2-17. 報告会
(*未依沙視点)
「うえのっち、大丈夫?」
教室へ戻ると、
そっちゃんとさっきーが待っていてくれた。
二人の顔を見た瞬間、
張り詰めていた糸がプツンと切れた。
「……大丈夫じゃないかも」
わたしは2人を連れて、ゆっくり廊下へ出た。
「立川先輩に、やっぱ告白された?」
普段ならテンション高めのそっちゃんだけど、
今日はわたしを気遣っているからか、
声が少し優しい。
「告白されたの。気になってる人がいるかもしれないけど、少しでも可能性があるなら付き合ってくださいって言われて…」
「そっか……」
「とてもいい先輩で、わたしのことを好きって言ってくれて、気持ちもすごく伝わって……だから、振るのが本当に苦しかった。」
話しているうちに、
また胸の奥がぎゅっとして、
目の奥が熱くなる。
なんでわたしが泣きそうになってるんだろう。
泣きたいのは先輩のはずなのに。
自分の身勝手さが情けなくて、
でも、嘘をつけなかった自分が少しだけ誇らしくて。
感情がぐちゃぐちゃだった。
……そんな中でも、
ふっと心に思い浮かぶ“ある人”がいた。
その人の不器用な笑顔を思い出すだけで、
冷え切っていた胸の奥がじんわりと温かくなる。
気づけば、わたしの心の
支えみたいになっているのかもしれない。
「うえのっちも真剣に向き合って決めたんだよね。先輩にも、うえのっちの気持ちはちゃんと届いてるよ。」
「さっきー、そっちゃん……待っててくれて、話聞いてくれてありがとう」
「もちろんでしょ。わたしたちはいつもうえのっちの味方だよ」
さっきーの言葉が胸の奥までスッと沁みて、
自然と涙が一筋こぼれた。
拭うのも忘れて、私たちは廊下の隅で
ぎゅっと身を寄せ合った。
中学でこんなに信じ合える友達に出会えたことが、
私の本当の「救い」だった。
✳︎
(*さっきー視点)
「うえのっち、今ごろお手洗いで顔確認してるだろうね。泣いちゃってたし。」
そっちゃんとわたしは先に教室へ戻った。
「うえのっち、泣いた顔も可愛いから、そんなに気にしなくていいのにねぇ」
「ほんとそれ。うえのっちは可愛いから、男が放っておくわけないよ。立川先輩が退場したら、逆に争奪戦が激化するかもね〜。ま、私は瑠飛くん一筋だけど!」
なんだか楽しそうに言うそっちゃんは、
やっぱり根っからのミーハー女子だ。
「……あとは、本人がいつ気づくかよね」
思わず小さくつぶやく。
うえのっち、まだ気づいてないのかな。
“気になってる人”の存在が、
どれだけ大きくなってるのか。
気になる人の話をする時のあの幸せそうな顔。
遠くでその人の姿を見つけた瞬間、
パッと花が咲いたみたいに顔が明るくなる。
”幼馴染”の話をするとき、
無意識に髪を触ったり、
声のトーンが少しだけ上がったり。
全部、見ればわかる。
わたしからしたら、
あれはもう“好き”なんだけどなぁ。
「気になってるかもしれない人なんでしょ?誰よ一体〜!」
そっちゃんはもう気になって仕方ないって感じ。
「まあ、うえのっちが自分で気づかなきゃダメだからね。わたしたちは静かに待ちましょ。わたしは今野くんに夢中だし、そっちゃんは瑠飛くんに夢中だし、バレンタインも近いし、これから忙しくなるね〜」
わたしは、うえのっちのことを
全然心配していなかった。
なんだかんだで、
もう心は決まってると思うから。
あとは――本人が気づくタイミングを待つだけ。
その瞬間が来るのを、
わたしはちょっとワクワクしながら待とうと思う。




