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『アウト・オブ・灰塵世界』【完結】  作者: 久瀬 風助@鬼叺 連
六歩目:戦獣奪還、開戦す
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78.戦獣奪還戦(9)





 「……唐突に何を言っている? 君は戦いにおいては相応に冷静な判断が出来る筈だ。この状況で…何故そんな事が言える?」



 浮かび上がる疑問は当然のモノだ。隊を率いる指揮官として、スオウの荒らさと冷徹さを目の当たりにしたことがある者として。たった数秒の間に下された彼女(スオウ)の判断は、(アサギ)の中にズレをもたらした。


 しかし、靡いた赤髪の隙間に見えた彼女の瞳は至って正常だった。一方的に踵を返し、静けさの中に靴音を垂らして距離を開けるスオウ。



 「所詮は納得いくかいかないかだろ、理屈なんざ。今は黙って噛み砕くか呑み込んどけ。


 流すとしたらアタシとお前の血で十分だ。定石を、常識を覆し、破綻させる。それが『破綻者(イレギュラー)』なんだろ? なら良いだろ、こんな決着の付け方も」



 振り返る。やはり、彼女が酔狂に浸っていない事がわかる。


 戦争という悲劇(りふじん)な一幕への、せめてもの抵抗か。どういう形であれ自国への反旗を翻した事へのケジメか。━━否。その『理屈』を彼女はとうに切り捨てた。



 「━━君に考えがあると?」



 だからこそ、気になる。


 彼女の底に、根に、何があるのかを、彼は知りたがる。


 戦術的な意図も無しに、ただ己の興味に従って彼は問い掛ける。



 「……まだ分からない」



 行動原理、収束する考えの根本すらも不安定。ただ一つあるとするならば『心の中で友人が止めた』事だけだ。


 殺戮の為の道具が止まる理由としては、大きくも小さくもある抽象的なモノ。『考え』なんて形のある概念には辿り着かない。


 ━━ただし、()()()はある。スオウはそれを口にする。



 「実際の所、『部下を殺させない』し『アタシ等を殺さない』ってのだけは、アンタの戦い方から分かった。それにアタシが乗っかろうってだけだ。


 血を流し続ける事を、アタシのリーダーは許さない。それだけのお人好しならこんな判断も許してくれるだろうさ」



 持ち出されたされた戦獣兵器(トクサ)の奪還。此度、ローライトが戦場へと変わった理由はそれだけだ。

 つまりは、ウスズミがトクサの絵空事を否定し、諦めさせればこんな事にはならなかった。兵器としての本懐よりも、一側面でしかない彼女の夢を叶えようとした為に、屍と炎は詰み重なった。


 スオウは、それに与した。屍も作り上げた。大義名分の元にその(やいば)で首を落とす事だって出来た。


 ……しかし、アサギはその選択を破棄した。



 「━━なるほど」



 指揮官に立った今、彼は彼の示す忠義と思考の元に、人が死ぬ事を許さなかった。



 「彼は……繁栄を切り捨ててまで、一人の女の子を救おうとしたんだね」



 そして、()()()()()()()()()()()を、己の権能と同じ位に敬服していた。 断片的な記憶に佇む彼には他者を慮る人らしさは無かった。


 そんな彼が、絵空事にかまける日が来るとは。人間らしい選択を取るとは。アサギは思いもしなかったのだ。



 ━━外から聞こえる発砲の音。


 ━━外で木霊する発砲の音。


 雷火の如く炸裂する音は、綴られるかのように連鎖を続ける。 限られた時間が背後から一つ、一つと、刻を進め、まるで此処まで迫ってくる。いつ戦局が動き、()()()()()()が足を止めるかも分からない。



 「()()なら、互いに名乗りを上げようじゃないか。


 ━━『要塞都市国家アカツキ 総合攻撃師団スサノオ中尉』、破綻者(イレギュラー)閻魔斑猫(えんまはんみょう)』、アサギ・フツミタマ。己の忠義と信条を貫かせて貰う」


 「へっ、気取りやがって……。


 ━━破綻者(イレギュラー)飛蝗(ひこう) 』、スオウ・ガエボルグ。ウスズミとトクサ、皆で『空』を見る為に剣となってお前を倒す」

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