第二十三章 聞かれた言葉
京の町に朝の人通りが増える頃、河原町の近江屋では、醤油樽を積んだ荷車が店先を離れようとしていた。
車輪が石畳の継ぎ目に引っかかり、荷車を押す奉公人が一度足を止める。もう一人が後ろから力を貸すと、樽を積んだ車はゆっくり動き出した。
「曲がり角では気をつけておくれ。昨日の雨で、まだ道が悪いところがあるから」
主人の声に、奉公人たちは返事をして出ていった。
店の奥では、別の奉公人が空いた樽を確かめていた。蓋の具合を見て、縄の緩みを直し、使えるものと修理の必要なものを分けていく。
近江屋にとっては、いつもと変わらない朝だった。
その二階で、坂本龍馬は勝海舟から届いた書状をもう一度読んでいた。
昨夜までに何度も目を通したものだったが、西郷に会う前に、書かれていることを自分の中で整理しておきたかった。
勝は、徳川家を守りたいと考えている。
だが、ただ幕府を以前の姿に戻そうとしているわけではない。
政権を返した以上、新しい仕組みを考えなければならないことも分かっている。その一方で、これまで幕府を支えてきた者たちが、簡単に考えを変えられるはずもないと見ていた。
龍馬は書状を畳み、懐にしまった。
西郷もまた、長い年月をかけて今の考えに至った男だった。
互いに譲れないものがあるなら、まずそれを確かめたい。
龍馬は立ち上がり、身支度を始めた。
*
同じ頃、京の町を歩く二人の土佐藩士がいた。
一人は三十を少し過ぎた男で、名を川田弥平という。もう一人は年下の松村新八だった。
二人は後藤象二郎の用向きで、坂本龍馬を訪ねることになっていた。
後藤から預かったのは、今後の政務に関する話をまとめた書付だった。
大政奉還を受けて、土佐藩の内でも新しい政治の仕組みについて議論が続いている。後藤は龍馬の考えを聞きたがっていたが、すぐに直接会うことは難しい。
そこで、二人に書付を託したのである。
ただし、二人が持っているのは正式な決定を求める文書ではなかった。
龍馬に知らせておきたいことを伝え、返事があれば持ち帰る。それが役目だった。
二人は河原町へ向かう途中、小さな飯屋に立ち寄った。
昼にはまだ少し早かったが、朝から歩いていたため腹が減っていた。
店の中には数人の客がいた。
商人らしい男が一人、壁際で飯を食べている。奥の席には旅装の男が二人座り、茶を飲みながら小声で話していた。
川田と松村は、入口に近い席へ腰を下ろした。
「飯を二つ頼む」
川田が声をかけると、店の者が返事をした。
松村は懐から小さな書付を取り出しかけ、川田に目で止められた。
「ここでは出すな」
「ああ、そうじゃった」
松村は慌ててしまった。
川田は茶を一口飲んだ。
「後藤様の言われたことは、覚えちゅうな」
「もちろんじゃ。書付を渡して、坂本殿の考えを聞く。それだけじゃろ」
「そうじゃ。こちらで勝手に返事を約束するなと言われちゅう」
松村は頷いた。
「けんど、坂本殿は本当に近江屋におられるがか」
「そう聞いちゅう。河原町の醤油問屋じゃ」
「醤油問屋か。宿屋ではないがじゃな」
「人目を避けちゅうのかもしれん。余計な詮索はせん方がええ」
松村は声を落とした。
「後藤様の使いと伝えれば、会ってもらえるじゃろうか」
「先に話は通しちゅうそうじゃ。まず店の者に取り次いでもらおう」
そこで飯が運ばれてきた。
二人は話をやめ、箸を取った。
壁際で飯を食べていた商人風の男は、茶碗を置いた。
その男は見廻組の探索に協力している者だった。
もともとは河原町周辺の人の出入りを調べるため、近くの店や通りを見て回っていた。飯屋へ入ったのも、昼食を取るためだった。
