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第42話 賞金首100体狩り!(急)


 【 喫茶店 ムーンラビット 】



 賞金首100体狩りは、裕真のチート能力のおかげで特に苦戦する事もなく順調に進んだ。

 だがそれでも、連日ダンジョンへ赴いての狩りは疲労が溜まる。なので一同は、二日ほどトリスターで休息を取ることにした。


 イリス、ラナンは私服や雑貨などのショッピングに。

 アニーは新しく出来たエステが気になるとのことで、そちらに向かった。


 一方の裕真は特に買いたい物もなく、やりたい事も思い浮かばない。そこで篤志とニーアに誘われるまま、喫茶店ムーンラビットを訪れた。


  店内には焙煎したての香ばしい匂いが漂っている。席に腰を落ち着け、良い香りのコーヒーを一口。ほっと息をついた裕真は、向かいの二人へと話を振った。


「で、街の様子はどう? まだ100体狩ってないけど、そろそろ俺たちのこと噂になってない?」


 期待を隠せない声音に対し、篤志とニーアは目を泳がせ、困惑の表情を浮かべた。


「……え!? ああ、はい! そ、それなりに……」

「ま…まだ新ダンジョンの話ばかりで! これからです! これからですよ、ユーマさま!!」


 二人が引きつった笑みを浮かべるのを見て、裕真は首を傾げる。

 そのとき、背後から甲高い声が響いた。


「あっ! ドスケベハンターだ!」


 振り返ると、二人の女の子がいた。

 十代前半で、黒髪のショートカットと、赤毛の二つ結び。

 そのうちの一人、ショートカットの子がこちらを指差している。

 どうやら裕真のことを言っているらしい。


「こらっ! アヤさん! お客様になんて失礼な!!」


 すぐさま水色髪の少女店員が飛んできて、ぷんぷんと頬を膨らませる。

 その様子から女子二人と親しい仲だと察した。


「そうだよ〜! “お風呂屋さん”に売り飛ばされちゃうよ~!」


 赤毛の子が怯え気味に口を挟む。

 後に聞いた話だが、“お風呂屋さん”とは風俗店を指す隠語らしい。


「わ~っ、逃げろ~」


 アヤと呼ばれた少女は笑いながら駆け出し、二人はそのまま店を飛び出していった。


「すいません! すみません! お代はサービスしますから!!」


 店員の少女が腰まで届く髪を揺らしながら頭を下げる。だが裕真の耳には届かなかった。


「ど……どすけべハンターって、俺のこと?」


 唐突な汚名に愕然とする裕真に、篤志が眉間を抑えながら答えた。


「あ~、はい……。一番話題になったのは、淫獣を20体以上捕まえたことでして……。そういう下世話な話って広まりやすいんです。他にも性欲異常者だとか、スケベニンゲンとか、ケダモノフレンズだとか……」


