第41話 賞金首100体狩り!(破)
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第5ステージ 【アンタレスの殻】
建造:約900年前(オリオン連合王国建国時)
危険度D:中堅ハンター向け
神喰らいの魔物、超巨大サソリ『アンタレス』の殻。
大英雄オリオンに敗れたが、まだ完全に死んでおらず、殻の内側では肉が再生し続けている。
だが、他の魔物が肉を食べることでアンタレスの復活を阻止している。
【 潜伏賞金首 10体 】
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裕真は眼前の光景に言葉を失った。
大地に横たわるのは、山脈のごとき巨大な殻。草木が根を張り、亀裂からは滝が流れ落ちている。それは自然の一部に溶け込みながらも、なお異様な存在感を放ち、大地そのものが魔物に姿を変えたかのようだった。
説明では聞いていたが、それが一体の魔物の成れ果てた姿だと理解するまでに、しばし時間を要した。
少なく見積もってもその全長は500mに達する。
地球のものと比較すれば、ジャンボジェットが70m、豪華客船でも300mほど。いかにこのサソリが規格外かが分かる。
この怪物と比べれば、あのデュベルでさえ赤子同然だろう。かつてこんなものが大地を蹂躙していたのかと思うと、背筋が冷たくなる。
しかも、これをたった一人の英雄が討ち果たしたというのだから驚きだ。
大英雄オリオン……いったいどんな人物だったのだろう。
もしや、自分と同じように神々から力を授かった『勇者』だったのか?
いや、神々が介入するのは「人類に解決できない問題が起きたときだけ」だと聞く。ならば違うのか……いやしかし、全長500mのサソリは十分『勇者』案件じゃないか? ……などと考えていると、イリスが声をかけてきた。
「ここの魔物は、賞金首以外殺さない方が良いわ。アンタレスを食べる係が居なくなっちゃうからね」
これも事前に聞かされていた話だが、改めて耳にするとゾワリとする。
そう、このサソリは殻だけの状態になってから九百年経った今なお、死にきらずに再生を続けているのだ。
それを文字通り“食い止めている”のが、ここに群れる虫系魔物たちだ。
「……アンタレスが復活したらどうなる?」
「伝説通りなら数万、数十万の犠牲が出るでしょうね。ゴッドイーターは一国の軍隊に匹敵すると言われてるし」
裕真「怖い話だな……分かった、賞金首以外の虫は無視する! ム シ だ け に !!」
「ええ、それが良いわ」
「……」
「……」
しばし沈黙が流れる。
そしてふと、イリスが目を瞬かせた。
「あ……もしかして今の、虫と無視を掛けたの?」
裕真は思わず顔を覆った。
滑ったギャグを冷静に分析されるほど、恥ずかしいことはない。
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【 賞金首 一覧 】
妖虫属【デッドスコルピオン】
討伐Lv10 賞金5,000マナ
致死性の猛毒を持つオオサソリ。毒対策必須。
〔スキル〕
〈猛毒の針〉 致死性の猛毒を持つ針を出す
〈敏捷上昇〉 敏捷力が上昇する
〈貫通〉 硬いものを貫きやすくなる
妖虫属【アイアンスコルピオン】
討伐Lv15 賞金5,000マナ
鉄の殻を持つオオサソリ。殻は鎧の素材として高値で取引される。
〔スキル〕
〈敏捷上昇〉 敏捷力が上昇する
〈防御上昇〉 防御力が上昇する
〈貫通〉 硬いものを貫きやすくなる
妖虫属【ヘッドバッシャー】
討伐Lv34 賞金200,000マナ
巨大な殺人カマキリ。両手の鎌で人間の首を切り落とす。