だが、今聞いた話には、確かめる価値があった。
後藤象二郎。
坂本龍馬。
河原町の近江屋。
男はその三つを頭の中で結びつけた。
川田たちが食事を終えるまで、男は何も言わずに座っていた。
*
昼過ぎ、龍馬は薩摩藩邸へ入った。
案内された部屋では、西郷隆盛が待っていた。
「坂本さぁ。よう来てくいやした」
西郷は立ち上がり、龍馬を迎えた。
「お久しぶりです、西郷どん」
龍馬が頭を下げると、西郷は穏やかに笑った。
「おはんが会いたかと言うてきた時は、何事かと思いもした」
「勝先生から書状が届きましてな」
龍馬は懐から書状を取り出した。
「幕府の内側が、今どうなっちゅうか。先生なりの考えが書かれちょります」
西郷は書状を受け取り、ゆっくり目を通した。
読み終えると、しばらく黙っていた。
「勝どんらしか言葉じゃ」
「そう思います」
龍馬は頷いた。
「勝先生は、徳川の家を守りたい。けんど、それだけを考えちゅうわけではありません。今ここで争いが起きれば、国の中がどうなるかを心配しちゅう」
西郷は書状を畳んだ。
「そいは、わしも同じじゃ」
龍馬は顔を上げた。
「ならば、戦を避ける道はありませんか」
西郷はすぐには答えなかった。
庭先で、風が木の枝を揺らした。
「坂本さぁ。わしも、戦をしたかと思うておるわけではなか」
西郷は静かに言った。
「じゃっどん、政を返したと言うても、これまで力を持っちょった者が、その力を手放すとは限らん。形だけ変えて、また同じことを繰り返すようでは、新しか国にはならん」
龍馬は頷いた。
「それは分かります」
「徳川の家をどう扱うか。それも大事じゃ。じゃっどん、徳川だけの問題ではなか。諸藩がどうするか、朝廷がどう決めるか。誰もが自分の立場を守ろうとする」
「そうじゃからこそ、話し合う必要があると思うちょります」
西郷は龍馬を見た。
「おはんは、まだ話で道が開けると思うちょるとか」
「全部が話で済むとは思いません」
龍馬は答えた。
「けんど、話もせんうちから刀を抜けば、あとでどれだけ悔やんでも、死んだ者は戻りません」
西郷は黙って聞いていた。
龍馬は続けた。
「幕府の者にも、薩摩の者にも、長州の者にも、それぞれ守りたいものがある。そこを知らずに相手を押し切ろうとすれば、恨みだけが残る」
西郷は少し目を伏せた。
「恨みか」
「はい」
「そいも、分かっちょるつもりじゃ」
西郷は顔を上げた。
「じゃっどん、坂本さぁ。今までの仕組みで苦しんできた者もおる。その者たちに、もう少し待てと言い続けることも、わしにはできん」
龍馬は静かに頷いた。
西郷の言葉には、薩摩で生きてきた年月があった。
龍馬にも、それは分かる。
だからこそ、簡単な答えは出せなかった。
*
近江屋では、太郎が主人と荷運びの話をしていた。
店の奥には、修理を待つ樽がいくつか置かれていた。
主人はその一つを指さした。
「これなどは、見た目には何ともありませんが、底の締まりが少し悪いのです」
太郎は屈んで樽を見た。
「これでは、船で揺られた時に漏れるかもしれませんな」
「そうです。荷を積む時は問題なくても、運ぶ間に少しずつ減ってしまうことがあります」
太郎は頷いた。
「それで、受け取った側と揉めることもある」
「ええ。売った者は確かに満たして渡したと言い、買った者は届いた時に足りなかったと言う。間に入った運び手も困ります」
太郎は帳面を開いた。
「そういう時は、どうなさるがですか」
「まず、誰がどの時点で荷を確かめたかを調べます。それが分からなければ、話がこじれますから」
太郎は書き留めた。
「荷を渡す時と、受け取る時の記録が大事なんじゃな」