 ニーアも頬を赤らめつつ言いにくそうに続ける。


「ぶっちゃけますけど、一部の潔癖な人達……特に年頃の女の子の評価は最悪です。も~、なんで淫獣なんて捕まえたんですか……

お金に困ってるわけじゃないのに」


 淫獣捕獲がここまで偏見を受けるものとは思わなかった。

 呆気に取られていた裕真だが、そこはきっちり反論する。


「いやいや、あいつら人を殺してないってだけで、人様に迷惑かけているのは変わらないぞ? 放っておけば犠牲者が増えるし」

「なら生け捕りにせず、退治してしまえば良かったんですよ」


 さらりと物騒なことを言う篤志に、裕真は眉をしかめる。


「……退治って殺すって意味だろ? そりゃ人を喰う魔物は殺さなきゃだけど、そうでないなら無暗に殺したくない」

「気持ちは分かりますが、今回の目的は名声稼ぎでしょ? なのに悪名を広めたら本末転倒じゃないですか」


  冷静な指摘に、裕真は返す言葉に詰まった。


「ま~ そうだけどさ~。じゃあどうすれば良かったのさ?」

「殺すのが嫌というなら、ギルドに引き渡すとき、あなたの名が出ないよう口止めして貰えば良かったんですよ。今のあなたなら、それぐらい融通してくれます」

「あ~……なるほど、その手があったか。……まぁ、もう後の祭りだけど」


 ショートケーキのイチゴを突っつきながら呟く。

 そこで店員の少女が、おずおずと口を開いた。


「あの〜、よろしいでしょうか? お客様の評判はそこまで悪くないですよ? 感謝している人もいっぱいいます」

「え? そう? ……でも感謝してるのはスケベニンゲンだけ、というオチ?」

「いえいえ、スケベニンゲンじゃない若い女性の方に評判です」

「え? そうなの? でもなんで?」

「捕らえた魔物の中に、妖精さんがいましたよね?」

「……ああ、パックね」


 一時的とはいえ、女体化させられた苦い経験が蘇る。


「そうです、その妖精さんの変身魔法を使ったマジカルエステが大好評なのです。脚を長くしたり、おっぱいを大きくしたり」

「そっちか~。そっちの評判か~……」


 裕真はがっくりとうなだれた。突いていたイチゴが皿の上にころりと落ちる。

 本当は国王陛下と面会する為に、数多の賞金首を討ち取ったスゴ腕のハンター……みたいな評判が欲しかったのに。


「うん、これはノンビリしてる場合じゃないな! 残りの賞金首を狩って、評判を上書きしないと!!」



 ――余談だが、屋敷に戻った後、仲間の一人に明らかな異変があった。


 アニーの背がスラリと伸び、おっぱいも大きくなっていたのだ。

 

 ……だが、誰もそれに触れなかった。

 見て見ぬふりをする優しさが、裕真たちにもあったのだ。



「ちょっ!? そんな腫れ物みたいに扱わないでください!! 話のタネに、ちょっと試してみただけですって!!!」




■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ 



第8ステージ【フレスベルグの墓】  


 建造:約900年前(オリオン連合王国建国時)

 危険度D:中堅ハンター向け


大英雄オリオンに倒された神喰らいの魔物(ゴッドイーター)、暗黒鳥フレスベルグの墓。

その魂を冥府へ送り届けるために建造された。

アンタレスのように復活の恐れはないが、その亡骸は現在も濃厚な魔力を放っており、それに釣られて無数の魔物が集まってくる。



【 潜伏賞金首 6体 】



■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ 



 石造りの巨大な墓は、見る者を圧倒する威容を誇っていた。

 黒ずんだ巨石を積み上げて築かれ、その形状は古代マヤの遺跡を思わせる階段状のピラミッド。段ごとに並ぶ石の壁面には、長い年月の風雨で刻まれた無数の溝や苔が走り、歴史の重みを感じさせる。