〔スキル〕
〈急所狙い〉 急所を狙った攻撃が上手くなる
〈筋力上昇(大)〉 筋力が大幅に上昇する
〈敏捷上昇(大)〉 敏捷力が大幅に上昇する
妖虫属【キングクロウラー】
討伐Lv12 賞金10,000マナ
巨大なイモムシ。異常に硬い。
農家の天敵であり、早急な駆除が求められる。
〔スキル〕
〈耐久上昇(大)〉 耐久力が大幅に上昇する
〈防御上昇(大)〉 防御力が大幅に上昇する
妖虫属【キング・モス】
討伐Lv20 賞金30,000マナ
キングクロウラーが羽化した姿。
耐久力は落ちたが、空を自在に飛び、毒の鱗粉を撒き散らす。
〔スキル〕
〈敏捷上昇(大)〉 敏捷力が大幅に上昇する
〈飛行能力〉 航空力学を無視して飛べる
〈毒の鱗粉〉 有毒な鱗粉を撒き散らす
宇虫属【モスマン】
討伐Lv3 賞金500,000マナ(生け捕りのみ)
直立した蛾のような姿をした怪物。
来歴不明で謎が多い。捕獲して研究機関に売り払おう。
〔スキル〕
〈テレポート〉 瞬間移動が可能
〈チャネリング〉 宇宙と交信する
妖虫属【メタルアント・ソルジャー】
討伐Lv10 賞金5,000マナ
地底で金属鉱石を食べ、鉄のように硬い殻を得た蟻。
ドワーフの天敵。
〔スキル〕
〈鉱物食〉 鉱物を食べて養分にする
〈貫通〉 硬いものを貫きやすくなる
〈防御上昇〉 防御力が上昇する
妖虫属【メタルアント・コマンダー】
討伐Lv18 賞金20,000マナ
メタルアントの指揮官。早めの討伐が推奨される。
〔スキル〕
〈鉱石食〉 鉱石を食べて養分にする
〈貫通〉 硬いものを貫きやすくなる
〈防御上昇(大)〉 防御力が大幅に上昇する
妖虫属【ヒトジゴク】
討伐Lv33 賞金150,000マナ
巨大なアリジゴク。その名の通り人間を好んで捕食する。
〔スキル〕
〈流砂〉 地面を流砂に変える
〈地中移動〉 地中を移動でき、窒息もしない
〈防御上昇(大)〉 防御力が大幅に上昇する
〈貫通〉 硬いものを貫きやすくなる
妖虫属【アルケニー】
討伐Lv25 賞金50,000マナ
上半身は美女、下半身は蜘蛛の姿をした魔物。外見は人型でも、中身は昆虫であり、人間をエサとしか見ていない。
〔スキル〕
〈蜘蛛の糸〉 蜘蛛の糸を生成する
〈ロープワーク〉 紐状の物体の扱いが上手くなる
〈バランス感覚〉 不安定な足場でも問題なく動ける
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ここでも特に苦戦することはなかった。
強いて言えば、似た姿の個体がずらりと並ぶアント系の中から標的を見つけるのに、少し手こずった程度だ。
ひと仕事を終え、「さぁ帰ろうか」という段階になって、イリスが口を開いた。
「ねぇユーマ、これを見て」
そう言うと懐からスマホより一回り大きい青い板を取り出し、裕真に差し出す。
「ん? これは……『ステータスパネル』?」
ステータスパネル――所有者が受けている『精霊契約』や『祝福』を確認するための魔道具。
精霊術の授業で一度見たことはあったが、裕真は諸事情により精霊と契約できないことが判明したため、手にすることはなかった物だ。
イリスが指で表面をなぞると、淡い光と共に画面が切り替わる。
そこに並んだのは――
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[ イリス ]
〈 LP:220〉 《MP:150》
1.【スライム】 討伐Lv0
(スライム属性〉 毒無効/物理耐性/炎弱点 [OFF]
《毒素分解》 触れた有毒物質を無毒化する
《有機物吸収》 有機物であればなんでも吸収し栄養にする