「そういうことです」
主人は笑った。
「才谷さんは、よく話を聞かれますな」
「わしは、まだ知らんことばかりですき」
太郎は顔を上げた。
「長崎から京へ品を運ぶ商いを始めたんですが、品を揃えるだけでは足りんと、最近ようやく分かってきました」
「それは、よいところに気づかれました」
主人は頷いた。
「商いで困るのは、たいてい品そのものより、人と人との行き違いです。約束したつもりでも、相手には違うように伝わっていることがあります」
太郎は笑った。
「それは、わしにも覚えがあります」
「ならば、まずは一つずつ確かめることです。急いで大きな商いをするより、約束を守って信用を得る方が、あとで役に立ちます」
太郎はその言葉を帳面に書いた。
主人は少し照れたように笑った。
「そんな大した話ではありませんよ」
「いえ。わしには、大事な話です」
太郎は丁寧に頭を下げた。
*
薩摩藩邸では、西郷と龍馬の話が続いていた。
話題は徳川家の処遇から、諸藩の役割へと移っていた。
「新しか政を始めるなら、誰が何を決めるかを、はっきりさせねばなりもはん」
西郷が言った。
「そうですな」
龍馬は頷いた。
「けんど、今まで力を持っちょった者を、ただ追い払うだけではいかんと思います。政を動かしてきた経験も、人も、すべて捨てるわけにはいかん」
「徳川の者にも役目を与えるべきじゃと?」
「力を独り占めさせるのはいかん。けんど、使える知恵まで捨てるのは惜しい」
西郷は少し笑った。
「勝どんが聞いたら、喜びそうな話じゃ」
「勝先生なら、もっと厳しいことを言うでしょうな」
龍馬も笑った。
「『使える知恵があるなら、まずおまえが働け』とでも言われそうじゃ」
西郷は声を上げて笑った。
「言いそうじゃのう」
笑いが収まると、西郷は書状を龍馬に返した。
「坂本さぁ。おはんの言うことは分かりもす。じゃっどん、わしにはわしの立場がある。今ここで、すべてを約束することはできん」
「それでええと思います」
龍馬は書状を受け取った。
「わしも、今日ここで何もかも決めてもらおうとは思うちょりません」
西郷は少し意外そうな顔をした。
「ほう」
「まずは、勝先生の考えを知ってもらいたかった。それから、西郷どんの考えも、わしがきちんと聞いておきたかった」
龍馬は続けた。
「違う考えを持っちゅう者同士でも、相手が何を守ろうとしちゅうか分かれば、次に話す時の道ができます」
西郷は静かに頷いた。
「おはんは、道を作るのが好きじゃのう」
龍馬は笑った。
「船乗りですき」
「船乗りか」
西郷も笑った。
「ならば、その道がどこへ続くか、わしも見てみたか」
*
川田弥平と松村新八が近江屋に着いたのは、午後も少し過ぎた頃だった。
表では客が醤油を買っていた。
二人は邪魔にならないよう店の端で待ち、客が帰ってから主人に声をかけた。
「土佐の後藤象二郎様のお使いで参りました。坂本龍馬殿にお目通り願いたいのですが」
主人は二人を見た。
「お話は伺っております。少々お待ちください」
主人は奥へ入り、太郎に声をかけた。
「才谷さん。坂本さんへのお客人がお見えです」
太郎は帳面を閉じた。
「ありがとうございます」
主人は二人を奥へ通した。
太郎は一度、龍馬から聞いていた相手の名前を確かめた。
「川田弥平殿と、松村新八殿ですな」
川田は頷いた。
「左様。後藤様からの使いで参りました」
太郎は二人を座敷へ案内した。
川田は太郎の顔を見て、軽く頭を下げた。
「坂本殿。お忙しいところ、恐れ入ります」
太郎は一瞬だけ間を置き、頭を下げ返した。
「遠いところ、ご苦労様です。後藤様からのご用向きと伺いました」