 その広がりは、小さな街を丸ごと覆い尽くせるほどだった。


「――というわけで、この墓は建てられたのよ。アンタレスみたいに復活しないように」

「へぇ……。やっぱり弔うのって大事なんだな」


 裕真は感心しながらも、ふと首をかしげる。


「それならアンタレスにも、墓を作ってやれば良いんじゃないか?」

「あ~、その計画はあったみたいなんだけどね……。この墓を作るので予算が尽きたらしいのよ」


 裕真は視線を上げ、そびえ立つ墓を仰ぎ見た。

 まるで都市の城塞にも匹敵する巨大建造物。その建造に膨大な費用が掛かったであろうことは、裕真にも想像できた。


「その後も九百年間、予算の都合が付かず、いまだに放置されているそうです」

「お金の問題はどこの世界でも同じか……」


 アニーの説明に裕真は苦笑まじりに唸った。

 予算不足で重大な問題が先送りになるのは、国家規模でも家庭でも変わらない。

 裕真の実家でも、居間の壊れかけのエアコンを買い替える金がなく、今でもなお騙し騙し使い続けている。




■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ 



 【 賞金首 一覧 】



魔獣属【アウルベア】

 討伐Lv19 賞金20,000マナ


頭部がフクロウ、身体が熊の魔獣。

ユニークな見た目だが、猛禽類の視力と獰猛さを兼ね備えた熊、と言えばその恐ろしさを想像できるだろう。


〔スキル〕

〈筋力上昇〉 筋力が上昇する

〈梟の目〉 視力が人間の数百倍に強化され、暗闇でも良く見える

〈アクティブソナー〉 鳴き声を発し、音の反射で周囲の様子を把握する

〈隠密行動〉 気配を断ち、忍び寄る技術を得る




妖獣属【コカトリス】

 討伐Lv23 賞金30,000マナ


ニワトリの身体とヘビの尻尾を持つ妖獣。

相手を石化させる光線と石化毒を持ち、それぞれ対応属性が異なるため注意が必要。

似たような能力を持つバジリスクをライバル視している。


〔スキル〕

《石化光線》 目から石化光線を放つ 土属性

《石化毒》 爪と嘴から石化毒を分泌する 毒属性

〈石化無効〉 毒・呪い・魔法など、あらゆる石化攻撃を無効化する

〈毒吸収〉 毒物を無効化し、逆に養分に変える




妖獣属【ディオメディス】

 討伐Lv33 賞金50,000マナ


火を吐く人喰い馬。「馬は草食」という常識は捨てよう。

高速で駆け回りながら炎のブレスを吐いて攻撃してくる。


〔スキル〕

〈耐久上昇(大)〉 耐久力が大幅に上昇する

〈長距離走行〉  長時間走行しても疲れにくくなる

《ファイアブレス》 炎の吐息を吐いて攻撃

〈炎無効〉 炎属性の攻撃を無効化する




魔獣属【グリフォン】

 討伐Lv25 賞金50,000マナ(生け捕りなら賞金3倍)