2.【オティフ】 討伐Lv27
〈スライム属性〉 毒無効/物理耐性/炎弱点
〈腐食ガス〉 有機物や金属を腐食させるガスを吐く
〈毒ガス〉 命を蝕む毒ガスを吐く
〈超再生〉 極めて高い再生力を持ち、首が切れても再生する
3.【オーガ・デストロイヤー】 討伐Lv50
〈筋力上昇(大)〉 筋力が大幅に上昇する
〈耐久上昇(大)〉 耐久力が大幅に上昇する
〈敏捷上昇(大)〉 敏捷力が大幅に上昇する
〈戦士の心得〉 臨戦態勢に入ると全体的な能力が上昇する
4.【オーガ・ブッチャー】 討伐Lv40
〈筋力上昇〉 筋力が上昇する
〈魅力上昇〉 魅力が上昇する
〈調理〉 料理の腕が上がる
〈解体〉 獲物を上手に解体し、素材の価値を高める
5.【キング・モス】
〈敏捷上昇(大)〉 敏捷力が大幅に上昇する
《飛行能力》 空を飛べる 航空力学的に無理がある形状でも飛行可能
〈毒の鱗粉〉 有毒な鱗粉を撒き散らす
6.【ヒトジゴク】
〈流砂〉 地面を流砂に変える
〈地中移動〉 地中を移動でき、窒息もしない
〈防御上昇(大)〉 防御力が大幅に上昇する
〈貫通〉 硬いものを貫きやすくなる
7.【アルケニー】
〈蜘蛛の糸〉 蜘蛛の糸を生成する
〈ロープワーク〉 紐状の物体の扱いが上手くなる
〈バランス感覚〉 不安定な足場でも問題なく動ける
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「……! これはもしかして、魔物から手に入れたスキルの一覧?」
裕真、思わず声が上ずる。
「そうよ、アコちゃんがパネルを改良してくれたの。ユーマのスマホを使わなくても、これで確認出来るようになったわけよ」
その説明に応じるように、スマホからアコルルの声が響いた。
「本当はもう一台スマホを用意できれば良かったのですが、流石に私の技術では……」
「いや、十分凄いよ、ありがとう!」
裕真が素直に笑みを向けると、イリスがパネルとスマホを見比べて言う。
「私はこっちの方が助かるけどね。そんな小さな板じゃ目が痛くなるわ」
「……イタだけに?」
裕真、ぽそりと呟く。
「え? 何か言った?」
「いや、何も」
素知らぬ顔をする裕真の隣で、アニーが感心したように声をあげた。
「へぇ~、なるほど。マイラで狩った魔物より強そうなスキルが……あれ? スライムだけは残したんですね」
イリスは胸を張り、得意げに答える。
「そうよ、毒攻撃してくる魔物って多いじゃない? だから毒を防ぐスキルは外せないわ」
アニーは「なるほど」とうなずき、今度はラナンが興味深そうに身を乗り出す。
「〈敏捷上昇(大)〉がふたつあるけど、効果が倍になったりするのか?」
「ええ、重複しただけ強くなるわ。ただし消費する〈LP〉も増えるけど」
「LPってなんだ? MPは分かるけど」
「え~と……」
言葉を探すイリスに代わって、アコルルが説明を引き取った。
「あ、私からご説明いたします〈LP〉とは『ライフポイント』の略。魔物から奪った生命力のことですね」
その一言で、皆の顔に納得の色が浮かぶ。
最初に《貪狼星》について説明された時、「魔物スキルと魔力と生命力を奪う能力」と聞いたのを思い出したのだ。
「肉体を活用するスキル――例えば〈筋力上昇〉を使用する場合、MPではなくLPを消費します」
そう言うと、スマホの画面にスキル一覧が表示された。
「LP依存のスキルは〈〉、MP依存のスキルは《》で表記してあります。例えばスライムのスキル〈スライム属性〉はLP依存、《毒素分解》はMP依存といった具合ですね」
「ああ、なるほど……。それで表記が違うのか」
裕真はまじまじと画面を見つめ、感心の息を漏らした。