松村は懐から書付を取り出した。
「こちらをお預かりしております」
太郎は受け取り、封を確かめた。
川田が言った。
「後藤様は、今後の政務について、坂本殿の考えを聞きたいと仰せでした。ただ、今すぐ返事を求めるものではないとも」
太郎は頷いた。
「承知しました。書付は確かに預かります。内容をよく確かめたうえで、後藤様へお返事するようにいたします」
川田は少し安心したようだった。
「それで結構です」
太郎は、書付に目を落とした。
新しい政に諸藩がどう関わるべきか。
土佐藩が今後どのような立場を取るか。
そして、これまで龍馬と後藤が話し合ってきた考えを、どこまで形にできるか。
太郎にも、話の大筋は分かった。
だが、ここで自分が意見を述べるわけにはいかない。
太郎は書付を畳んだ。
「大事なお話ですな。後藤様にも、確かに受け取ったとお伝えください」
川田は頷いた。
「承知しました」
松村が尋ねた。
「坂本殿から、何かお伝えすることはございませんか」
太郎は少し考えた。
「今は、書付をお預かりしたということだけで結構です。返事が必要になれば、こちらからお知らせします」
松村は頷いた。
太郎は二人を見た。
「道中、お疲れでしょう。どうぞ気をつけてお戻りください」
川田と松村は礼を述べ、近江屋をあとにした。
*
近江屋から少し離れたところで、川田が足を止めた。
「思うたより、あっさりした話じゃったな」
松村は頷いた。
「後藤様の書付を預かってもらえたから、まずは役目を果たしたということじゃろ」
「そうじゃな」
川田は振り返り、近江屋の方を見た。
「しかし、坂本殿は変わったところに身を寄せちゅうのう」
「醤油問屋じゃきな」
「後藤様からの話も、きちんと聞いてもらえた。これでよかろう」
松村は頷いた。
「確かに坂本殿にお会いできたしのう」
二人は歩き始めた。
少し離れた場所にいた男が、その様子を見ていた。
昼前、飯屋で二人の話を聞いた男だった。
男は二人が近江屋へ入るところを確かめ、出てくるまで近くに留まっていた。
そして今、二人の言葉を聞いた。
後藤象二郎の使い。
坂本龍馬との面会。
近江屋。
男は、それ以上二人を追わなかった。
見廻組へ知らせるべきことがあったからだ。
*
太郎は近江屋の二階で、預かった書付をもう一度確かめていた。
内容は政治に関わるものだったが、太郎には気になる箇所もあった。
新しい政の仕組みができれば、諸藩の間で人や品が行き来する仕組みも変わるかもしれない。
関所や通行の扱いが変われば、商いにも影響が出る。
太郎は、そうしたことを考えながら書付を畳んだ。
ただし、その場で何かを決めるつもりはなかった。
龍馬が戻ったら、まず書付を渡す。
川田と松村が話したことを伝える。
それから、必要なら自分が気づいたことも話せばいい。
太郎は帳面を開き、二人から聞いたことを簡単に書き留めた。
そのあと、別の頁を開いた。
長崎から届く薬種の荷について、確認したいことが残っていた。
太郎は筆を取り、船の出入りと荷の受け渡しについて、いくつか書き加えた。
階下からは、近江屋の主人が奉公人を呼ぶ声が聞こえた。
*
夕方になっても、西郷と龍馬の話は続いていた。
政治の話ばかりではなかった。
西郷は薩摩の様子を語り、龍馬は長崎で見聞きしたことを話した。
外国との商いが広がること。
新しい船が増えること。
各地の人々が、以前より遠くへ行き来するようになったこと。
龍馬が太郎の商いについて話すと、西郷は興味深そうに聞いた。
「才谷さぁは、今も商いを続けちょっとか」
「ええ。長崎と京をつなぐ仕事を始めちょります」