鷲の頭と翼、ライオンの胴体を持つ魔獣。

その優美な姿は芸術の題材として人気が高く、絵画や像が数多く存在する。

騎獣としての需要も高く、生け捕りでの賞金が上乗せされる。


〔スキル〕

〈敏捷上昇(大)〉 敏捷力が大幅に上昇する

〈視力上昇〉 視力が上昇し、遠くまで鮮明に見える

《飛行能力》 空を飛べる 航空力学的に無理がある形状でも飛行可能

〈加速〉 短時間、集中力を高めて思考を加速 周囲の光景がスローに見える




魔獣属【ヒポグリフ】

 討伐Lv25 賞金50,000マナ


グリフォンと馬の間に生まれた魔獣。

能力はグリフォンに似ているが、人気は劣る。


〔スキル〕

〈敏捷上昇〉 敏捷力が上昇する

〈耐久上昇(大)〉 耐久力が大幅に上昇する

〈視力上昇〉 視力が上昇し、遠くまで鮮明に見える

《飛行能力》 空を飛べる 航空力学的に無理がある形状でも飛行可能




幻獣属【キマイラ】

 討伐Lv40 賞金200,000マナ


ライオン、ヤギ、ヘビの三つの首を持つ幻獣。

原初の魔女『パンドラ』が造った合成獣……というのは誤解で、元からこういう姿をした生物である。

むしろキマイラの姿に影響を受けたパンドラが、人工的な合成獣「キメラ」を作ったと言われる。

空を飛びながら三種類のブレスを同時に吐きかけてくる強敵。


〔スキル〕

《ファイアブレス》 炎の吐息を吐いて攻撃

《サンダーブレス》 雷の吐息を吐いて攻撃

《ポイズンブレス》 毒の吐息を吐いて攻撃

《飛行能力》 空を飛べる 航空力学的に無理がある形状でも飛行可能

〈副脳〉 複数の脳を持ち、脳の数だけ行動回数が増加 潰されても一つ残れば生存可能



■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■  




 空を飛び回る魔獣に苦戦したものの、イリスは『アルケニー』の糸を巧みに操って応戦した。

 木々の間に張り巡らせた粘着糸でグリフォンを捕え、首を跳ね飛ばしたところで、本日の狩りは終了した。


 その瞬間を見届けたラナンが、口を尖らせ不満げに声を上げる。


「倒しちゃうのか? 生け捕りなら報酬三倍なのに」

「こいつは強力なスキルを持っているからね。〈加速〉ってのが《ハヤブサの腕輪》とほぼ同じ効果なの」

「ふーむ……。じゃあしょうがないか」


 ラナンは納得したように頷いたが、裕真の胸には新しい疑問が浮かんでいた。


「ところで、なんで三倍なんだ?」

「そりゃ騎獣にするためよ。手配書にもそう書いてあったでしょ?」

「……あ、そうだった」


 裕真は懐から手配書を取り出し、確認する。

 出発前にも目を通していたが、なにしろ百枚もあるので細部まで覚えられなかった。


「でも、似たような魔物のヒポグリフには、生け捕りボーナスがついてないぞ? 胴が馬だし、グリフォンより乗りやすいと思うけど」

「うん、そのとおり。ヒポグリフの方が乗りやすいし、調教しやすいらしいわ」


 そこでイリスの声が少し濁った。言葉を探すように間を置いてから、続ける。


「でもほら……ヒポグリフって、グリフォンが雌馬をアレして産ませたわけじゃない? だからどうしてもグリフォンの方が強いってイメージがあるのよ」


 イリスのたどたどしい説明に、ラナンが補足を入れる。


「“征服された”結果だもんな。お偉い騎士さまほどゲンを担ぐもんだから、ヒポグリフには乗りたがらねーんだ」

「あ~、はいはい。ゲン担ぎね」


 裕真はぽんっと手を叩き、思い当たる例を口にした。


「お武家様が“種無しのミカンは食べない”とかそういうやつか」


 武士の時代、種無しの果実は“種無し→跡継ぎが途絶える”を想起させ、不吉なものだとされていた話を思い出す。

 どこの世界でも似たような風習はあるんだな、などと妙な親近感を覚える裕真だった。



【RESULT】


賞金総額  400,000マナ

魔石+素材 100,000マナ


計 500,000マナ




ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 討伐終了後、イリスは魔物スキルの入れ替えを行った。



1.【スライム】→【コカトリス】


4.【オーガ・ブッチャー】→【アウルベア】  


5.【キング・モス】→【グリフォン】 




 〔 入れ替え後のスキル編成 ]


1.【コカトリス】 討伐Lv23

《石化光線》 目から石化光線を放つ 土属性

《石化毒》 爪と嘴から石化毒を分泌する 毒属性

〈石化無効〉 毒・呪い・魔法など、あらゆる石化攻撃を無効化する

〈毒吸収〉 毒物を無効化し、逆に養分に変える


2.【オティフ】 討伐Lv27

〈スライム属性〉 毒無効/物理耐性/炎弱点

〈腐食ガス〉 有機物や金属を腐食させるガスを吐く

〈毒ガス〉 命を蝕む毒ガスを吐く

〈超再生〉 極めて高い再生力を持ち、首が切れても再生する


3.【オーガ・デストロイヤー】 討伐Lv50

〈筋力上昇(大)〉 筋力が大幅に上昇する

〈耐久上昇(大)〉 耐久力が大幅に上昇する

〈敏捷上昇(大)〉 敏捷力が大幅に上昇する

〈戦士の心得〉 臨戦態勢に入ると全体的な能力が上昇する


4.【アウルベア】 討伐Lv19

〈筋力上昇〉 筋力が上昇する

〈梟の目〉 視力が人間の数百倍に強化され、暗闇でも良く見える

〈アクティブソナー〉 鳴き声を発し、音の反射で周囲の様子を把握する

〈隠密行動〉 気配を断ち、忍び寄る技術を得る


5.【グリフォン】 討伐Lv25

〈敏捷上昇(大)〉 敏捷力が大幅に上昇する

〈視力上昇〉 視力が上昇し、遠くまで鮮明に見える

《飛行能力》 空を飛べる 航空力学的に無理がある形状でも飛行可能

〈加速〉 短時間、集中力を高めて思考を加速 周囲の光景がスローに見える


6.【ヒト地獄】

〈流砂〉 地面を流砂に変える

〈地中移動〉 地中を移動でき、窒息もしない

〈防御上昇(大)〉 防御力が大幅に上昇する

〈貫通〉 硬いものを貫きやすくなる


7.【アルケニー】

〈蜘蛛の糸〉 蜘蛛の糸を生成する

〈ロープワーク〉 紐状の物体の扱いが上手くなる

〈バランス感覚〉 不安定な足場でも問題なく動ける



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■  



第9ステージ 【 飛空船・窒息号 】


 建造:約2,600年前(ドワーフ時代)

 危険度C:熟練ハンター向け



古代ドワーフが造った新型飛行船の残骸。正式名称は『スカイ・ヘブン号』。

魔力の代わりに大気中の酸素を燃料とする革新的な動力機関を積んでいた。

だが何を間違ったのか船内の酸素を消費してしまい、乗組員全員が窒息死するという痛ましい事故が起きてしまった。

その後、関係者同士の醜い責任の押し付け合いの末、この飛空船はアンタッチャブルな案件となり、解体もされず放置された。


現在ではこの船の設備目当てに、無数の『オートマトン』が集まっている。



【 潜伏賞金首 5体 】



■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■  




 裕真は、目の前にそびえ立つ巨体に我が目を疑った。

 それはあまりにも場違いな代物だったからだ。

 全長300mの金属板を幾重にも重ねた船体。鋲打ちの外殻。むしろ宇宙船を思わせる無骨な造形は、ファンタジーというよりSF、明らかにこの世界の景観から浮いているのだ。