「そういうこと。せっかくのスキルもLP、MPを集めないと役に立たないってわけ。で、相談なんだけど、これからは私一人の力で敵を倒していこうと思うの。いちいち拘束するのも面倒でしょ?」
「えっ! 大丈夫か!? まだまだ強い賞金首がいるんだぞ?」
困惑を隠せない裕真。リストには討伐Lv50を超える強敵――トロル・キング級の魔物も含まれていたはずだ。
だが、アコルルは静かに微笑んだ。
「心配いりませんよ、陛下。もうイリスさんは超人と言っても過言じゃない力を得ています」
「……マジで? 《貪狼星》を手に入れて3ヶ月ぐらいだぞ? そんなに早く超人になれるもんか?」
信じがたいと眉をひそめる裕真に、アコルルは自信たっぷりに言い切った。
「《貪狼星》の力を信じて下さい。我が帝国が開発した究極の魔法なんですから」
【RESULT】
賞金合計 975,000
魔石+素材 100,000
計 1,075,000マナ獲得
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第6ステージ 【 秘密の花園 】
建造:約4000年前 (エルフの時代)
危険度E:初級ハンター向け
植物大好きなお姫様が造った秘密の植物園。
なぜ秘密なのかというと、栽培が禁じられている植物系魔物まで育てていたからである。
【 潜伏賞金首 5体 】
妖樹属【完熟マンドラゴラ】
討伐Lv15 賞金10,000マナ
未成熟のマンドラゴラは地中に埋まっているが、完全に育つと土から出て歩き回る。
それが完熟マンドラゴラである。
道行く人に音波攻撃を浴びせる迷惑な植物だが、煎じて飲むと鼻血が出るほど精が付く。
〔スキル〕
〈植物属性〉 物理・水・雷耐性/炎・毒弱点
〈光合成〉 光と水だけで栄養を賄える
《悲鳴》 広範囲の音波攻撃 同士討ちに注意
〈栄養満点〉 身体が精力剤になる 一口齧れば精力がみなぎる
妖樹属【ネック・ハンギング・ツリー】
討伐Lv25 賞金25,000マナ
無数の蔓を自在に操る樹木。
その蔓で獲物を締め殺し、噴き出た体液を養分にする。
〔スキル〕
〈植物属性〉 物理・水・雷耐性/炎・毒弱点
〈筋力上昇(大)〉 筋力が大幅に上昇する
〈触手〉 自分の意思で自在に動かせる触手を生やす
妖樹属【エビルトレント】
討伐Lv30 賞金40,000マナ
狂暴な樹木人。通常のトレントは穏やかだが、こいつのように例外も存在する。
10mを超える巨体でのしかかり、押し潰そうとしてくる。
〔スキル〕
〈植物属性〉 物理・水・雷耐性/炎・毒弱点
〈耐久上昇(大)〉 耐久力が大幅に上昇する
〈巨体〉 身体が巨大化、筋力・防御力・耐久力が上昇 ただし被弾面積も増えるので注意
妖樹属【ラフレシア】
討伐Lv35 賞金100,000マナ
巨大な花の怪物。元は腐った果実のような臭いで獲物を誘う食虫植物だったが、大量の魔力を浴びて暴走。
獲物が来るのを待たず、自ら探しに行くようになった。
〔スキル〕
〈植物属性〉 物理・水・雷耐性/炎・毒弱点
〈耐久上昇(極大)〉 耐久力が桁違いに上昇する
〈触手〉 自分の意思で自在に動く触手を生やす
〈悪臭ブレス〉 眩暈と吐き気を催す悪臭の息を吐く
妖樹属【ナルキッソス】
討伐Lv17 賞金50,000マナ
一見すると頭から白い花を咲かせた美青年だが、実は立派な植物。常に自分の美しさに酔いしれている。
その体液は危険な麻薬の原料となるため、討伐後は持ち帰らず速やかに焼却すること。
〔スキル〕
〈植物属性〉 物理・水・雷耐性/炎・毒弱点
〈光合成〉 光と水だけで栄養を賄える
〈自己陶酔〉 強い自己肯定感により全能力が上昇、精神攻撃無効 ただし周囲からは不気味に映る
