第4話 奴隷少女
女の子の部屋にお泊まり。
男子なら、誰もが1度は思い描いたことがあるだろう。
もしも、好きな女の子と一緒に食事ができたら......
もしも、憧れのあの子と同じ部屋で寝られたら......
そんな状況に、アランはおちいっていた。
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「あっ、でもお腹空いてるわよね? 私も夕食はまだなの。お金は私が出すから、まずは何か食べに行きましょ。食べたい物とかはある? 私、食べ物屋さんについては結構詳しいのよ」
俺が何か答えるまでもなく、これから食事することが決定した。
でも、確かにお腹空いたな......できればカレーライスが食べたいけど、この世界にはないんだよな......
「ほら! いつまでもこんな所に居ないで早く町に入りましょ」
強引に腕を引っ張られながらも、ようやく町に入る事ができた。
彼女は宿を貸してくれるとも言ってくれたけど、そこまで迷惑はかけられない。それによく考えたら俺は実年齢33歳なんだし、ご飯代も自分の分は自分で払って別れよう......
(いや......そうじゃないだろ......)
それじゃあどのみち金が足りなくなる。
いまは無駄なプライドを張ってる場合じゃない。
ここは好意に甘えるとしよう......
「あの......どこで食べるかは、おまかせしていいですか? やっぱりこういうのは詳しい人が決めるべきだと思いますし......」
「うーん......それもそうね! だったら、私がこの町で一番美味しいと思う所に連れてったげるわ!」
これでいい。
一宿一食の恩義に預かったら、お礼をしてすぐ王都に向かうとしよう。
「でもここは町の外門だし、あそこまでだと時間が掛かっちゃうわね......ねえ、少し近道するけど大丈夫?」
「大丈夫ですよ」
近道するのにわざわざ聞かなくていいのに。
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(近道ってこういう事か......)
俺はあからさまに治安の悪い裏道を通っていた。
道端にいるあからさまにガラの悪い奴らは、俺の隣で歩いている彼女を見なかまら小声で何か話していた。
何を話してるんだろ?
「おい! なんであいつがこんな所にいんだよ!」
「知るかよ。誰かがヘマしたんじゃねぇの?」
「お前ら静かにしろ。聞こえたらどうする」
聞こえてるぞ。
それにしてもこのビビリよう。さっきといい今といい、この子は何者なんだ? ただの一般人ではないと思ってたけど、やっぱり只者じゃないって事か?
いずれにせよ、トラブルになるのはごめんだ。
早いとここんな所は抜けよう。
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「ははっ、もう逃げらんねぇぞ」
「嫌だ! 誰か助けてぇー」
「こんな所に助けなんてこねぇよ」
(おいおい、勘弁してくれよ......)
絵に描いたような悪事が繰り広げられていた。
トラブルには巻き込まれたくないと思った矢先にこれである。
こんな光景を見て、詐欺に会いそうになっていた俺を助けてくれるぐらい、正義感の強い彼女が黙ってる訳......
「そこまでよ」
やっぱり。
「てめえは......!」
悪漢はそう言った直後、なにやら言い訳を並べはじめ、意味がないと分かると走って逃げていった。
この光景、今日二度目だな。
一度目は突然の事過ぎて気付かなかったが、大の男が高校生くらいの女の子から顔を青くしながら逃げるってめちゃくちゃダサいな。
そうこうしている内に、あたりの人は居なくなり俺達だけになった。
「もう大丈夫よ。怪我はない?」
「ぐすっ、ぐすっ......だいじょうぶです......たすけてくれてありがとうございます......」
中学生くらいか? 服も薄い布切れで足枷も着いてるし、もしかして奴隷とかなのかな?
奴隷だとしたら、この場合どうなるんだろう?
奴隷は人間扱いされず、飼い主の所有物の扱いだ。
この場合、人の物を勝手に取った事になっちゃうんじゃないか?
俺がこの状況を頭の中で整理していると、少女は唐突にこう言ってきた。
「あの......わたしをつれていってくれませんか......」