 そんな裕真の戸惑いを追い打ちするかのように、異様な存在が接近してきた。

 円筒形のボディに、蛇腹ホースのような四肢。まるでレトロフューチャーの世界から抜け出してきたかのようなロボットだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


機械属【D(ドワーフ)セントリー・ポーン】

 討伐LV7(賞金対象外)


古代ドワーフの科学技術で造られた人間大の自立自動機械(オートマトン)

戦闘は機械の手足を使った白兵戦がメインだが、稀に古代ドワーフの遺物、銃火器や電動工具を装備している個体がいるので注意。


〔スキル〕

〈機械属性〉 物理に強い耐性/毒・精神・闇・生命無効/雷弱点/身体が機械になる

〈集団行動〉 同族とスムーズに連携行動が可能

〈科学兵器運用〉 科学技術を利用した兵器の扱いが上手くなる


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 これらが数十体ほど襲ってきたが、《ライトニング》の一薙ぎで難なく撃退できた。

 その残骸を前に、裕真は興奮を隠せず声を上げる。


「おおっ! ロボだ! この世界、SF的な要素もアリなのか!!」


 剣と魔法のファンタジーを愛してやまない裕真だが、ロボットものも大好物だった。ネット配信のガ◯ダム作品は一通り制覇しているくらいには。

 

 しかし、イリスは冷静に指摘する。


「ユーマ、アレはあなたが期待してるような代物じゃないわよ。完全な機械じゃなくて、機械の姿をした魔物なんだから」

「え!? どう言うこと?」


 イリスに替わり、ラナンが渋面を作りながら解説する。


「ドワーフ文明の末期、俺らの祖先は禁断の技術に手を出した……。『魔物の心臓』を動力源にして兵器を作ろうってな!」

「心臓を!?」


 ぎょっとする裕真。


「ああ、魔物は大気中の魔力をエネルギーに変える力を持っている。それを機械に持たせれば、補給いらずの無敵の兵器が造れる……って考えたんだ」


 そう言って、ラナンは足元に転がるポーンを無造作に蹴飛ばした。


「だがその結果、オートマトンは魔物化した! 敵味方の区別なく人を襲うようになっちまった!」

「機械が……魔物化!?」

「ああ、自我を持ち、人の血肉を食らうんだ」

「マジで……」


 裕真は残骸の頭部に目をやった。

そこには虎ばさみのようなギザギザの歯が並んでいる。装飾だと思っていたが……。そう思った瞬間、ただの機械が途端に不気味な怪物に変わった。


「それて、衰退していたドワーフ文明にトドメを刺したってわけさ」


(なんかエ〇ァみたいだ……)