《魅惑の花粉》 魅了効果のある花粉を散布する
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その庭園には、四季を問わず色とりどりの花が咲き乱れていた。
一見すれば楽園のような美しさ。だがそれは、獲物を誘い込むための罠。
根を張り巡らせ、養分を求める食人植物たちが息をひそめて待ち構えているのだ。
だが、本日養分となるのは彼らの方だった。
―― スキル発動! ――
【オーガ・デストロイヤー】
〈筋力上昇(大)〉
〈戦士の心得〉
【オーガ・ブッチャー】
〈筋力上昇〉
〈解体〉
【ヒトジゴク】
〈貫通〉
三体分の魔物スキルが同時に重なり合い、イリスの攻撃力は桁違いに上昇した。
剣の一振りで鉄のように硬いエビルトレントを真っ二つに叩き割る。十数メートルの巨体が轟音を響かせながら倒れ伏した。
その光景に仲間たちは目を見開き、感嘆の声を上げる。
「おおっ、強い! ほんとに一人で片付けた!!」
「すげぇな! ホントに超人じゃねぇか!!」
「いやはや……なんとなんと……」
称賛の声に、当のイリスも目を丸くした。
「自分でも驚いてるわ……なんて言うか倒せば倒すほど力が漲って……ドラゴンでも巨人でもドンと来いって感じ!!」
興奮に頬を上気させるイリス。その熱を冷ますかのように、アコルルの落ち着いた声が響いた。
「ふふふ……お喜びいただけて何よりです。ですがお気をつけ下さい。貴方は強くなりましたが、無敵になったわけではありません。己が力を過信すると、前の所有者のように足元を掬われますよ」
「ん……そうね。わかったわ」
アコルルの言葉に、前の所有者――デュベルの最後が脳裏に浮かんだ。イリスは緩んでいた表情筋を引き締める。
「なぁなぁ! 今度、俺にも貪狼星貸してくれよ♪」
「いいわよ」
ラナンの無邪気な頼みに、イリスはあっさりと承諾した。
「え!?」
アコルルは顔色を変え、慌てて声を上げる。
「いやいや! ダメですって!! 他の人に渡したら、せっかく集めたスキルがリセットされちゃいますよ!!」
「え? そうなんだ?」
イリスは目を瞬かせたが、すぐに腕を組んで考え込む。
「でも、そのデメリットを差し引いても、全員が使い方を知ってた方が良くない?」
「そ……それは……一理ありますが……うーん……」
アコルルは言葉に詰まり、困惑の色を浮かべる。
裕真はその様子を見て、彼女の心中を察した。『守護七星』は本来、皇帝専用の魔法で、軽々と人に貸し与えるようなものではなかったのだろう。アコルルが戸惑うのも無理はない。
「あ~、いや、それなら俺はいいや。また集め直すのも面倒だろ?」
ラナンは片手で頭を掻き、あっさりと引き下がる。
「え……本当にいいんですか?」
「なんだよ? お前がダメって言ったじゃん」
「そ……そうですが……ええと……」
歯切れ悪く答えるアコルルを見て、裕真はまたも察した。
彼女にとって『守護七星』は誰もが欲するスーパーパワーのはずだ。だからこそ、ラナンがあっさり諦めたことに拍子抜けしているのだろう。
【RESULT】
獲得賞金 225,000マナ
魔石+素材 150,000マナ
計 375,000マナ
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第7ステージ 【おいでよ! 淫獣の森】
建造:約6,900年前 (天魔戦争時代) .
危険度F:命の危険はない
地上に侵攻してきた大魔王が建造した、淫靡で冒涜的なテーマパーク。
大魔王は人類を堕落させる為、こうした施設を世界各地に残していったという。
淫らな森の仲間達が、君を待っている!