「そいはよかことじゃ」
西郷は頷いた。
「才谷さぁには、才谷さぁの道があるということじゃな」
龍馬は笑った。
「そうです。最近は、わしより商いのことを考えちゅうかもしれません」
「おはんも、昔から商いの話が好きじゃったろう」
「好きですけんど、太郎は少し違います」
龍馬は考えながら言った。
「わしは、新しい船を見れば、どこまで行けるかを考える。太郎は、その船で何を運べば人が喜ぶかを考えるんです」
西郷はしばらく黙っていた。
「なるほどのう」
龍馬は続けた。
「同じ海を見ちょっても、考えることが違う。けんど、どちらも大事なんじゃと、最近思うようになりました」
西郷は静かに頷いた。
「おはんらは、よか友じゃな」
龍馬は少し照れくさそうに笑った。
「昔からの腐れ縁ですき」
西郷も笑った。
しばらくして、部屋に灯りが運ばれてきた。
西郷は外の暗さに気づき、龍馬を見た。
「もう、こげんな時刻か」
「話し込んでしまいましたな」
「まだ話したかこともある。よければ、夕餉も一緒にどうじゃ」
龍馬は少し考えた。
近江屋には太郎がいる。
後藤の使いから話を聞く約束もしている。
だが、今ここで西郷と話していることも、途中で切り上げたくはなかった。
「では、お言葉に甘えます」
西郷は頷いた。
「そうしてくいやい」
*
見廻組の詰所では、今井信郎が報告を受けていた。
河原町の飯屋で、後藤象二郎の使いを名乗る二人が坂本龍馬の居場所を話していたこと。
二人が近江屋という醤油問屋へ入り、しばらくして出てきたこと。
そして、出てきた二人が、坂本に会えたと話していたこと。
今井は一つずつ聞き、書き留めた。
「二人の名は分かるか」
「川田弥平と松村新八と申しておりました」
「土佐藩の者に間違いないのか」
「そこまでは確かめておりません。ただ、後藤象二郎の名を出しておりました」
今井は頷いた。
「分かった。ご苦労だった」
男が下がると、今井は報告を読み返した。
後藤象二郎は、坂本龍馬と深い関わりを持つ人物だった。
その後藤からの使いが、近江屋で坂本に会ったと言っている。
今井は筆を置いた。
しかし、近江屋には才谷太郎も出入りしている。
以前から調べてきた、龍馬によく似た男だ。
後藤の使いが会ったのは、どちらだったのか。
今井は、まだ判断できなかった。
ただ、これまで断片的だった情報が、一つの場所へ集まり始めていることは確かだった。
今井は報告をまとめ、佐々木只三郎のもとへ向かった。
*
近江屋では、夕方の仕事が終わりかけていた。
主人は帳場で一日の売上を確かめ、奉公人たちは使った道具を片づけていた。
太郎は二階で書付をまとめていたが、やがて筆を置いた。
龍馬はまだ戻っていない。
西郷との話が長引いているのだろう。
太郎は預かった書付を机の上に置き、自分の帳面を閉じた。
その時、階下から主人の声がした。
「才谷さん、お茶でもいかがですか」
「ありがとうございます。いただきます」
太郎は返事をした。
少しして、温かい茶が運ばれてきた。
太郎は礼を言い、湯呑みを手に取った。
窓の外では、河原町の通りに夕暮れが広がっていた。
昼間の賑わいは少しずつ落ち着き、店々には灯りがともり始めている。
太郎は茶を飲みながら、今日聞いた話を思い返した。
近江屋の主人から教わった、荷を運ぶ時の注意。
後藤の使いから預かった、政務についての書付。
どちらも、あとで龍馬に話しておきたいことだった。
太郎は湯呑みを置き、もう一度帳面を開いた。
長崎へ送る返書の文面を、少し直しておこうと思った。
階下からは、主人が翌日の荷について奉公人と相談する声が聞こえていた。