 真剣な話の最中だというのに、不謹慎にも社会現象にもなった某アニメを思い出した。

 あれもまた、人間が未知の怪物を利用して兵器を造っていた。


「だから勿体無いなんて思わず、遠慮なく壊しちまってくれ。……すまん、本当は俺らドワーフが片付けないといけないんだが」


 普段はあっけらかんとしている彼女の顔に、珍しく翳りが差す。

 その真剣な面持ちに少しドキリとした。


「いやいや、ドワーフ文明と言ったら二千年以上前の話じゃないか。ラナンが気にする話じゃないと思うが」


 これは慰めではなく、裕真の本心だ。

 種族全体の罪なんて存在しない。罪はあくまで犯した当人だけのもの。

 たとえそれが実の親の罪だって、子供が背負う必要はない……と考えている。

 とはいえ、ラナンがここまで気にするのは、それだけドワーフという種族に誇りと愛着を持っているということだろうから、安易に否定しない方が良いのだろう。


「分かった、あの不細工な鉄屑共は、見かけ次第破壊する! だから安心してくれ!」

「……は? 不細工」


 励ますつもりが、ラナンの眉がぴくりと跳ねる。


「いやいや! カッコイイだろ! ほら、見ろよ! この無駄のない洗練されたフォルム! 機能美の極地じゃねーか!」

「え……」


 裕真は彼女の中の変なスイッチを押してしまったらしい。

 ラナンはポーンの残骸を抱え上げ、裕真の眼前に突きつけた。


「そして、この継ぎ目がない滑らかな装甲版! 現代では再現不可能な精錬技術の――」


 そんな熱弁を振るうラナンをよそに、新たなポーンの集団が近づいてくる。

 裕真はこれ幸いとばかりに駆け出した。


「おおっと! 新手が来た! 話はまた後で!!」

「あっ! ちょっ!!」




■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■  



 【 賞金首 一覧 】



機械属【Dセントリー・ルーク】

 討伐Lv30 賞金50,000マナ


高さ4m、砲身8mの手足がついた砲台。

大出力の重金属粒子砲で、直線状にいる標的を焼き払う。


〔スキル〕

〈機械属性〉 物理に強い耐性/毒・精神・闇・生命無効/雷弱点/身体が機械になる

〈重金属粒子砲〉 加速した重金属粒子のビームを浴びせる 炎と雷の複合属性

〈光学照準器〉 遠距離射撃の命中率増加 望遠鏡としても使える




機械属【Dセントリー・ナイト】

 討伐Lv30 賞金50,000マナ


ポーンを5mほどに大きくした姿。両手に高周波ブレード、背中に高機動スラスターを装備している。

白兵戦に特化した機体で、高い機動力で戦場を跳ねまわり、獲物に肉薄して切り刻む。


〔スキル〕

〈機械属性〉 物理に強い耐性/毒・精神・闇・生命無効/雷弱点/身体が機械になる

〈高周波振動〉 刃物に高周波を纏わせ、攻撃対象の分子間結合を断つ

〈高機動スラスター〉 推進装置を利用して立体的な高速機動が可能になる




機械属【Dセントリー・ビショップ】

 討伐Lv35 賞金80,000マナ


優れたセンサーと無数の誘導ミサイルを搭載した自動兵器

遮蔽物に隠れた標的も逃がさない。トイレに隠れていても息の根を止める。


〔スキル〕

〈機械属性〉 物理に強い耐性/毒・精神・闇・生命無効/雷弱点/身体が機械になる

〈誘導ミサイル〉 標的を自動追尾するミサイルを放つ 物理と炎の複合属性 弾速は遅め

〈熱源センサー〉 周囲の熱を持つ物体を感知する




機械属【Dセントリー・クイーン】

 討伐Lv70 賞金2,000,000マナ


全長8m、ルーク、ナイト、ビショップの兵装を併せ持つ、セントリーシリーズの最終兵器。

強力だが、そのぶん作成コストが高いため、数が少ないのが唯一の救い。

キングを護衛するのが主な役目である。


〔スキル〕

〈機械属性〉 物理に強い耐性/毒・精神・闇・生命無効/雷弱点/身体が機械になる

〈重金属粒子砲〉 加速した重金属粒子のビームを浴びせる 炎と雷の複合属性

〈誘導ミサイル〉 標的を自動追尾するミサイルを放つ 物理と炎の複合属性 弾速は遅め

〈高周波振動〉 刃物に高周波を纏わせ、攻撃対象の分子間結合を断つ

〈アップグレード〉 戦闘を繰り返すたびに強くなる




機械属【Dセントリー・キング】(殲滅指定)

 討伐Lv10 賞金2,000,000マナ


一辺10mの浮遊する立方体の機械。

オートマトンの生産、修復、指揮を行う。

戦闘能力はほとんどないが、他のオートマトンに護られているため討伐は困難。

ハンターはこいつを見かけた場合、速やかに倒すか、無理ならギルドに報告する義務がある。

これを怠ると処罰の対象となるので注意。


〔スキル〕

〈機械属性〉 物理に強い耐性/毒・精神・闇・生命無効/雷弱点/身体が機械になる

〈高速演算〉 高度な計算が可能になる

〈オートマトン生産〉 オートマトンを作れる 材料に魔物の心臓が必要 完成した個体はもちろん人を襲う

《反重力飛行》 宙に浮ける あまり速く動けないが、かなりの重量を持ち上げられる



■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■  




 ここでの戦闘もイリス一人に任せていたのだが、オートマトンたちは想像以上に手強く、彼女は苦戦を強いられていた。


 中でも『クイーン』と呼ばれる個体は別格だった。大出力の重金属粒子砲は、直撃すれば《貪狼星(どんろうせい)》の力で生命力を底上げされているイリスでさえ無事では済まない。