【 潜伏賞金首 24体 】
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そこは一目で異常と分かる景観だった。
自然界ではまず見られない蛍光ピンクやライトグリーンの樹木が、鬱蒼と生い茂っている。
幹には脈打つような光が走り、枝先にはハート型や星型をした果実が鈍く輝き、毒々しい色合いで森全体を彩っていた。
どこか夢の国めいた華やかさと、不快なほどの淫靡さが混じり合い、背筋にぞわりとした寒気を呼び起こす。
『アンタレスの殻』も十分に異様な光景だったが、それとはまた質の違う不気味さを漂わせていた。
「遂に来てしまいましたね……。ある意味、ここが一番危険なダンジョンです」
アニーが顔を引きつらせながら、恐々と声を潜める。
その反応はこれまでのダンジョンでは一度も見せなかったもので、裕真は思わず問い返した。
「??? 危険度は最低の『F』って書かれてるけど?」
「それは『命の危険が無い』というだけで、命以外の大切なモノが危険に晒されます。……具体的に言うと、理性と貞操と尊厳です」
「はあ!?」
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ケース1:真面目なハンターだったRさん
品行方正で知られ、家族にも恵まれていたRさん。
だが、淫獣の森に足を踏み入れたことで、内なる獣が覚醒する。
後日、彼は頭をモヒカンに剃り上げ、ぴっちりとしたレザーパンツに身を包み、夜ごと“男狩り”に繰り出すようになった。
ケース2:将来有望だった天才剣士K君
容姿と才能に恵まれ、美しい恋人を持ち、将来を嘱望されていたK君。
だが、淫獣の森を訪れたことで、心の奥底に隠していた想いに気付いてしまう。
今では“彼”は“彼女”となり、優しい夫とともに幸せな家庭を築いているという。
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「――と、いうことがあったのです」
「よし! 帰ろう!!」
アニーの話を聞き終えるや否や、裕真は即座に踵を返す。
だがイリスが慌てて彼の腕を掴み、制止した。
「ダメよ、ユーマ! ここは賞金首が24体も出てるのよ!? それを見逃すなんてもったい……いやいや! 放っておいたら犠牲者が増えるのよ!!」
「うう……そう言われると、見過ごせないけど……」
苦虫を噛み潰したような顔で、裕真は再び淫獣の森へと向き直った。
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※賞金首の淫獣、淫魔たちですが、一部不適切な表現が含まれています。ですので問題のある箇所を伏字にし、解説も控えさせて頂きます。ご了承下さいませ。
淫魔属【サキュバス(ノーマル)】
討伐Lv10 賞金200,000マナ (生け捕りのみ)
淫魔属【サキュバス(ロリ)】
討伐Lv5 賞金300,000マナ (生け捕りのみ)
淫魔属【サキュバス(ふ〇なり)】
討伐Lv33 賞金300,000マナ (生け捕りのみ)
淫魔属【インキュバス(受け)】
討伐Lv10 賞金100,000マナ (生け捕りのみ)
淫魔属【インキュバス(攻め)】
討伐Lv17 賞金100,000マナ (生け捕りのみ)
淫魔属【インキュバス(男の娘)】
討伐Lv8 賞金800,000マナ (生け捕りのみ)
淫獣属【服だけ溶かすスライム】
討伐Lv1 賞金30,000マナ (生け捕りのみ)
淫獣属【乳首ねぶりスライム】
討伐Lv1 賞金30,000マナ (生け捕りのみ)
淫獣属【〇〇〇ねぶりスライム】
討伐Lv1 賞金30,000マナ (生け捕りのみ)
淫獣属【人格排泄スライム】
討伐Lv30 賞金120,000マナ (生け捕りのみ)
淫獣属【丸呑みプレイ大ガエル】
討伐Lv5 賞金50,000マナ (生け捕りのみ)
淫獣属【ワイダーン】
討伐Lv20 賞金10,000マナ
淫獣属【奪衣ローパー】
討伐Lv3 賞金30,000マナ (生け捕りのみ)
淫獣属【くすぐりローパー】
討伐Lv3 賞金30,000マナ (生け捕りのみ)
淫獣属【媚薬分泌ローパー】
討伐Lv3 賞金100,000マナ (生け捕りのみ)
淫獣属【ぬるぬるいぼいぼウツボカズラ】
討伐Lv13 賞金50,000マナ (生け捕りのみ)
淫獣属【チ〇コカトリス】
討伐Lv4 賞金10,000マナ (生け捕りのみ)
淫獣属【マン〇ラゴラ】
討伐Lv6 賞金20,000マナ (生け捕りのみ)
淫獣属【チ〇コーン】
討伐Lv45 賞金300,000マナ
淫獣属【ホ〇ゴブリン】
討伐Lv13 賞金30,000マナ (生け捕りのみ)
淫獣属【魔獣先輩】
討伐Lv15 賞金10,000マナ
淫獣属【妖獣先輩】
討伐Lv30 賞金100,000マナ
淫獣属【怪獣先輩】
討伐Lv43 賞金400,000マナ
妖精属【パック】
討伐Lv25 賞金300,000マナ (生け捕りのみ)
いたずら大好きな妖精。
今一番気に入っている遊びは、真面目な人間をこの森に誘い込み、新たな性癖を目覚めさせること。
〔スキル〕
《ラブ光線》 恋愛感情を操る光線を放つ
《変身光線》 対象を任意の姿に変身させる光線を放つ
《混乱光線》 対象を混乱させる光線を放つ
《声真似》 他人の声を真似る 声紋鑑定でも見破れない
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
裕真は麻痺させたパックを《どうぐぶくろ》に放り込み、ほっと息をついた。
これで、このダンジョンでの狩りはすべて終了だ。
ターゲットのほとんどが「生け捕り指定」だったこともあり、この神器は大活躍だった。
【RESULT】
賞金総額 3,450,000 .
