笑みを堪えていた少女店員が、すっと自分の指に嵌めている指輪を掲げた。
それがフォローリングか……。
――いや、なんで国の神器を彼女が持っている!? そもそも、なぜ王宮に!?
「おっと、紹介が遅れたの。その子は儂の娘、『ヒナ』じゃ」
「ヒナです。よろしくお願いします」
「あ……。こちらこそ」
なんと、お姫様だったのか……。
だがそれはそれで、なぜ喫茶店で働いていたのかという疑問が浮かぶが、今はそれを問いただすよりも、本題に集中すべきだろう。
「残りの六つは、どちらに?」
「そこのヒナを含む七人の娘に、ひとつずつ持たせておる」
そう言って国王は、謁見の間に掲げられた巨大な世界地図へと視線を向けた。
「ヒナ以外の娘たちは皆、ハンター修行の旅に出ていてな。世界各地を飛び回っておるゆえ、簡単には呼び戻せん」
「え!? お姫様が!?」
思わずイリスが驚きの声を上げた。
その反応からこの世界でも、大国の姫君がハンターになるのは非常識なことだと分かる。
「申し訳ないが、君から出向いて指輪を借りてほしい。娘たちには手紙で知らせておくから」
「あっはい。それはもちろん構いませんが……なぜ姫様たちがハンター修行を?」
「まぁ普通はおかしいと思うわな。だがそれが一族の掟じゃから仕方ない」
そう言うと国王は、重々しく椅子へ腰を下ろし、オリオン一族にまつわる歴史を語り始めた。
ー ー ー ー ー
それは今より950年ほど前の話。
『魔法帝国』が崩壊して数十年。世界は未だ混沌の極みにあった。
それまで帝国に抑え込まれていた異種族、蛮族、そして魔物たちが、世界の新たな支配者として暴虐の限りを尽くしていたからだ。
帝国に依存していた民衆は、我が身を護る術も無く次々と犠牲になった。
街は焼き払われ、田畑は食い荒らされ、優れた魔法技術も失われ、故郷を追われた人々は山野に身を隠しながら、明日をも知れぬ暮らしを強いられていた……。
そんな絶望の時代に現れたのが偉大なる英雄、世界最強の狩人『オリオン』である。
彼は百の精霊と七つの神器を使いこなし、この地を支配する数多の魔物や蛮族を狩り尽くしていった。
安住の地を得た民衆は、オリオンを王と称え、帝国に変わる新たな国を築き上げた。
それが『オリオン連合王国』の始まりである。
故にオリオンは、「狩り」に対し特別な思い入れがあった。
彼にとって「狩り」とは人々を救う手段であり、富と栄光の象徴であり、彼の人生の全てなのだ。
だが、平和を勝ち取ったある日。
いつものように狩りに赴こうとするオリオンに、子息の一人がこう言った。
「父上、もう自ら狩りに行かなくても。そんな“雑事”は下々の民に任せれば良いのです。王は王らしく玉座に構えていませんと」
オリオンは激怒した。
その子息の顔を変形するほど殴打した後、子らに向かって高らかに宣言した。
我が血脈に連なる者は、皆等しく『狩り』に出よ!!
『狩り』もできぬ臆病者に、『オリオン』の名を継ぐ資格無し!!
ー ー ー ー ー
「こうして我らオリオン一族は、皆等しくハンターとなり、最低でも五年間は狩猟生活を営むことが義務付けられたのじゃよ」
国王は謁見の間に飾られている始祖オリオンの像を見ながらため息をついた。
「もちろんワシと、ワシの娘達もな」
「それでお姫様が……。でも、それで万が一の事態が起こったらどうするのです?」
「もちろん今まで数え切れぬほど死んでおる。それ故、我ら一族は血筋を絶やさぬよう沢山の子を作る。ワシも七人の娘を設けた」
唐突に明かされた事実に、皆は言葉を失った。
特にイリスは、王都に来る前に王家の歴史を調べており、病死や事故死がやけに多いことを疑問に思っていた。今、その理由を国王自らの口から知らされることになるとは……。
だが、続く国王の言葉はさらに衝撃的だった。
「幸い、ワシの娘達は今まで誰も犠牲にならなかったが……。最初の一人が出るかもしれん……」
「……はい!? それはどういう事で?」
慌てる裕真に対し、国王は悲しげな面持ちで言葉を続けた。
「実はの……。最近この街近くでダンジョンが発見されたじゃろ? その探索に赴いた長女の『ルーナ』が、消息を絶ったのじゃ……」