 次々と撃ち込まれる光線をギリギリで回避しながら接近するイリス。だが射線は徐々に正確さを増し、逃げ場を狭めていく。


 ついにビームがイリスの左腕をかすめた。

 ジュワッと音を立て、肉と骨が瞬時に蒸発する。


「イリス!! 腕が!!」


 遠くで見ていたアニーが絶叫する。

 イリスは歯を食いしばり、顔をしかめながらも声を返した。


「……大丈夫よ!!」


 次の瞬間、失われたはずの左腕が眩い光とともに芽吹くように再生する。

 『オティフ』のスキル、〈超再生〉である。


「一瞬で生えた!?」


 その場にいた全員が目を丸くした。そういうスキルだとは聞いていたが、やはり実際にその効果を目撃すると驚く。


 だがクイーンはその光景に動揺もせず、冷徹に照準を合わせ直し、再び砲撃の構えをとる。


「MP1000! 《サンダーストーム》!!」


 裕真の声とともに、雷鳴が轟いた。荒れ狂う電撃の渦がクイーンを包み込み、その巨体を一瞬で焼き尽くす。

 渦が晴れると、Dセントリー・クイーンは無残な鉄屑と化していた。


 裕真は咳払いをして、申し訳なさそうに言った。


「すまん、ヤバそうだったので手出しさせてもらった」

「……うん、助かったわ。ありがとう」


 イリスは一人で仕留めたかった気持ちが強かったが、正直に言えば分が悪かったのも事実だ。


「ダメね、あの程度の相手に苦戦するようじゃ……。デュベルだったら片手で捻ってたのに」


 『守護七星』のうち、《貪狼星(どんろうせい)》以外の六つは邪教徒の手に渡っている。

 つまり、あのデュベルと同等か、それ以上の強敵が六人も控えているのだ。

 それに立ち向かうためには、自分も少なくともデュベルと同等の力を手に入れなければならない。


「……もっと強くならないと」


 そっと呟くイリス。

 それが聞こえたのか否か、裕真のスマホから明るい声が響いた。


「そうそう、その通りですよ♪ だからこそ《貪狼星(どんろうせい)》は他人に預けちゃダメなんですって!」


 我が意を得たりと笑みを浮かべるアコルル。

 その笑顔の真意を、この時点ではまだ誰も理解していなかった。




【RESULT】


獲得賞金 4,180,000マナ

素材+魔石 200,000マナ


 計 4,380,000マナ




■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■  



第10ステージ  【ゴブリンタウン】


 建造:約1,200年前(魔法帝国時代)

 危険度D:中堅ハンター向け


魔法帝国時代の住宅街の遺跡。

現在はゴブリンに占拠されており、ゴブリンタウンと呼ばれている。



【 潜伏賞金首 6体 】



【ゴブリンマジシャン】

 討伐Lv10 賞金10,000マナ


ゴブリンの魔法使い。

人間から奪った魔導書を使い、独学で魔法を習得した努力家である。


〔スキル〕

〈魔力上昇〉 魔力が上昇する

〈器用上昇〉 器用さが上昇する

《魔法の素質》 魔法を習得しやすくなる




【ゴブリン・トーチャー】

 討伐Lv24 賞金100,000マナ(生け捕りなら三倍)