素材+魔石 200,000 .
計 3,650,000マナ獲得
「ふう……なんとか全部片付いた。思ったより危険は無かったな」
額の汗を拭い、やり遂げた充実感にひたる。
「よくよく考えてみれば、変なことされる前に捕まえれば良いだけで、普通の魔物退治と変わらないじゃないか。案ずるより産むが易しってやつだな!」
ははは、と爽やかに笑う。
――が、なぜか誰も笑い返してこない。
ラナンもアニーもイリスも、そろって目を丸くし、裕真を凝視している。
「ユーマ! 胸! 胸!!」
イリスが裕真の胸を指差して叫んだ。
「………胸?」
言われるままに、視線を落とすと……
「ひゃあぁぁぁぁっ!? 俺の胸がセクシーダイナマイツに!!」
両手に収まりきらないほどの柔らかな膨らみ。それはイリスのものより大きかった。
腰は細く、指先は白魚のようにしなやか。髪までさらりと艶やかに伸びている。
……どう見ても、完璧に女体化していた。
「あ~……こりゃアレだ。パックの《変身光線》をくらっちゃったな」
「まあ他に考えられませんね……」
二人は口元を押さえ、今にも吹き出しそうだ。
「んなアホな! 毒とか呪いとかの耐性装備も身に着けたんだぞ!(あと笑うなや!!)」
怒鳴ったつもりが、可愛らしい高い声がダンジョンに響いた。
そこへスマホからアコルルの声が届く。
「陛下、よろしいでしょうか? 変身光線を防げなかった理由ですが、おそらく『生命属性』の魔法だったからでしょう」
「生命属性……? 回復魔法とかの?」
「はい、そうです。他にも身体強化魔法が含まれますね。それで陛下のおっぱいを増量……プププ……す……すいません……」
画面の向こうで、目に涙を貯め笑いをこらえている姿が見える。
そんな彼女に(笑うんじゃない!)と心の中でつっこみながら裕真は呟いた。
「……じゃあ街に帰ったら、生命属性耐性の装備を買うか」
「いえ、それはオススメできません。耐性を付けると回復魔法や強化魔法も効かなくなるのですよ? 《ハヤブサの腕輪》(運動神経強化)や《ゴリラアーム》(腕力強化)も機能しなくなります」
裕真は愕然とした。
強化魔法が無ければ自分は凡人並の身体能力しかない。強敵に遭遇したら瞬殺されてしまう。
「マジで……。う〜む、ゲームみたいに有益な魔法効果だけ残すって出来ないわけか……」
「まぁ、受けないよう回避するか、受けても解呪魔法で打ち消する方向で対策するのがよろしいかと」
なおも顔を曇らせる裕真を安心させるように、アコルルは続けた。
「それに生命属性を使った攻撃魔法は非常に効率が悪く、帝国でもほとんど研究されませんでした。ですのでその使い手に遭遇する機会など滅多にないかと」
「……さっき一体出会ったばかりだけど」
先行きに不安を覚える裕真であった。
【 今回39体討伐 残り33体 】




