美人な国王陛下は愛妻家
第二章、ちまちまスタートいたします。
よろしくお願いします!
王宮監理部の仕事は、主に調査、調査、調査。地道な調査が基本である。
事実を知るためには、何事も多角的な視野が必要となる。
一監理官として出仕し始めたジルベルは、それはもう己の経験値不足と視野の狭さを思い知った。
とにかく我武者羅に食らいつき、とにかく一心不乱に学び、家に帰れば愛しい妻に癒される。
いやほんと、リルーシェがいなかったらとても無理。
美しくて優しくて凛々しい妻は、研究所の土壌改良チームに所属している。
仕事に邁進する姿にも惚れ惚れしてしまう。白衣がもう、素晴らしく似合うのだ。惚れる。
そうして、やっと仕事に慣れてきたかな、という頃────突然、国王陛下が崩御された。
持病はあったがこれといった兆候はなく、本当に突然のことだったため、王宮は少々混乱に陥った。
折り悪く、隣国の王太子が訪問していたため、内密にすることもできない。
幸い、友好国の彼らは混乱を抑えることに協力してくれたが、譲位を急ぐ必要があった。
ジルベルは、友である王太子ライオスをひどく案じたが、彼は怜悧な表情を一切動かすことなく冷静に事に当たり、十九歳の若さで即位。
母である王太后陛下が後ろ盾となり、第二王子だった王弟が側近につき、妹姫は隣国の王太子との婚姻を前倒しして大国との縁を結び、国の混乱を最小限に抑えた。
派閥だとか確執だとか、そんなもの誰も考える暇がないほど、目まぐるしい嵐のような日々だった。
どの部門も総出で、とにかく人手を駆り出し、敵対していた相手とも協力し合った。まあもちろん、その限りでない者たちもいたけれど。
民たちは、弱冠十九歳の新国王陛下を祝い、また父君の急逝を心底悼んだ。優しい国である。
喪中のため盛大な戴冠式ではなかったが、民たちはそっと各家の屋根や窓に、ライオスを表す藍と白の布を掲げた。
時折りライオスに呼び出されて、相談したりされたり切磋琢磨しながら、彼を支えるためジルベルはさらに仕事に邁進。
家庭でも、可能な限りリルーシェと一緒に過ごす時間を取った。
そして、即位から二年が経とうというある日。
「側妃……?」
ライオスの口から出た単語に、思わず頬が引きつった。
疲れたようにため息をつく友も、どこか狼狽えた様子だ。
この国は、一夫一婦制だ。たとえ王族といえど、むやみやたらに妻を持てるわけじゃない。
やむを得ない理由で、後継を望めない場合を除いて、二人目以降の伴侶は認められない。
ちなみに『やむを得ないか否か』を判断するのは、ジルベルたち監理部の仕事だったりする。
直系傍系庶子などありとあらゆるものを調べ尽くされるし、色々な検査も必須なので、よほどの事情がない限り伴侶を増やす者はいない。
ちなみに、婚外子は後継とは見なされない。
「我が妃がな……どうにも、思い詰めてしまっていてな」
「ああ、妃殿下が……」
納得したふうに相槌は打ったが、顔はさらに強張った。
愛する妻に側妃を取れなどと言われては、疲弊しても仕方ない。
ひとまず、あたたかい紅茶を勧めた。
「でも、まだ四年ですよ」
ほぼ同時期に婚姻した国王夫妻とジルベル夫妻は、ともに婚姻四年目。どちらにも、まだ子はない。
年齢的にも、子の有無を嘆くには少々早くないだろうか。いや、人によるのはわかっているのだが。
「圧をかける者が裏にいそうですね。それも、妃殿下が無視できないくらいの者が」
「調べさせてはいるのだがな。すまないが、奥方の時間をもらえないか。たまには気晴らしでもさせたい」
「ええ、ルシェに話してみます」
明るく社交的な妻なら、王妃殿下の気分転換にいい案を出してくれそうだ。
筆頭を賜る侯爵家として、王家に偏った対応はできない。それでも、してあげられることもあるのだ。中立だからこそ。
「しかし……子を強く望む妃に、どう接していいのかわからなくてな」
「……それは、ええと、熱量のことですか?」
「今の我が妃にとって閨は、子を得る手段なのだ。だが、私はただ単純に、愛する人に触れたい。そこがな、なかなか噛み合わん」
なるほど、難しい問題だ。ジルベルも一緒に唸る。
子をもうけるのは、王侯貴族としての義務だ。でも、それとは別に、純粋に伴侶を愛したい気持ちもわかる。
ジルベルだったら、どうするか。