ゴブリンの拷問吏。

捕えた獲物を(ゴブリン基準で)美しくするアーティストである。

報復したがっている人がいるので、生け捕りにすると報酬が上がる。


〔スキル〕

〈器用上昇(大)〉 器用さが大幅に上昇する

〈拷問術〉 対象を肉体・精神の両面から追い詰め、自白させる技術

〈医療知識〉 人体に詳しくなり、回復魔法やポーションの効果が上がる




【レッドキャップ】

 討伐Lv28 賞金100,000マナ


ゴブリンの上位種。

犠牲者の血で染め上げた赤い帽子を被っているのが特徴。

性格は極めて残忍で狡猾、隠密行動からの暗殺を得意とする。


〔スキル〕

〈器用上昇(大)〉 器用さが大幅に上昇する

〈隠密行動〉 気配を消し、忍び寄る技術を得る

〈急所狙い〉 急所を正確に狙い、致命傷を負わせる




【バグベア】

 討伐Lv24 賞金50,000マナ


ゴブリンの変異種。全身毛むくじゃらで獣人のような容姿をしている。

怪力で、人の子供の肉が好物。


〔スキル〕

〈怪力〉 筋力が大幅に上昇するが、自身の肉体にダメージを負う

〈耐久上昇(大)〉 耐久力が大幅に上昇する

〈隠密行動〉 気配を消し、忍び寄る技術を得る




【ゴブリン・ジェネラル】

 討伐Lv36 賞金300,000マナ


ゴブリンの群れを統率する将軍。

特に優れた戦士が就任するが、腕力で無理矢理従わせるため、さほど人望はない。


〔スキル〕

〈筋力上昇(大)〉 筋力が大幅に上昇する

〈敏捷上昇(大)〉 敏捷力が大幅に上昇する

〈武器適正上昇〉 武器の取り扱いがとても上手くなる

〈戦士の心得〉 臨戦態勢に入ると全体的な能力が上昇する




【ゴブリン・シャーマン】

 討伐Lv35 賞金400,000マナ


ゴブリンの精霊使い。集落の儀式全般を取り仕切る。

ゴブリンにとっての精神的支柱であり、ゴブリン・ジェネラルと権勢を二分する存在である。


〔スキル〕

《魔力上昇(大)》 魔力が大幅に上昇する

〈魅力上昇(大)〉 魅力が大幅に上昇する

《シャーマニズム》 精霊と交信し、使役する能力に長ける

《グラムアイ》 霊魂や精霊など、通常では目に見えない霊的存在を見る



■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■  



 その街は1,200年前の遺跡であるにも関わらず、家屋の形を保ったものが数多く残っていた。これは魔法帝国が施した自己修復魔法の恩恵である。

 継ぎ目のない白い石造りの建物がずらりと並び、整然とした景観は新興住宅街を思わせる。

 多少の汚れはあるものの、掃除をすればそのまま人が住めそうなほどの保存状態だった。

 ただし、この土地に満ちる濃厚な魔力をなんとかしない限り、魔物の脅威に晒され続けることになる。だからこそ人は定住せず、代わりにゴブリンが巣くう街――ゴブリンタウンと化していた。


「けっこう広い街だな……。こっから賞金首を探すのは骨だな」

「ゴブリンも千体以上いるって話ですし。いっそう見つけ難いですね」


 裕真のつぶやきにアニーが応じる。

 その姿はすでに元に戻っていた。マジカルエステの効果は三日ほどらしい。


 攻略方法を思案する裕真に向かって、イリスが声を張った。


「任せて! 私に策があるわ!!

「おっ 頼もしい! 任せた!!」


 クイーン戦で落ち込み気味だったイリスが元気よく言い切る姿に、裕真はほっとする。


「あ、みんなは街から離れていてね! 危険だから!」

「……??? なにをする気で?」


 裕真の問いに答えるよりも早く、イリスは背中から翼を生やし、天高く舞い上がった。『グリフォン』の飛行能力である。


 そして空から一気に『オティフ』の毒ガスを散布する。

 貯め込んでいたLPの大半を注ぎ込み、街全体を毒の霧で覆い尽くした。


 血を吐き、悶え苦しみながら次々と絶命していくゴブリンたち……。

 こうしてゴブリンタウンは一瞬で制圧された。




【RESULT】


獲得賞金  960,000マナ

素材+魔石 100,000マナ


計 1,060,000マナ




 殲滅を終えて地上に降り立ったイリスは、胸を張って言った。


「どうよ! 簡単に片付いたでしょ♪」


 だが仲間たちの顔は一様に渋い。


「イリス……。これって『危険度A』に該当するんじゃないか? 使っちゃって大丈夫なのか?」


 魔法には『使用許可ランク』が存在する。

 先ほどのような広範囲への毒ガス散布は『危険度A:深刻な環境汚染を伴う魔法』に分類され、本来なら『一国の領主の許可』か『Aランクハンターの資格』が必要なのだ。違反すれば重罰は免れない。


「う……っ! ま、魔法じゃなくて、魔物のスキルだから大丈夫!」


 おろおろしながら弁解するイリスに、アニーとラナンが冷ややかに追撃する。


「衛兵隊に聞かれたら“魔物から奪ったスキルを使いました”って説明するんですか? そっちの方がヤバイと思います」

「ていうか、他にハンターのパーティがいたらどうすんだよ? 巻き添えにしてたかもしれねぇんだぞ」


 イリスはぐっと言葉に詰まる。


「うう……今は皆、例のダンジョンの方に行ってるから……」


 そう答えたものの、自分でも苦しい言い訳だと分かり、しゅんと肩を落とす。


「……ごめんなさい、調子に乗り過ぎました。私としたことが……」

「まぁ、この件は俺たちだけの秘密にしよう」


 イリスが反省しているのを見届け、話はそこで打ち切られた。

 なお裕真はこの後すぐ、大急ぎで街へ引き返し、《浄化の杖》を購入。解毒魔法で汚染されたゴブリンタウンを綺麗に洗浄したのだった。



【 今回17体討伐 残り16体 】




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